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ポエマーな甥っ子

姉の甥っ子は中学二年生。今どきの若者らしく、YouTuberに憧れる不登校児。最近は学校へ行かない子供が増えていると数日前に見たニュースが伝えていた。

一口でYouTuberと言っても、登山系や考察系、料理系など、さまざまなYouTuberがいる。

その甥っ子に「どんなYouTuberになりたいの? 」と聞くと「ゲームの実況系」と返ってきた。それは、ひたすらゲームをプレイしながら実況し続けるYouTuberだそうで、彼はそういうゲームの実況動画を見ているのが好きらしい(ちなみに、私は耳掃除の動画を見るのが遅れてやってきたマイブーム)。

いまは多様性の時代、学校に行くことがすべてじゃない、夢があるのはいいことだ。でも、YouTuberとはまた、参入は簡単だけど、だれもが成功できるかは話が別。

仕事柄、動画の撮影現場に立ち合い、編集作業もかじったことのある経験から、こんなに大変なことを毎日、毎週、毎月、毎年続けるなんて、自分にはできる気がしなかったし、したいとも思えなかった。

だから、YouTuberになれる人は、多大な苦労をつらいと感じず、迷う前に動画製作を始められる行動力、コツコツ努力できる継続力、さらに成功を収める人は、センスと運の両方をもっていると感じている。

それもあって、件の甥っ子に、「すぐ動画を作ってYouTubeにアップし始めたほうがいいよ」とアドバイスすると「その動画を作るには、まずゲームソフトが必要で、専用のモニター、専用のマイク、動画撮影機材、編集機材が必要で、それがいまはないから無理」と言う。「いまあるゲームをスマートフォンで撮るのじゃダメなの?」と訊ねると、「音声と映像のクオリティが低くなるから駄目」と、平然と言う。彼の夢は前途多難である。

今年の夏、そんな甥っ子とふたりきりで山に登った。学校に行かず、家でダラダラ過ごしているだけなので、たまには外で体を動かす機会を作ってやって欲しいと、私の母親(甥っ子のお婆ちゃん)から言われたからだ。

二泊三日の山小屋泊。当日は毎日暑く、なかなかハードな行程だったことも重なり、甥っ子には「もう二度と山には登らない!」とヘソを曲げられてしまった。ちょっと反省しないといけない。

その山行の2日目。次のピークに向かって尾根を歩いているとき、突然大雨が降ってきた。甥っ子に「レインウェアを着よう」と指示を出し、ひどい雨のなか、靴の中まで濡らしながら再び歩き始める。すると、数分もせずに雨足が弱まり、雲の切れ間から青空まで見えはじめた。その後、日差しが注ぐ雨の青空という不思議な景色がしばらく続き、甥っ子もなんだか楽しそう。

すると後ろを歩く彼の口からポロッと明言が。

「山が泣きながら笑っているようだね」

YouTuberの素質より、彼には違う職業のセンスがあるように感じるのだけど。そんな一夏の出来事だった。

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