2歳の遊びって深い!
2歳になったばかりの子どもたちの遊びの中で、保育者から聞いた砂場での遊びがとても印象に残ったので、その豊かさについて感じたことを書いてみたいと思います。
ただ砂を移す遊びが持つ意味
2歳になったばかりの子どもたちが砂場で見せた遊びは、想像以上に奥深いものでした。
容器から容器へ砂や泥をひたすら移し替えるだけという一見単純な行動。
それでも子どもたちはその過程に夢中になり、遊びに没頭していたのです。
この遊びを話してくれた保育者は、この遊びを見守ってくれていたのですが、その姿勢がとても印象的でした。
多くの保育者や親は、子どもの遊びに何か「発展」を加えようとしがちです。何を隠そう、私はよくやってしまいます。
例えば、「これは何の料理かな?」と声をかけてみたり、「水入れるとどうなるかな? お父さんやってみようかな~」なんて言って誘導する言葉をかけることもあります。
単純に私は飽きっぽくて、もっと楽しくしたい!と思ってしまいがちなのかもしれません。
しかし、この保育者は違いました。彼女は子どもたちが今楽しんでいることをそのまま認め、「容器から砂を移す」という遊び自体が持つ豊かさを大切にしてくれていました。
遊びの中に隠された物理的な学び
一見するとただ砂を移しているだけのように見えるこの遊びには、多くの学びが潜んでいます。
子どもたちは、砂の感触や重さの違い、道具に砂がくっつく感じ、容器に移した時の砂の動きなどを試行錯誤を通じて体験しています。
また、水を加えたときに砂や土が変化することも体験的に学んでいるのです。
これらの経験を通じて、子どもたちは
素材の特性:砂は乾いているとさらさらで、水を含むと固まりやすい。
重量と質感:砂と泥の重さの違いや、持ち上げた時の感触。
試行錯誤:水を足すとどうなるか、どれくらいで水が溢れるか、といった実験的な行動。
などを感覚的、体験的に学んでいると言えます。
こうした発見や試行錯誤は、まだ語彙が少ない2歳児にとっては言葉で表現されにくいものです。
「みてみて! すなは かわいていると サラサラだけど みずをいれると かたまるんだよ!」なんてことを話してくれるわけではありません。
そのため、大人から見ると遊びが停滞しているように見えてしまうこともありますが、実は着実に小さな変化や学びが進んでいるのです。
見守る姿勢の重要性
そしてもう一つ大切なことがあります。
この話を通じて感じた、ただ見ているだけのように見える保育者の役割の重要さです。
実は「見守る」こと自体が高度な技術であり、深いこども理解を必要とします。
子どもが自然に遊びを進め、自己発見を楽しむ時間を尊重することで、子どもは自分自身で学びを広げていくことができます。
『見る』ことと『見守る』ことは大きく異なると感じます。
見守る際には、「この子は何が楽しいのだろう?」「あ、今何かを発見したね」「思い通りにいかなくて、もやもやしているのかな?」と、心と頭を働かせながら観察します。
その中で、手を出さずに見守る行動を選ぶのは、『あえて動かない』という判断です。
以前、ダンサーの方から「動作を止めて維持する方が、動くよりも多くの筋肉を使う」と聞いたことがあります。
保育者も同様に、子どもたちと活発に関わるよりも、意図的に動かず見守ることのほうが、より多くの力を使っているのだと思います。
経験を重ねた保育者ほど、遊びを発展させる技術が身に付いてくるので、積極的に介入する傾向が強くなることがあります。これは決して悪いことではありませんが、時に「今ここ」に集中している子どもたちの気持ちを見落としかねません。
この保育者は、子どもの今遊んでいる瞬間に寄り添い、子どもたちの純粋な楽しみを尊重してくれました。
これは、遊びが持つ本質的な豊かさを見逃さないようにするための大切な姿勢だなと、つくづく思いました。
遊びの中に隠された精神的な成長
このような保育者の姿勢から、子どもは物理的なことのほかに、
承認感:自分のやっていることを認められているという感覚
自己効力感:自分ってすごいことができるんだ!という感覚
自己肯定感:自分は大切な存在で、自分のことを好きだと思える気持ち
を感じ、内面的に成長しているのだと思います。
子どものペースを尊重する
保育者の素敵な話を基に、何が素敵だったのかな?と整理してみると、2歳児の「砂を移す」というシンプルな遊びの中に、こんなにも多くの学びが含まれていることを改めて感じました。
子どもは自らの体験を通して、素材の感覚や動作の結果を理解したり、人との関係性の中で内面的なものを育んでいきます。
大人にしてみたら、なんて事のない行動で、ともするとめんどくさい作業のようなものでも、こどもにとっては、大発見と満足感を感じる大切な活動です。
そんな重要なプロセスだからこそ、大人が適切な距離感で寄り添い、子どもの自然な興味や活動を認めることが重要です。
教育・保育の現場として、これからも子どもたちのペースを尊重し、学びの豊かな遊びを展開していくために、見守ることを大切にしていきたいと思いました。