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俳句「母の笑顔」

母の黙また冬雲に日は陰り

 姉によると、ここ2、3年の母は笑うことが少なくなっていたという。実際そうだったのかも知れないが、一緒に暮らしている私の印象はかなり違っていて、確かに口数も減り、表情も乏しくなってきてはいたが、笑うことが少なくなっていたという印象はない。
 それはおそらく朝起きて私の顔を見たときの母の笑顔の印象が強いからかも知れない。もっとも一日を通じて見れば、母が笑ったり、上機嫌でいる時間は短くて、さっきまで機嫌が良かったかと思ったら、もう機嫌の悪い顔になっていたということはしばしばある。
 母が笑ったときは、雲の間から日が射したような気持ちになるが、笑顔が消えたときには雲が日を覆ったような気持ちだった。

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