光を背負う人
真っ赤な指先
白い吐息
目深に覆う頭巾
水滴だらけの眼鏡の奥
燃え残りの炭のように
瞼を閉じかけて
その火が消えないように
縋るように期待をして
そこに居ました
顔を顰める程
踵と土踏まずが痛み
すれ違い様に
人と接触してしまったら
冷たい泥と同化してしまいそうな
消耗しかけた気力
輝かしい最終段階を
予告する音楽は
一人一人姿を現し
あなたは私の正面に立ち
たくさんの観衆越しに
向かい合った
照明の煌びやかさを諸共せず
まるで射る様な気迫に
私の目は開かれる
瞬きをするまで
喧騒が遠のき
呼吸を再開した瞬間
あなたの声がしました
音楽のうねりと振動が
鼓膜や胸を叩き
波に乗る様に心に注がれる唄声
堰き止める必要のない涙に
熱を感じた瞬間
強い風が私の頭巾を取り去った
寒さすら忘れる音の波が
光に照らされて私を包んだから
ずっと
ずっと
あなたを待っていました
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