楽観視とネガティブと。
緊急事態宣言
街を歩いていると「ウィルスの感染防止のため」とか「行政からの要請に伴い」5月6日まで休業しますという張り紙をいたるところで目にする。
休業できることを素直にすごいと感心してしまう。
とはいえゴールデンウィークが終わったらみんな店を再開するのだろうか。
ウィルス感染防止を理由に休んだ店も5月6日すぎたら再開するのだろうか。
依然ウィルスは世界で猛威を振るっている。
現状考えると国が出した緊急事態宣言も行政の自粛要請も、どれも5月6日までの期限になっているがほぼ間違いなく延長されるだろう。
そうなったら要請によって休んでいた店はそのまま休業を延長するのだろうか。
自分も店を経営する者として少なからず「そんなに休んで大丈夫ですか、いつまで続くかわからないですよ」と心配してしまう。
余計なお世話だと言われるだろうけど。
自粛営業
他の店が休業するなか自分の店は営業時間の変更と短縮をして営業を続けている。
蓄えもないし、営業しなければ生きていけない。
休業してもやっていける体力があればとっくに休んでいる。
生きていくために行政の要請に反しない範囲で営業を続けている状況だ。
念のために東京都が開設した緊急事態コールセンターに電話した。
自分の店が営業しても問題ないかを確認したかった。
電話がつながるまで3日かかった。
電話に出た担当者の回答は「問題ない」ということだった。
東京都からのお墨付きをいただいた。
にもかかわらず店を開けることが悪いことをしているような気にさせられるのは何故なのだろう。
テレビなどのメディアをはじめ世間の目というのはとても怖い。
自分にとって怖いのはウィルスより人間だ。
未来への対策
自分はこの状況は1年近く続くのではないかと思っている。
思っているというより、そう覚悟しておくべきだと考えている。
早く終息するならそれに越したことはない。
売上が80%ダウン。それでもやっていくための方法を考えなくてはいけない。
いっそのこと店をやめてしまうという手もあるが、もしやめるとしてもそれは今じゃない。
やめるなら乗り越えてから、今やめたところで何もスタートできない。
継続を決めた以上は店の経営方針、営業内容、キャッシュフローを見直す必要がある。
短期的な計画と長期的な計画の両方でプランを立てているところだ。
自分はビビりだから仕事のことに関しては常にネガティブな予測をする。
都合のいいようには考えない。最悪の状況を想定して備える。
終わりが見えないウィルスという敵は実に厄介だ。
いつまで耐えればいいかわからない。
行政の補償も一時的なもので長期化することは考えられていない目先の対策。
この状況が続くなか、やっていけるかどうか全くわからない。
わからないものをあまり考えすぎても無駄なので、ネガティブに考えきった後は「なるようになる」と開き直ることにしている。
それはポジティブとは違う楽観的な心の持ちよう。
ネガティブに考えつつ楽観視する。
そのバランス。そのハザマ。
画面の向こうから聞こえる声
有名人が画面の向こうで「みんなで力を合わせて乗り切ろう!」と言っている。
好きな有名人ならそれを見て元気が出る人もいるだろうが、自分は違和感を感じることが多い。
そりゃ彼らは平気だろう、乗り切れるに違いない。
いまの世のなか未来がまったく見えない人の方が多い。
ひとりひとり状況が違う。
誰も助けてくれない。とにかく自分の力で乗り切るしかない。
両親も身内もいないアルバイトで食いつないでいる大学生を目の前にしても「力を合わせて乗り切ろう!」だなんて言えるのだろうか。
この事態はそんな甘っちょろいものではない。
国民の日常はこの先さらに厳しくなっていくだろう。
いまの自粛という抑制に耐えている人たちももって3週間が限度であろう。
精神的な疲労とストレスで社会全体が疲弊して弱体化するのではないだろうか。
ウィルスが終わってもそう簡単に日常は戻ってこないことをしっかり覚悟しておかなければならない。
ウィルスが収まったら終わりではなく、むしろ沢山のエネルギーを必要とされるのはそこからなのである。
「みんなで力を合わせて乗り切ろう!」と言うのは浮世離れした人ではく、今月の家賃も払えるかわからない中で必死にやっている老舗飲食店の主人あたりに言ってもらいたい。
負けて勝つ
スウェーデンが国策として選んだウィルス対策をご存知だろうか。
集団免疫で乗り越えるという選択。
封鎖はせずに自主性尊重というとても緩めの独自路線。
素人の考えではあるが一番最善な選択なのではないかと思う。
ウィルスに対してではなく国の未来に対して最善の選択なのではないかということだ。
日本の対策はすべて後手になっている。
どれも中途半端で無責任な対策ばかり。
このままでは日本という国の未来が心配だ。
1のために100でも1000でも犠牲にしてしまう日本。
ウィルスと戦うための犠牲が大きすぎて、戦いに勝利してもその後の復興で負ける気がする。
若い頃に恩師に教えられたことがある。
「負けて勝つ」という考え。
スウェーデンが選んだ国策はまさに「負けて勝つ」という選択だと感じた。
この先どうなるんだろうか。
きっとなんとかなるだろう。
そう思って今日も店を開けている。
心配ではあるけれど必死に生きればたぶん大丈夫だろう。
楽観視とネガティブだよ。
知らんけど。