【NY Bar】MEEの解き方 ~たくさん書けない人向け~
本記事では、MEEの解き方を具体的に解説します。この解き方は、論文科目(MEE+MPT)172.2点(推定上位1%)の筆者が、問題演習を100問以上こなす中で自分に合うと思った方法です。人それぞれ解きやすい方法があると思うので、一つの参考として読んでいただけたら幸いです。
なお、MEEの基礎知識については、別記事をご参照ください(有料記事ですが、無料で読める部分に基本的な情報を載せています)。
概説
答案はIRACの形式で作成します。以下のように解き進めます。
指示文を読みながら、枠組みを書き出す
問題文を頭から読む
Issueを書き出す ※結論を冒頭に書かない
Ruleを(短めに)書く
問題文にある事情を当てはめる(Apply)
Conclusionを書く
以下、公開されている(実際の受験生による)参考答案を適宜参照しながら解説します。NY州の司法試験委員会は、過去問と参考答案を公開しています。
参考:Past Exam Questions and Sample Answers
今回参照するのは、2024年7月MEE 4の参考答案1つ目です。
参考:July 2024の60,61ページ
詳細
1. 指示文を読みながら、枠組みを書き出す
まず最初に、問題文を冒頭から読み始めるのではなく、指示文(問題文の最後にある、解答すべき内容を指示する文章)を読みます。例えば、July 2024のMEE 4(問題文は上記PDFファイルの7ページ目)の場合、下のほうにある1., 2., 3.で示されている疑問文が指示文です。ここを最初に読む理由は主に2つです。
・何の科目の問題かを予想することができる
・どのような論点を論じることになるかをある程度予期できる
MEE本番では、問題文に「Contracts」などと書いてくれてはおらず、各小問がどの科目の問題かを自分で予想しなければいけません。そのため、いきなり問題文を冒頭から読むと「これはConstitutionの問題か、Tortsの問題かよくわからないな」といったことが起こりえます。また、どのような論点を論じることになるかを予期できれば、問題文を読む際に着目すべき事実関係をピックアップしやすくなります。そのため、指示文を最初に読むことが重要です。MEE 4の指示文を読むと、科目はContractsで、契約の成立や執行可能性が論点になっていることが予想できると思います。
また、指示文を読みながら、答案の枠組みを書き出すのもおすすめです。筆者は、MEE本番で、この小問について以下のような枠組みを作りました。
これで、IRACのうち、Issueの書き出しと、(仮の)Conclusionが完成します。英文的には美しくないのだと思いますが、Issueの書き出しはいつも同じ形("The issue is whether …")にして時間を節約していました。Conclusionは、指示文の疑問形を通常の文章の形にするだけです。本来はrephraseが望ましいのだと思いますが、ここも時間を節約することを優先しています。参考答案ではConclusionが充実した記載になっていますが、ここまで書けなくてもある程度のスコアは取れます。(ここで時間を使うより、あてはめを充実させたり、ほかの難しい小問に時間をかけるのがいいと思います。)
2. 問題文を頭から読む
ここで初めて、問題文を頭から読み始めます。1.のステップである程度科目や論点の予想がついているため、注目すべき事実が見つけやすくなっています。問題文を読みながら、上記の枠組みの中に関連しそうな事実をごく簡単に書き込むのも有用ですが、読み進めるにつれて書きたいことが変わることもあるので、読みながら書くことに時間をかけすぎないほうがいいと思います。なお、本番では、問題文は紙で配られ、自分のパソコンにインストールした専用ソフトに答案を打ち込みます。問題用紙への書き込みは可能ですが、青ボールペン、黒ボールペン、黒鉛筆しか使えません。本番の形式に慣れるため、本番で使うペンをあらかじめ決めて、問題演習時に実際に使うのがいいと思います。(筆者は、アメリカのダイソーで買った太めの青・黒ボールペンを使っていました。)
3. Issueを書き出す ※結論を冒頭に書かない
問題文を読み終えたら、あとは最初に作った枠組みに沿って答案を作るだけです。Issueをどう書くのかは意外と難しいですが、限定的に書かないようにすると、大外しはしないかなと思います。MEE 4の参考答案では、小問1のIssueを "The issue is whether there was a bargained-for detriment, consideration, and mutual assent."と書いています。契約の成立が問題になっているので当たり前のことを書いているだけですが、それでも参考答案に選ばれるくらいなので、それでOKということだと思います。JD Advisingの以下の記事の"6. Don’t worry about eloquent issue statements"でも、Issueの記載に時間をかけないようアドバイスされています。
参考:15 MEE Tips—From A 99th Percentile MEE Scorer
なお、英文では結論を最初に書くのが良いとされており、参考答案の中にも最初に結論を書いているものがたくさんあります。ただ、筆者は、よほど結論に自信がない限り、最初に結論を書くのは避けるべきと考えます。その一番の理由は、上記のJD Advisingの"7. Don’t start with a conclusion (in general)"にあります。ここでは、"The reason you do not want to start with a conclusion first is that if you are wrong, the grader will penalize you for it. Some graders appear to not even read the rest of an answer to an issue if the conclusion is wrong."と書かれています。つまり、最初に書いた結論が間違っていた場合、一部の採点者は、その先の答案を読んでいないように思える、ということです。日本人からしたらびっくりの内容ですが、アメリカにはそんな人もいそうだな、、という気もします。さすがに結論が間違っていた瞬間ゼロ点になることはないとしても、間違った結論を書いた次の文章が拙い英語で、その次も中学生みたいな英語で、、と続いたら、悪い点を付けたくなる気持ちもわかります。そのため、一般論としては、結論を最初に書くのは避けたほうがいい、というのが筆者の意見です。
4. Ruleを(短めに)書く
たくさん文章を書けない人は、Ruleを書き出すのにあまり時間を割けないと思います。その点、参考答案の小問1の答案はコンパクトでよいと思います。ここで節約した時間を、次の5.で使いましょう。
Rule(論証)の教材として何を使うか、どのように加工するのか、などの具体的な勉強方法は、こちらの記事をご参照ください。
5. 問題文にある事情を当てはめる(Apply)
Barbri問題集のチェックポイントを見てもわかりますが、この5.が一番の得点源となります。Ruleで書けなかったあてはめの要素がわかっていることをアピールしながら、問題文の事情をがんばって拾うように心がけましょう。
6. Conclusionを書く
あてはめの内容を踏まえ、最初に仮で書いたConclusionを調整します。
参考答案、合格水準
参考答案を見てみると、小問1の答案はおおむね上記の解き方に沿って作れそうなものになっています。小問2, 3の答案は、ややRule部分が充実しており、その結果、全体のワード数が750ワード超と、日本人が30分で書くには少し長めになっています。ただ、Rule部分をもう少し省略して書けば、目指せない答案ではないかな、という気がします。
Barbri問題集のチェックポイントでは、どのくらいのポイントに触れられていれば合格水準かが定量的に示されています。これがどのくらい信用できるかわかりませんが、これに依拠すると、(超ざっくりしたイメージですが、)例えば小問3つの問題の場合、1つの小問で7割方解けており、2つ目の小問で半分ほど、3つ目の小問で2割ほどしか解けていなくても、合格水準に達すると思います。また、大問6つのうち2つ丸々白紙で受かった人もいるようです。そのため、答案練習でうまく書けなくても、凹むことなく淡々と問題をこなしていきましょう。
MEEの勉強教材・方法
その他、具体的な勉強教材や方法などについては、以下の記事でご紹介しています。同記事内にも記載していますが、答案練習の際には、20分などの短時間で答案作成する練習もすると非常に効果的です。
最後に
ごく簡単でしたが、MEEの答案作成方法のご紹介でした。どのくらい論証を覚えているか?や英語のライティング力などにより、最適な答案作成方法は変わってくるかと思いますが、一つの方法として読者の方の参考になればうれしく思います。
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