映画感想「ドリーム・シナリオ」
-あらすじ-
冴えない大学教授のポールは、妻と2人の娘とともに日常を過ごしていた。
だがある日、そんな日常が一変する。
世界中の人の夢の中にポールが現れたからだ。
ポールは、夢に出る男として一躍有名になる。
それによって、自分の夢である本の出版の為のコネ作りもできると喜んだが、ある日を境に夢の中のポールは人々に危害を加え始める。
そして、夢の中で危害を加えられた人々は、現実のポールに対して拒絶反応をするようになっていく。
勝手に有名になり、勝手に悪者にされたポールはどうなってしまうのか。
-感想-
1.不明
予告編を観て、ホラーだと思っていたのだが違った。表現としてホラーっぽい部分もあるのだが、全体としては違う感じ。
かといってサスペンスでもミステリーでもない。ジャンルがよくわからなかった作品。
強いて言うならシュール・コメディだろうか。前半はそういった雰囲気があったのだが、後半はそれが薄れていたので全体的にそうかと言われると…といった感じ。
ブラックジョークなどで理解できていない可能性もある。
2.何もしていない
物語前半ポールは何もしていない。
本を出版する夢はあるが、原稿を一文字たりとも書いていないし、学生時代にアイデアだけ出した研究についても全く行っていない、そのうえで同窓生だった友人が同じアイデアの研究を発表しようとすると盗用といちゃもんを付ける。
また、夢の中で出てくるポールも何もしない。
本当に何もしていないのだが、この時が一番幸せだっただろう。
3.勝手に
自分が知らないうちに有名人になっていたらどう思うだろう。
ポールはチャンスと受け取っていて、ポジティブだなぁと思った。
4.行動すると
前半何もしなかったポールが、後半では色々やろうと奮闘するが、全部裏目に出る。
全てのタイミングが間違っているようで、痛々しく感じてしまった。
5.夢は叶ったけど
自分の望まぬ形で夢が叶うというのは、どんな気分なのだろうか。ポールは、諦めてしまったようだったが。
この望まぬ夢の犠牲として、職と家族を失うのは、代償としてあまりにも大きい。
そんな彼の新しい夢が、妻と手を取り合うことというのが何とも悲しい。
6.なぜ
ポールが人々の夢に出てきたのかは最後まで分からなかったのがモヤッとポイントだった。多分物語として重要な部分ではないから出さなかったのだろうが、気になってしまう。
また、人々がポールの夢を見なくなってから自由に他人の夢に入れる機械が発売されたが、あまりにも発売までが早すぎる気がした。
ポールの悪夢化事件を元に作ったと言っているが、こういったミームが鮮度を保っていられるのはそう長くないだろう。ポールが悪夢の男になってもまだ人気がある国に行って本を出版している時点で既にその機械は発売されているので、事件から恐らく1年前後の話だと思われる。
はたしてこれ程早く新技術の開発が販売可能な段階まで進むだろうか、ポールの件はこの機械の試作実験だったのではないか、といった妄想をしてしまう。
フィクションと言われれば、それまでの話だが、だとしても早すぎるような気がしている。
7.そこはかとなく
主人公のポールを筆頭に、登場人物ほとんどうっすら厭な性格をしている。
そのため見ていて、常に雨の日に濡れた靴下ぐらいの不快感があった。
-まとめ-
序盤はテンポよく話が進んでいくし、不思議な現象に引き込まれて面白かったが、途中から失速していって、挽回もなく、なぜそういう事が起きたのかの説明もなく、主人公の新しい未練ができて終わる。
目立つ色を纏えても中身が伴っていなければ駄馬と変わらぬということか。
喉に刺さった小骨みたいな感じの映画でした。