世代を超えて寄り添う保護者支援のポイント - 現代の課題と対応策を考える-
今日は、子育て相談の電話受け手ボランティア養成講座で、講演をさせていただきました。
これまで保育に関する発表が多く、特に最近はAIやICT、マネジメント、保育実践、園改革についてお話しする機会が増えていました。
一方で、今回のように子育て支援をテーマにした発表はあまり経験がなかったため、資料の調査からプレゼンテーションの作成まで新たに取り組みました。2時間という時間を活かしながら、ワークも交え、しっかりお話させていただきました。
現場で保護者と日々向き合っているスーパーバイザー(学年主任のような役割)や子育て広場を担当している保育者の方が、より多くの具体的な事例を持っていますし、私よりも素敵なスキルやコツを持っていると思うので、向山のスタッフからもいろいろな情報を聞きながら、内容をまとめて発表させていただきました。
今回お話しした内容を、改めて整理して記録として残したいと思います。
世代間での考え方の違いと時代背景
まずは、支援をされる候補の方々が、50代から60代の方が多いということをお聞きしていたので、保護者との関わりにおいて世代間の考え方の違いを理解することの重要性について話しました。
仕事観では、かつては長時間労働や長期勤務が当然視されていましたが、現在は自己実現や働きがいを重視し、転職も一般的になっています。
また、家族観も変化し、かつては専業主婦の母親が家事・育児を担う性的役割分業が主流でしたが、現在は共働きが当たり前となり、夫婦間での家事育児の分担や育児参加が進んでいます。
情報の取得方法についても、昔はテレビや雑誌という、俗にいうオールドメディアが主流でしたが、現在ではSNSやアプリを活用する保護者が増えています。その結果、情報量が膨大である一方で、偏った情報や誤った情報に触れるリスクも高まっています。
子どもとの接し方も、親として叱ることやガマンを教えることが重視された時代から、共感や受け止めを重視する傾向に移り、親子の距離感がフラットになりつつあります。
このように、どちらがいいとか悪いということではなく、時代背景の違いにより、考え方や価値観が変わっていることを認識することの必要性をお話させていただきました。
現代の保護者の抱える悩み
現代の保護者が抱える悩みとしては、育児不安、情報過多、孤立感が挙げられます。
これらのことは、感覚的なことよりもデータを見ていただくことが大切だと思ったので、調査などについて触れながら説明しました。
厚生労働省や文部科学省の調査によれば、「子育てに不安を感じる」と答えた保護者が多数派であり、その中でも「しつけの仕方がわからない」「子どもの健康や発達への不安」が大きな割合を占めています。
発達障害や発達の個人差に関する情報が増えたり、SNSの普及によって他の家庭と比較しやすくなったりしたことで、「理想の子育て像」に触れる機会が増えています。その結果、親が子どもの成長を過度に心配したり、プレッシャーを感じるケースが増加しています。
共働き世帯の増加に伴い、家事や育児、仕事を両立する負担も大きくなっており、夫婦の時間や自分自身の時間が取れないことへのストレスも課題となっています。
さらに、育児関連の支援制度の利用方法を知らないために、必要以上に孤立してしまう保護者も少なくありません。
事例と分析
講演では、実際の保護者対応事例をいくつか取り上げました。
一つの例として、園内で起こった子ども同士のやり取りについて、保護者間のトラブルに発展したケースを紹介しました。
また、穏やかな保護者が突然不満を爆発させた事例や、自分の選択が間違っていないかを確認し背中を押してほしい保護者のお話や、夫婦間で同じ方向に過剰に一致してしまい冷静さを欠くケースも挙げ、保護者の多様な心理状態を理解することの重要性をお伝えしました。
(これらの事例は、数年前に実際に起こったものでしたが、noteでは詳細を割愛します。)
支援のポイント
最後に、保護者を支援するためのポイントとして以下の4つを提案しました。
自分の経験を押し付けない
保護者との会話では、自分の子育て経験を参考に伝えることは有効ですが、「こうすべき」という押し付けにならないようにすることが重要です。現在の保護者が置かれている状況をまず丁寧に聞き取ることが大切です。現代の育児事情を理解する
育児環境や支援制度、保護者が利用しているアプリやサービスについても把握することで、的確なアドバイスが可能になります。時代ごとの変化に敏感であることが必要です。共感を重視する
保護者は解決策よりもまず共感を求めています。「辛かったね」「それだけ頑張っているんだね」という言葉が、保護者の不安を和らげる効果的な手段となります。時代を認め、肯定的に寄り添う
現代の子育て環境や価値観を否定することなく受け入れ、保護者の考えを尊重した対応が重要です。「今の時代はそうなんですね」と共感を示しつつ、一緒に解決策を考える姿勢が求められます。
まとめ
講演では、保護者支援における世代間の違い、現代の課題、具体的な事例分析、そして支援のあり方について広範囲にわたってお話させていただきました。
保護者を取り巻く環境が急速に変化する中で、支援者も柔軟に対応し、共感と寄り添いを重視する支援の在り方が求められていると感じます。
今回の講演を通じて、現場での日々の取り組みに少しでも役立てていただければ幸いです。