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子どもと保育者と環境が紡ぐ「遊び」
今日は、向山こども園を訪れた学生さんとの対話と、保育者がYouTubeで話そうとして悩んだ話を通じて、保育について改めて考えるきっかけをもらったので、書いてみたいと思います。
「すごい」の一言に込められた感動
今日見学に来てくれた学生さんは、とても感度の良い素敵な学生さんでした。
園の保育の様子に驚きを隠さず、素直に感動してくれていました。
「今まで見てきた園では、おもちゃが用意されていて、子どもたちはおもちゃで遊んでいるだけだったけれど、向山では、おもちゃがないのに、子どもたちが自分たちでいろいろなものを作ったりしていた」
「トンカチを使って子どもが作っていて、私より上手だと思った」
「先生の怒った声がしないのに驚いた」
「ただただすごいしか出てこない!」
と興奮気味に感想を語ってくれました。
これまで見てきた保育に疑問を抱いていた彼女が、向山こども園の保育を目にし、「こんな保育があるんだ」と感動してくれた姿は、保育者として非常に嬉しく思える瞬間でした。
彼女の「すごい」という感想には、子どもの主体性や自由が尊重される保育や保育者が子どもを丁寧に見ながら遊びを展開していることの『すごさ』が凝縮されていたのかもしれません。
動物との関わりを通じた保育の実践
いい話ではあるんだけど…
学生さんとの話の後、YouTubeの撮影の打合せで、ある保育者と動物との関わりについて話し合いました。
子どもたちが動物のお世話をする際、うんちの掃除を保育者がしているのを興味深そうに見ていたので、「うんちがあったら教えてね」というと、一生懸命見つけてくれたという話や、自分なりに泥でご飯を作って、動物にご飯だよと上げていた、という話。さらに、抱っこできるようになったことがとにかく誇らしいこどもの話、といった具体的なエピソードを教えてくれました。
どのエピソードも子どもたちの思いを保育者が丁寧に読み取っているので、素敵ではあったのですが、「んと、その後は?」というもう一歩が欲しいと感じた私。
そこでの保育を振り返りながら、さらに深めるにはどうすればよいかということを一緒に考えてみました。
保育を深めるためのアイディア
動物との関わりについて話を進める中で、私だったらこうするかもといういくつかの提案をさせていただきました。
例えば、泥でご飯を作ってくれた子どもに対して、「本物の動物のご飯を作る」という発展的な遊びを提案するというもの。
具体的には、ニワトリの餌として、簡単に砕ける乾燥ミルワームを食べやすい大きさにできるような環境を用意したり、豆やお米を厨房からもらってきてつぶしてみたり、調合したり…と、実際に使える素材を用意することで、より子どもが「お料理すること」を楽しんだり、動物が食べるものに興味を持ったり…という風になるのではないかなと思いました。
また、「抱っこができるようになった」と喜んでいる子どもに対しては、動物があちこちに行きすぎないように過ごせるスペースを作ったり、安全に抱っこできる環境を整えることが考えられます。
このような物的環境を整えつつ、保育者が声をかけたり一緒に取り組んだりすることで、子どもたちは自分の興味をさらに広げたり深めたりできると思います。
私たち保育者は、子どもの気持ちや興味を尊重し、それを実現する準備を整えることが大切な役割です。
環境がもたらす子どもの主体性
こんな話をしていると、この保育者からは、「最近、子どもたちは小さなおうちに入ることを楽しんでいるんです。そこで、鶏も寝ているんだよということを伝えると、とても驚いていました! だから、鶏も一緒におうちに入って寝る場所を作ってみたりするのはどうですかね?」という素敵な提案が出てきました。
こどもの興味関心を拾い上げながら、さらに遊びが広がる環境を用意したり遊びを提案することで、主体的な遊びが自然と広がっていくのです。
カンファレンスの中で、保育者が少し、遊びを広げるコツをつかんでくれたような気がして、とてもうれしい瞬間でした。
学生の視点から学ぶ保育のやりがい
見学に来てくれた学生さんが語る「おもちゃがないのに、子どもたちが自分のやりたいことをやっていてすごかったんです!」という感想には、私たち保育者の工夫しているポイントがいくつも含まれてたのだと思います。
完成されたおもちゃではなく、子どもたちの興味や関心に応じて、遊びを広げたり深めたりする過程には難しさもありますが、同時に大きなやりがいも感じます。
向山こども園の保育者たちは、日々研鑽を積みながら、子どもたちにとって何が最善かを考え、環境を工夫しています。
その姿を「すごい」と感じてくれた学生さんと、未来に一緒に働ける日が来るとしたら、きっと素晴らしい保育が実現するのではないかと思います。
保育の現場で子どもの姿を見守り、その興味を拾い上げることは、保育者にとって創造的なプロセスの連続です。
環境を整え、関わりを工夫することで、子どもたちの遊びや学びは深まったり広がったりしていきます。これからも保育の可能性を保育者と一緒に追求していきたいと思います。