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職員室の「お茶出し文化」って、いる?

職員室には長年続いている「当たり前」の文化がありますが、必ずしも必要とは言えないものも多く存在しています。
今回は、その中でも職員間の「お茶出し文化」について焦点を当ててお話しします。

若手保育者の「お茶当番」の実態

私が向山こども園(当時の向山幼稚園)に教頭として就任した頃、若手の保育者が毎日行っていた重要な業務の一つが、保育終了後に職員室で先輩の保育者にお茶を出すことでした。
保育者ごとにコーヒーに入れるミルクや砂糖の分量、もしくは、コーヒーではなく紅茶なのかを覚えなければならず、A先生はブラック、B先生はミルク1杯、C先生はミルクと砂糖2杯ずつ…と、覚えることがたくさんあります。
マグカップもそれぞれが持ってきたものを使用しているため、十数個のマグカップも覚えなければなりません。
そのため、若手保育者は、保育後に急いで職員室に戻り、保育者の好みに合わせた飲み物を準備するのが日常でした。

ちなみに、帰るときには、周りの保育者のマグカップを下げる声をかけながら帰るというのが通例となっていました。

お茶出し文化の問題点

この文化には、ビジネスマナーや保育者同士の交流という側面もありましたし、優しい先輩が手伝ってくれて「ステキ!」と目を輝かせたり…という場面もあったかと思いますが、同時に完璧な上下関係を生み出してしまうという負の側面もありました。

さらに私が感じた最大の問題点は、このお茶出し文化が「使えない人」を作り出すシステムになってしまうことでした。
マグカップや保育者の好みを覚えられない、あるいは間違えてしまう若手保育者は、先輩方だけの雑談の中で「あの子は覚えが悪い」と陰口を言われることもありました。
私自身も、決して要領が良いタイプではないので、自分だったらこのシステムは嫌だなと感じていました。

また、そもそも「なぜ若手の保育者が他の保育者にお茶を出さなければならないのか?」という疑問が次第に強くなり、この文化を見直す必要性を感じるようになりました。

お茶出し文化の廃止に向けた改革

このお茶出し文化を廃止するため、まずはオフィスに無人で駄菓子や飲み物を販売する仕組みを導入しました。
業者さんと契約し、定期的にお菓子の補充や暖かい飲み物の提供を行ってもらうことで、買いに行く手間をかけずに済むようにしました。この仕組みにより、職員が自分でお金を払ってお菓子や飲み物を購入できる環境を整えました。

数年うまくいって定着していたのですが、業者さんが大規模オフィッスのみにターゲットを絞るということで撤退することになったため、その後は私自身が薬局やコストコで安く売っているときにお菓子を購入し、職員室で販売する形に移行しました。
また、園内のカフェとも契約し、1日2回、自家焙煎のコーヒーや厳選されたお茶を職員に提供するサブスクのサービスを導入し、保育者が好きなタイミングで質の高い飲み物を楽しめる仕組みを整えました。

cafeのお茶やおやつ、飲み物を自分で買うこともできます

自分で選べる自由とフラットな関係の実現

これらの改革を通じて、最大の成果は「使えない人を作らない仕組み」を実現できたことです。
保育者同士のコミュニケーションは大切ですが、年齢や上下関係に関わらず、自分のことは自分で行うという姿勢が大事だと感じています。自分の好きな飲み物やお菓子を、自分のペースで選ぶことができる環境が整い、職員室はよりフラットで気軽な空間になったのではないかなと思っています。

また、正直なところ、私自身も、他の誰かにお茶を淹れてもらうより、自分でその時の気分に合った飲み物を選ぶ方が気楽だと感じています。
誰かにお茶を淹れてもらうことでその人の時間を奪ってしまっているなと感じますし、入れてもらったものを飲まないのも失礼なので、頑張って飲まないといけないと感じてしまうので、自分の好きなタイミングで好きな飲み物を楽しめるのは、気持ち的にもとても楽です。


7~8年前から始まった一連の改革によって、職員室の中にあった無意識の上下関係がなくなり、保育者同士の関係性がフラットになったことは大きな成果です。

若手の保育者に昔のお茶出し文化の話をすると、驚かれることが多いですが、今ではこの新しいシステムが当たり前となっています。
年齢や立場に関係なく保育者が自分で自分のことをする、そんな職場環境をこれからも大切にしていきたいと考えています。

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