
俳句「私の小春」
母笑みて胸に日の差す小春かな
介護の日々の中で一番の幸せはやはり母の笑顔を見ることだった。認知症も進み、足も衰え、何をするにも人の手を借りなければならなくなった母にどんな楽しみがあったのか、私には知る由もない。自分の子どもと分からぬ私が傍にいたところで、母のこころがどれくらい慰められたかも分からない。それでも、できるだけ多くの時間、母の傍にいようと思ってそうしてきたつもりだが、何も出来ない母の境遇を思うにつけ、本当にこれでいいのだろうかと自問自答することが何度もあった。だから、母が笑ってくれると救われた思いになった。
母にとっては生き続けることはつらいことだったかも知れない。けれど、私はまだまだ母の笑顔が見たかった。