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センサーを活用して保育の質を向上させる新たな試み
向山こども園で、子どもたちの行動や成長をより客観的に理解し、保育の質を向上させるための取り組みが始まろうとしています。
この研究は、東北大学の張山教授を中心とした研究チームが向山こども園をフィールドにこれから行う研究です。
子どもたちに超小型のセンサーを装着してもらい、遊びの拠点ごとにおいた受信機でセンサーの位置を計測することで、子どもがいつ、どとで、だれと遊んでいたのかデータ化し、これをもとに保育のあり方を見直すという、実験的な研究となります。
今日は概要や期待などについて書いてみたいと思います。
子どもたちの行動データを収集する方法
この研究では、子どもたちに切手サイズの小さなセンサーを装着してもらい、園内の遊びの拠点ごとに設置された受信機を通じて位置情報を記録します。
これにより、どの子どもがいつ、どこで、誰と、遊んでいるかという詳細な行動データが得られます。
保育者が行ってきた記憶や観察に頼る記録から一歩進み、客観的な視点で子どもたちの行動を把握できるようになります。
データによる客観的な視点での子ども理解
センサーによって集められたデータは、子どもたちが一人でいる時間が多いのか、友だちとの関わりが多いのか、また、遊びの継続時間を確認する手がかりとなります。
こうした行動データを基にすることで、保育者は従来の観察では気づきにくい細かな変化やパターンを発見しやすくなります。
このような行動について客観的に把握できるため、個々の子どもの成長に合わせた支援をより的確に行うことが可能になることが期待されています。
データ活用で広がる保育者の支援方法
行動データの活用によって、保育者はそれぞれの子どもに合った支援を考える材料を用意したり、援助を考えたりするため、保育の質が向上すると期待されています。
また、若手保育者がベテラン保育者の観察力や保育中の動きかた、また、自分のクラスとの子どもの動きの違いなどをデータを通じて学ぶことで、スキルの向上がしやすくなり、チーム全体での保育力向上につながります。
データ化に伴う課題とリスク
一方で、保育のデータ化には課題もあります。
データのみに頼りすぎることで保育の現場が管理的になる懸念があるほか、子どものプライバシーをどう守るかも重要です。
データ=子どもの姿 と思い込んでしまうリスク
データ上で「みんなといるから良い」「同じ場所で遊んでいるから集中している」などと短絡的に捉えてしまうと、実は皆のところにいるだけで全く集中していないということを見逃したり、同じ場所にいるけれど、友達とうまく関われていないという状況に適切に介入できないということが起こり得ると懸念しています。
このため、子どもの行動をデータで記録する際には、必ず保育者によるカンファレンスが必要になると考えています。子どもの気持ちを理解し、寄り添いながら、何を感じ、どのように成長しているのかを感じ取るのは、保育者の役割だと思います。
そのため、ナラティブアセスメントを軸とするカンファレンスを毎日しっかり行い、データの読み方を検討しつつ活用することが大切です。
個人情報漏洩への懸念
データを扱うとなると、なんだかとても怖いような気がしてしまいます。
管理的になるのではないか? また、データが全く別の目的の何かに使われてしまうのではないか?と、漠然とした大きな不安があるかと思います。
しかし、この点に関しては、東北大学の研究ですので私たちは安心感を持っています。
データは番号で管理しているので、保育者が園で名簿と付き合わせなければ、大学の研究者だったとしても、個人を特定することはできないようになっています。
また番号も厳重に管理されるため、園としても安心して協力できる体制が整っています。
もちろん研究を行うクラスの保護者には、同意書をいただくため、研究に参加しないという選択をしていただくことも可能ですし、途中でやめることも出来ます。
今後の展望と期待
この研究が進むことで、保育の現場に新たなアプローチが広がる可能性が見えてきます。
データをもとに、子どもたちの行動や関わり合いを客観的に理解し、それぞれの子どもに対してより専門的な支援を行うための議論が深まることが期待されます。
保育者がデータを活用しつつ、子どもたちに的確なアプローチができるようになれば、保育の質がさらに向上していくと思います。
この研究が現場に役立つ技術として実用化されることを願っています。