前略:乙女達へ
女でいることに
不都合な場合は
昔からままある
現実世界や
この身に起こることでも
女でいることは
弱み以外の何物でもなかった
それが私の世界だった
着ている服を
男のようにしたところで
丸みを帯びる腰や
主張していく胸の
成長を止めることはできず
気がつけば
そこらの女すら視線を送る
女になった
別に顔が良いわけじゃない
泣きぼくろ以外は
どこにでもある顔つきだ
それでも
私に送られる視線は
まるで
刺さってくるようで
その視線の針が
疎ましく感じることすらあった
瑞々しい頃を
振り返る身になって思うのは
私は
私という女に反発しつつ
ある種の誇りを抱いていたのだと思う
肩を広げ背筋を伸ばし
父譲りの黒髪をなびかせて
遠くを見るように視線を定め
風を切るように大股で歩く
それが美しいと感じていた
きっと今でも
その姿を見かければ
美しく感じるだろう
今
瑞々しい瞬間を生きる
乙女達へ
貴女は自らに疑問を抱えていても
抱えていなくても
ただそこにいるだけで
美しい
だからどうか
80年先でも
その瑞々しい美を
心に宿していて
手元にあるのが
「刹那に生きる」という
カードしかなかったとしても
貴女は自分が思うより
強くて 賢い
だから顔を上げて
遠くを見て
皺が増えても
子どもを産めなくなっても
女に生まれた以上
死ぬまで「女」なのだから
骨になるまで
その心に宿った美を
楽しみましょうよ
そして微笑んで
笑顔だけは
いくつになっても
変わらないものなのよ