20歳の時に、母が亡くなった。体は丈夫ではなかったが、突然のことで、現実として受け入れることができなかった。当時母は50歳、若すぎる。 当然涙はたくさん出るし、お葬式だってしている。だけど本当に母が居なくなったとは思えない。夢を見ているようで現実みがない。それとは対照的に辛そうに泣く父の姿は鮮明に覚えている。焼き場のドアを閉め、ジリジリッとベルが鳴る。ごおぅと音がする。 「あぁ───ッ」 我慢できずに声を上げて父は泣いた。 父の泣く姿を初めてみた。 うちの両親は仲が良く
電話は、突然に鳴った。 「上田さんのお宅ですか?高橋というものですが、正弘さんいますか?」 ───何か感じるものがあった。 「昨夜遅かったので、まだ休んでいます。」 「起こしてください。」 「いえ、眠ったばかりなので、ご用件があれば伺います。主人に伝えて、かけなおしてもらいますが。」 「いえ、急用なので取り次いでください。」 「わかりました。お待ちください。」 私は力を入れて彼をゆすった。 「正弘さん。高橋という女の人から電話よ、ほら電話。起きて!」 「あ-」 なか