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向山こども園を「職員にとって○○な場所」と言葉にするなら?
北海道で講演を行った際に、たくさんの質問をいただきました。
そこで、今日から「シリーズ問いに向き合う」として、一つひとつの質問にじっくりお答えしていきたいと思います。
今日の質問は、「こどもがこどもらしくいられる場所」が向山こども園のコンセプトですが、そこで働く職員にとって、向山こども園を「職員にとって○○な場所」と言葉にするなら、どのような表現がふさわしいでしょうか?というものでした。
私は比較的質問をいただいたときに、パッと答えが出てくるのですが、実はこの問いを受け、悩んでしまいました。
最初は、「自己実現ができる職場」「成長できる職場」「安心して働ける職場」といった言葉が思い浮かびました。しかし、よく考えてみると、これは私の立場から見えている職場像であり、手段でしかないなと思ったのです。
そこで今回は、そもそも「職場」というものはということを考えながら、問いに向き合ってみたいと思います。
「園」は誰かが用意するものではなく、みんなでつくるもの
「職員にとって○○な場所」と考えたとき、私の中で違和感が生まれました。なぜなら、「職場とは、誰かが用意してくれるものではなく、そこに集まった人たちが作り上げていくもの」だからです。
(とか言わないで、キラキラした感じのことを言えばいいのにと思うのですが、noteではきれいごとではなく、ありのままの私の考えを書きたいと思います(笑))
選ぶ時と働き始めてからで意味が変わる
私たちは、「こどもがこどもらしくいられる場所」をつくるために集まったプロフェッショナルな集団です。
それぞれが主体的に考え、行動し、チームとして協力しながら日々の保育をつくりあげていく。
そうして、職員一人ひとりが力を発揮し合うことで、はじめて「園」としての形が生まれるのが理想だと思っています。
もちろん、全員が熱い思いで就職するわけではありません。というより、むしろ、「家が近いから」「働き方改革が進んでいるから」「保育がよさそうだから」「保育者の雰囲気がいいから」「子どもがいても働けそうだから」など、自分の気持ちで「職場を選ぶ」わけですから、自ら職場を作ろうと思っている人はほとんどいないのは当たり前のことです。
しかし、職場とは、平たく言えば、「給与をもらい、最高のパフォーマンスで価値を生み出し提供する場」なので、「選ぶ」時には自分中心に考えますが、働き始めたら、価値をどのように提供するかに注力すべき場に変化するものであると私は思っています。
「受け身」からスタートして「共創」へ
確かに就職前は「職場はこういう場所です」と私たちが用意したイメージに対して「ここで働く」という選択をすると思います。これは受け身の姿勢からのスタートです。
しかし、働き始めれば、それは180度立場関わり、共創する主体者になるのです。
そのため「園」とは、子どものために最善を尽くすために、それぞれの職員が力を出し合い、支え合いながらつくるものなのです。
この立場のギャップがあるからこそ、「職員にとって○○な場所」を一言で言うのはとても難しいなと私は思いました。
プロフェッショナルな集団としての在り方
コンセプトとは何か?
「園」は色々な人から見たときにその定義が変わります。
株式会社がだれのものなのか?という問いに似ているかもしれませんが、今日はひとまず、職場としての園を考えてみますが、この定義とコンセプトの関係は少し異なります。
コンセプトとは、見る立場によって変わるものではないと私は思っています。
つまり、こどもから見ても、保育者から見ても、保護者から見ても、社会から見ても、向山とは何か?と聞かれたときに答える統一した答えが「子どもが子どもらしくいられる場所」という答えになるのです。
コンセプトを中心に置いたときに考える「職場」という側面
向山こども園が目指すのは、「子どもが子どもらしくいられる場所」を実現するために、職員同士が互いに成長し、協力し合いながら保育をつくっていくことです。
そのためには、マネジメント側が「働きやすい環境」を整えるだけでは不十分です。むしろ、マネジメント側が行う働き方改革は、一人ひとりが自分の力を発揮し、それを持ち寄ることで、より良い職場環境をマネジメント側として最大限発揮してもらうために行う手段なのです。
だからこそ、「自己実現ができる職場」「成長できる職場」「安心して働ける職場」というのは、目的ではなく手段なので、この答えを私は問いへの答えとできないのです。
仕事とは、単に時間を提供するものではなく、価値を生み出すものです。その価値とは、「子どもが子どもらしくいられる場所をつくること」。自己実現や働きやすさも大切ですが、それらはあくまで「目的」ではなく、より良い保育を実現するための「手段」にすぎません。
それぞれが主体的に関わることで生まれる「園」
子どもが子どもらしくいられる場所と作るために、そこに集まった「仕事」をする職員は、それぞれができることを精一杯することが求められます。
経験豊富な保育者は、より深く子どもの姿を読み取り、質の高い保育を提供しますし、新人の保育者は「どうすれば子どもたちにとってより良い環境をつくれるのか?」と考え、学びながら成長していくことが求められます。
また、厨房のスタッフは、子どもたちが今も、これからも健康でいられるようにするための食事の提供や食習慣の提供をする一翼を担っていますし、保育補助のスタッフさんは、環境整備を通して、子どもが安全に快適に過ごせる場所を作っていきます。
こうして、互いに学び合い、助け合いながら、一人ひとりが主体的に関わることで「園」というものが形成されていくのです。
だからこそ、「職員にとっての園とは?」という問いに対する答えは、「誰かが作ってくれる場所」ではなく、「自らが関わることで生まれるもの」であるべきなのです。
問いに対しての答え
向山こども園が目指すのは、「こどもがこどもらしくいられる場所」をつくるために、「自分の良さを引き出し、互いに磨き、チームとして力を合わせ、こどもが子どもらしくいられる場所を作る職場」です。
ちょっと、期待された答えではないかもしれませんが、何かの参考になれば幸いです。
次回の問いに向き合うシリーズも、ぜひお楽しみに!