俳句「戻れない」
幼年の嘘いまも悔ゆ蛇苺
後悔のない人生を送りたいと思う。だが、そんなことを考える年齢になる前に、何かしら後悔の種を蒔いてしまうのが人ではなかろうか。私の場合、それなりの分別のある大人になり、後悔のない人生を送りたいと思ってからでも、いや、それを強く意識しはじめた五十代になってからほうが、むしろ後悔の種を蒔いている気がする。「人はいくつになってもやり直せる」ということばは、他人にはかけられても、自分にはかけにくいものだ。
一週間前、一日前、一時間前と、時間の隔たりのない行為ほど、「ああしておけば良かった」とまるで過去に戻れるように感じてしまうけれど、過ぎてしまったことは幼年期と同じように、けっして戻ることは出来ない。