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詩「人類が最初に発した『ことば』とは何か?」

ことばの原初

人類がはじめて発した
ことばと呼ぶに価するものの
品詞は何か?

「ああ」や「おお」などの感動詞か
「これ」や「それ」などの代名詞か
物の名称を表わす名詞でもなく
動作や存在を表わす動詞でもなく
ましてや細かな意味を付加する
助詞や助動詞でもなく

人類がはじめて発した品詞
それは
形容詞ではなかっただろうか

それも
身体にまつわる「いたい」や「かゆい」
心にまつわる「うれしい」や「かなしい」
ではなくて
「うつくしい」ではなかったかと
私は想う

「ああ」や「おお」はことば以前だ
「それ」と言わずとも指差せる
「りんご」と言わずとも食べられる
「ある」と言うまでもなく存在する
「いたい」ならば身悶えし
「かなしい」ならば泣けばいい

けれど「うつくしい」は
ことばにして「うつくしい」と言わないかぎり
この世に存在しない
ことばにして「うつくしい」と言うことで
「うつくしい」ものと「うつくしい」という概念が
この世に生まれる

無から有を創り出す
「うつくしい」ということばこそ
ことばと呼ぶに価するものではなかろうか

ところで
認知症になった私の母が
よく口にするのが形容詞で
「うれしい」「おいしい」などの文脈で
「うつくしい」ということばを
発することがある

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