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公開保育を終えて:第1弾 公開保育は誰のためのもの?
先日行われた公開保育では、対面とオンラインの両方で多くの方々にご参加いただきました。
対面では50名以上、オンラインでは20名以上の参加者があり、東北各地からのご参加に感謝しています。
今回はその公開保育の際に寄せられたご意見や質問に基づき、私が感じたこと、学んだことをシリーズ形式でお伝えしていきます。
ある園の先生からのご指摘
オンライン公開保育に参加されたある園の先生から、「否定的な意見かもしれませんが…」と前置きしたうえで、次のようなご指摘をいただきました。
子どもの声が聞こえず、説明に依存してしまうため、リアルな保育とは異なる印象を受ける
マイクの音量が場面によって異なり、長時間聞くのが大変
情報が限られる中での意見交換となり、フラストレーションを感じた
これらは、オンライン公開保育の課題を的確に捉えた重要なご意見です。
音声問題の原因と対策
まず音声に関してですが、私の未熟な技術の問題が主な原因でした。
今回、保育の部分では7台のカメラを切り替え、ワイヤレスピンマイク4本、クラスの収音用マイク2本の合計6本のマイクで収音をしていました。
保育現場はご想像の通り様々な音に溢れており、音声をクリアに保つのがなかなか難しいものです。加えて、密閉型のヘッドホンでモニタリングしながら行うのが理想的な環境なのですが、インカムでのやり取りをしながら、音声のミキシングのモニターを片耳で行いながらの配信なので、十分な音の調整がなかなか難しい状況にありました。
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今後、技術面をさらに改善し、より快適な視聴環境を提供できるよう努めたいと思います。
中継者の主観を通じた説明の利点と課題
今回のご指摘の中で最も鋭いなと感じたご指摘は、「中継者の主観を通じた説明に依存してしまう」という点です。
オンライン公開保育では、保育の一場面を切り取り、それに解説を加える形式を採っています。これには、視聴者が何を見ればいいかを明確にし、議論の焦点を絞るという利点がありますが、一方で視聴者の視点が制限されるという課題もあります。
試行錯誤の中では、子どもの声を拾いながら解説なしで保育を見せる試みもしましたが。しかし、子どもの生活の中で起こるドラマの中に、ちょうどよくカメラとマイクを仕込んでおくことは難しく、画像はもちろん、重要な声を届けることは非常に難しさがありました。
そのため、保育の映像の垂れ流しでは、何を見るべきかがわからない、という声も多かったため、今の形式に落ち着きました。
公開保育の本質:誰のためのものか?
このご指摘を受け、私たちが改めて考えたのは、「誰のために公開保育を行っているのか?」という問いです。
私たち向山こども園の答えは、「向山こども園の保育者が一番勉強になるための公開保育」である、ということです。
私たちは、モデルのような完璧な保育を行い、来園された方々に多くの学びや示唆を提供できる園ではありません。
むしろ、試行錯誤を重ねながら、暗中模索の中でもがいている園です。そのため、私たちの保育を見ても、外部の方々にとって直接的なメリットがあるかどうかは分かりません。
しかし、私たちにとっては、外部からの視点を通じて自分たちの保育を見直すことができる、貴重な機会だと考えています。
来園された方々に素晴らしい「お土産」を持ち帰っていただけるような園ではないかもしれませんが、外部のプロフェッショナルな視点を通じて学ぶことが、公開保育の最大の意義だと感じています。
ハイブリッド形式の可能性
コロナ禍が終わり、対面での公開保育を再開していますが、オンラインの利点も捨てがたいものもあります。
例えば、子どもたちや保育者にかかる負担が少ない点や、協議会の中で、中継した内容を投影しながら、たとえその場面を見ていなくても、どのようなことが議論されるのかが分かる点なども、対面だけではなしえないメリットだと思っています。
今後は、オンラインと対面のハイブリッド形式を導入することで、それぞれの長所を活かしつつ、より良い公開保育を目指したいと思います。
今回、オンライン公開保育の問題点や課題をご指摘いただきましたが、現時点で私が考える公開保育の形を、まとめて書いてみました。
オンラインの公開保育では、どうしても保育の一部分を切り取ることになりますが、その分議論の焦点が明確になり、学びを深めやすいと期待しています。
次回予告
今回のシリーズでは、皆さんからいただいたご意見に対して、私たちがどのように受け止め、保育の改善に活かしたのかをお伝えしていきます。次回も、ぜひ楽しみにしていてください。