俳句「ふくら雀」
急ぎとてふくら雀とにらめつこ
早く飛び立ってくれ。こっちは急ぐんだ。だが、雀はこちらを見たままじっと動かない。介護の最中、何の用だったかわすれたが、ちょっと裏庭に出た時、一匹の雀と目が合った。いつもなら人間の姿を見るとすぐに飛び立つのだが、その日はなぜかじっと動かない。心なし身体が丸いようにも思われる。「これがふくら雀というやつか……」と思ったとたん、われ知らず見入ってしまった。急ぐ時に限って、寄り道してしまう質である。ストイックさに欠ける。メンタルが弱い。逃避癖がある。どれも当たっている。もっとも、真っ直ぐで強くて、立ち向かう人も、折れないための小さな逸脱を持っているのかも知れない。
心のハンドルにも遊びは要る。
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