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給与と業務を選んで自分らしい働き方

冬休み、私の大切な仕事の一つに、保育者との1on1meetingがあります。
これは、2024年度より新たに導入された給与体系と深いかかわりがあるので、今日は基礎情報として、あたらしい給与体系についてお伝えします。

新しい給与体系の概要

これまで向山では、年に1度の定期昇給があり、年功序列型の一般的な給与体系を取っていました。そこから、各自の業務内容や自己評価をベースに柔軟に変動する給与体系へと変更しました。
この仕組みでは、長期休みごとに自分の役割や給与の方向性を見直すことが可能なのですが、具体的にどのようなものか、例を挙げながら見てみたいと思います。

1年目のスタート

初任給19万1000円でスタートした場合、1学期は「基本業務」に集中します。
そして、夏休み時点で、「環境を考える」として進むか、「保育に特化する」かを選択でき、自己評価とスーパーバイザーの評価を加味しながら次のステップを副園長と一緒に決めることができます。

環境を考える段階

「環境を考える」を選択した場合は、環境図を作成する仕事が追加されます。まだ自分で環境を作ることまではしませんが、考えることで、どのような教材や教具をどこに配置するのかを考えるていきます(もちろん、カンファレンスでのサポートがあります)
業務が増えるため、2学期から業務手当が1000円つくという仕組みです。

基本業務の保育者と環境を考える保育者のクラスは、別働の環境チームが、環境図を基に環境を作るため、この2つの区分の保育者はベテランが考えた環境の中で子どもと一緒に遊びます。
環境を作ってもらうことで、遊びの中での拠点について学ぶことができるのです。

環境を作る段階

「環境を考える」役割を選んだ場合、適切に業務を遂行すれば冬休みに「環境を作る」に進む道が開けます。
「環境を作る」では業務手当としてさらに月1,000円が追加されるのと、ノンコンタクトタイムも増加され、環境構成から保育までを担う保育者となります。

「やっぱりやめた」もOK。それぞれのペースで!

「環境を考える」「環境を作る」業務が自分に合わない場合には元の役割に戻ることも可能です。
手当はなくなりますが、業務負担が少なくすることができます。
すべてが右肩上がりではなく、柔軟性を持たせることで、各保育者が自身のペースで成長できる仕組みとなっています。

変更の背景と目的

では、なぜこのような給与体系に変更したのかについて、5つの項目から見ていきたいと思います。

給与評価のタイミングと退職時期のズレ

従来の給与評価は年に一度のみでした。しかし、退職希望者は9月に申し出るという決まり(次の年の採用人数を把握するためお願いしています)があるため、ここにタイミングのズレが起きてしまうのが課題でした。

1学期は子どもたちも保育チームも安定せず、保育者が業務に慣れるのに時間がかかる時期です。夏休み前にようやく安定してきた段階で、「なんとなく自分に向いていない」と自信を欠いたまま退職を決めてしまうケースが散見されました。

深刻な理由ではなく、「うまくいかない」という漠然とした感覚で離職してしまうのは非常にもったいないことです。
挑戦の結果が思うようにいかなかったとしても、管理職から見ると評価に値する態度だと思うことは多々あります。
しかし、それを評価して給与に反映できない仕組みが課題となっていました。そこで、年に一度の評価から長期休みごとの評価に変更し、保育者が短期的に達成感を得られる仕組みを取り入れました。
これにより、保育者が自分の成長を実感し、9月退職の抑制を目指しています。

自己評価を細分化し振り返りの機会を増やす

これまでの年1回の自己評価では、保育者が自身の成長や課題を十分に把握するのは難しい状況でした。新たな制度では、長期休みごとに具体的な自己評価を行い、振り返りの機会を増やしています。

評価項目は、子どもとの関わり方、情報発信、チーム内での役割、マネジメントスキルなど、多方面にわたる内容です。これにより、保育者は自身の強みや課題をより具体的に振り返ることができます。

環境づくりの難しさに段階的に対応する

特に新任の保育者にとって、環境づくりは大きな壁となる業務です。
遊びに必要な道具の不足や準備の不十分さから、他の保育者の手を借りる状況が発生することも少なくありません。
たとえば、絵の具遊びの際にタオルが用意されていなかったり、10人の子どもが遊ぶ場面でガムテープが2つしか用意されていなかったりするケースがあります。これにより、本人やベテラン保育者がモノを取りに行くということが起き、保育の流れが止まってしまうこともあります。

こうした状況を改善するため、「環境を考える人」と「環境を作る人」を明確に分け、経験を積むことで徐々にスキルを身につけられる仕組みを構築しました。
最初に環境を提供された上で遊びを観察し、その経験を通じて自信を持って次のステップに進めるようにしています。

多様な価値観に対応する柔軟な仕組み

近年では、給与や業務内容に対する保育者の価値観が多様化しています。「給与をどんどん上げたい」「業務の幅を広げるより子どもとの関わりに集中したい」「あまり責任のある業務を増やしたくない」など、さまざまな希望があります。

新しい制度では、各保育者が自分に合った働き方を選び、それに応じて給与や役割が変動する仕組みを取り入れました。この柔軟性により、一人ひとりの希望を尊重し、満足度を向上させることを目指しています。

1on1 meetingの面談で成長を支える

保育者との1on1 meetingは、成長や悩みを共有する重要な機会です。
長期休み中に行う面談では、保育者がどのように努力してきたのか、どのような課題に直面しているのかを、自己評価を一緒に見ながら直接共有します。
私との対話を通じて、職場の改善点や業務の方向性を明確にし、保育者の成長をサポートしています。
実は、この面談で、組織として改善しなければならないポイントが見えることもあり、私にとっても重要な情報収集の場になっています。
この1on1 meetingについては、このnoteで共有していきたいと思っています。

試行から見えてきたこと

多様な選択肢から見えた価値観

新制度では、保育者が長期休みごとに自身の役割や働き方を選べる仕組みを取り入れました。その結果、保育者の選択や考え方の違いが明確に浮かび上がりました。
たとえば、1年目で次の段階に進むことを選んだ保育者がいる一方で、3年目でも業務量が増えることを避けるため、現在の役割を続けるという判断をした保育者もいました。
どちらの選択も、個々の価値観や状況を反映したものであり、それぞれにいろいろな判断をするのだなということを改めて実感しました。

成長の兆しとしての自己評価の変化

夏休みと冬休みで同じ評価基準を用い、保育者の自己評価を比較する試みも行っています。
夏休みの際と比べて、ほとんどの保育者が自己評価を維持、もしくは向上させており、保育者の成長を感じられる場面が多く見られました。
一方で、自己評価が低下した保育者もいました。
一見すると、大丈夫かな?と思うのですが、よく話を聞くと、素晴らしい成長の兆しが見えていきます。
夏の自己評価では、自分の中での基準があいまいで、高めに評価してしまっていましたが、2学期を過ごす中で、周囲が見えてきたり、保育全体の流れが理解できるようになり、自分をより客観視するようになった可能性があるからです。
このような内省は、次のステップに進むための重要なプロセスで、とても大切だなと考えています。


新たな給与体系は、保育者一人ひとりの成長や働き方を尊重するための大きな一歩です。
この制度を通じて、保育者がやりがいと満足感を得られる環境を目指しています。
今後もフィードバックを活かしながら、さらなる改善に努めていきたいと思います。

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