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「苦手な子」との関わり方に悩む保育者へ ~マネジメントの視点で考えるサポートの方法~

ちょっと突っ込んだ言い方になりますが、保育の現場では、特定の子どもに対して保育者が苦手意識を持つことは決して珍しいことではありません。
私はプロとして、自分を知ることはとても大切なことだと思うので、「苦手かもしれないな」と思う自分を受け入れることから始めるようにしています。
しかし、その苦手意識をどのように捉え、どのように克服していくかによって、保育者自身の成長だけでなく、子どもへの支援の質も大きく変わります。
今回は、マネジメントの視点から、若手保育者が苦手意識を持つ子どもとの関わり方について考えてみたいと思います。


「わからない」に気づいていない若手保育者

ある若手保育者が、特定の子どもとの関係に難しさを感じているようです。
その子は自分の気持ちをストレートに出せるお子さんなので、時に友達とぶつかることもあります。この時の対応が、若手保育者にとっては難しいと感じるようで、今は周りの保育者が替わったりサポートすることが多くあります。
チームで保育をするという意味では、とても大切なことではあるのですが、同時に、担当保育者が子どもに向き合うことも大切なことです。
しかし、その保育者は「関係ができていない」という言葉で片付けてしまい、具体的に何が問題なのかを考えることができていないようでした。

この状況に出くわした別のチームのスーパーバイザー(学年主任のような存在)が「困ったら先輩に聞くといいよ」とアドバイスしたそうです。
しかし、スーパーバイザーのミーティングで出されたこの話題に、私は少し違和感を感じました。
そもそも「何がわからないのか」に気づいていないため、適切な助言を受けることができないのではないか?
その結果、問題の解決に向けた意欲が生まれず、ほかの保育者のサポートを待ってしまうという状況が続いてしまうのではないかと思ったのです。

マネジメント側が因数分解し、スモールステップを作る

若手保育者が「関係ができていないから仕方がない」と考えてしまう背景には、『何が問題なのか』を具体的に捉えられていないことがあります。
そのため、マネジメント側が問題を細かく分析し、スモールステップを設定することが重要になります。

たとえば、ある子どもが集まりの時間に落ち着かない場合、「関係ができていないから」とひとまとめにするのではなく、その要因を具体的に掘り下げる必要があります。
集まりの活動自体が楽しくないと感じているのか、保育者の話が理解できていないのか、そもそも集団での活動が苦手なのか、それとも声のトーンや表情などの感覚的ななじまないのか。
そうした視点で課題を整理することで、どこにサポートが必要なのかを明確にすることができます。

また、若手保育者は経験が浅いため、曖昧な指示では適切に動くことが難しいものです。
「子どもの気持ちを聞いてあげよう」「関係を作ることが大切」といった抽象的なアドバイスだけでは、実際の行動に落とし込むことができず、結果として何も変わらないまま時間が過ぎてしまいます。
そのため、「この場面ではこういう声掛けをしてみよう」「こういった行動が見られたら、まずは〇〇を試してみよう」といった具体的なステップを示すことが不可欠な場合も多くあります。

若手保育者に必要なのは「感覚の言語化」

さらに、問題が発生するタイミングやパターンにも注目し、注意すべきポイントを伝えることも大切です。
たとえば、遊んでいる時間が長くなっているときに喧嘩が起こりやすい。周りに人が多くなるといらだちが募ってしまう。保育者がほかの子どもとかかわっていると、気を引きたくなってしまう…など、子どもの行動にはいろいろな要因が絡まっているけれど、パターンもあります。
経験のある保育者であれば直感的に「なんとなく空気が悪い」と感じ取ることができますが、若手保育者にはそうした感覚がまだ育っていません。
そのため、マネジメント側がその感覚を言語化し、「このような状況のときにはこういうサインが出ているかもしれない」と具体的に伝えていくことが求められます。

スモールステップの設定は、単に「やることを細かく分ける」というだけではなく、若手保育者が自分で課題を認識し、それを乗り越えようとする姿勢を育むためのプロセスでもあります。
課題が整理され、具体的な手立てが示されることで、保育者は「どうすればよいかわからない」という状態から抜け出し、前向きに取り組めるようになります。
そうした積み重ねが、最終的には保育の質の向上につながると私は考えています。

子どもとの関わりは「準備」が大切

保育者がかかわりにくいと感じる子どもと関わる際、保育者が「子どもが話してくれるのを待つ」という姿勢では、適切な関係を築くことが難しい場合があります。
また、多くの場合、保育者が苦手意識を持ってしまっているため、先入観から、「きっとこうだろう」という予想を知らず知らずのうちに打ち立て、それをもとに声掛けをしてしまう場合もあります。
例えば、子ども同士のケンカになってしまった場合「どうしてわざとやったの?」と問い詰めてしまったり、「なんでたたいたの?」と、事実かどうかわからないことで話してしまうことがあります。
しかしこれでは、どんどん子どもとの気持ちの距離が開いてしまいます。
まずは、「嫌だったことがあったのかな?」「痛いところなかった?」と、まずは気持ちを受け止めることが重要です。
このような言葉がけは、実はテクニック的な部分もあります。
もちろん、気質的にこのように子ども側に立って声をかけられる保育者もいますが、全員ではありません。
そのため、このようなテクニックを事前に知っているだけで、保育はぐっと楽にできるようになります。
うまく関われない子と関わるためには、保育者自身が事前に「どう対応するか」を考えておくことが必要です。ちょっとしたテクニックが関係性を築くカギとなり扉が開くことがあります。

ちなみに、上に書いたテクニックは、私が対応に苦慮しているときに、先輩保育者が子どもにかけていた言葉で、それまで貝のように話さなかった子どもが、自分の思いを感情を溢れさせながら話したという経験から学んだ言葉です。あの時は、自分のできなさを痛感して悔しかったな~。

マネジメントの課題として捉える

若手保育者が特定の子どもとの関わりに苦手意識を持つことは珍しくありません。しかし、その解決を保育者個人の問題として扱うのではなく、マネジメントの課題として捉えることが重要です。

適切な支援がなければ、若手保育者は「この子とは合わない」「関係ができていない」といった理由で関わりを避けるようになり、結果的に子どもも適切なサポートを受けることができなくなります。

マネジメントをする保育者は、子どもだけでなく保育者の特性や思い、課題や今いる現在地を把握し、適切にアドバイスすることが求められます。
結局は保育と同じですね。
私もまだまだですが、一緒に頑張りましょう!

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