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俳句「団欒の灯」
春の灯のどれも円居に見ゆるかな
春灯という語には、なんとも言えぬ温かみがある。私は、夕食を囲む家族の上に灯る明かりをイメージする。十三歳のときに私立中学進学のため家を出た私は、四十歳のときにまた両親と一緒に暮らすことになった。なにより嬉しかったのは、夕食の膳を囲めることだった。父とはほぼ毎晩一緒に酒を飲んだ。
父が圧迫骨折になったとき、認知症もあったので当初は家で療養する予定だった。それが全く動けなくなって、仕方なく入院した直後に新型コロナウィルスの流行により付き添いはおろか見舞いさえ出来なくなった。
あの頃、家々の灯を見ると、華やかな灯もさみしい灯もすべてが、団欒の灯であるかのように思われた。