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三崎にて ③
2024年10月26日
神奈川県 三浦市 三崎へ行った日のこと
フェスと銭湯
開幕
舞台転換が終わり、ステージには
やついいちろうさんが立つ
彼は『エレキコミック』というコンビ芸人
ラーメンズがオンエアバトル出ていた頃
テレビでよく見た顔である
やついさんはピンでかなり前から
DJ活動も精力的にしているらしい
最近は漫才とか寄席とか
お笑いのネタ見せ番組がほぼない
需要はあるけど供給されないというのは
利益に見合わないからだろうか
笑いもビジネス 世知辛いものだ
「初っ端から『おやすみ』って!」
ラストの曲を引き合いに出しつつ
言葉巧みに会場を明るくする やついさん
正午を回り人も増えてきている
そして空気を変えるのが早い
お客のテンションを上げていく様子に
「流石、プロだなぁ」と感心する
イートインのテーブルスペースと舞台の間は
15m四方ほどの広場となっている
やついさんがリスペクトする楽曲を使い
会場の民衆を躍らせていく
客層は老若男女 海外のお客さんもみえる
次第に音楽にのせ場を操っていく
広場を周回するような「うねり」が生まれる
人混みが苦手なので遠巻きに見ていたが
それは見事なものであった
ステージから離れた場所で見ていた私に
「ちょっと海のほうに行きませんか?」
と、小形さんの声
…そうだなぁ
別段、断る理由もないので
護岸をぐるりと回ってみることにする
海を楽しむ人たち
海を覗きながら歩くと 大小いっぱいの魚が
ふわりふわふわと 波の奥に見え隠れしている
小さなイカも群れでいたりする
こういう時、目が良くて得したなと思う
生き物がたくさんいるのを目の当たりにすると
豊かな海だと実感する
バス停の方へ戻り、そこから
フェス会場の対岸の方までまわる
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黄色い船は遊覧船「にじいろさかな号」
男女が釣りをしている
2人は高円寺など東京のライブ会場で
見かける顔のように思う
小形さんも気さくに話しかけている
釣道具を持ってきていて
海レジャーを満喫しているようだ
小形さんは、彼らから釣り道具を借りて
釣りを始める
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定期的に入航と出航を繰り返している
暫く海を眺めながら小形さんや彼らと
話をしていてもよかったが
なんだか喉が渇いてしまった
会場に戻り飲み物を飲もうかな
「ちょっと会場に戻りますね」
一言告げて、その場を離れる
エール
やついさんに続く演者
笹口騒音さんがステージで準備している
彼の名前は名古屋のライブハウス
『鑪ら場』の月間スケジュールの中に
何度か見たことがある
が、名前を見たことがあるぐらいで
ちゃんと聴いたことはない
何か飲みながら聴こう 屋台を覗く
南三陸のクラフトビールが売っている
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「迷うくらいなら全部飲めばいいじゃない」
心の中の悪魔が呼びかける
「奮発して飲み比べをしちゃおうよ」
心の中の天使も呼びかける
そうねぇ…往路にいっぱい歩いたことだし
ご褒美にビールとしようか
正直、ただひたすら歩いただけなので
ご褒美も何もないのだが
咎める者も止める者もいないと
こうなってしまう、まるで典型のような流れ
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1から順番に4にかけて飲んで下さいとのこと
どれどれ…
オホホ…
これはいいぞ…
どれも風味に違いがある
そして、めちゃくちゃ美味しい
外で飲んでるってのでも
バフかかってる感じがする
カップは程よく大きくて
全部飲むには相応の時間がかかる
いや しかし 贅沢な時間だ
笹口騒音さんの音楽がさらに心地よい
飲み終えてから再び海の岸壁を覗きに
フラフラっと歩いていく
波止場は綺麗に舗装されていて
幾つかの段になっている
腰を下ろす 景色を眺める
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三崎港の海の先を見る
橋でつながった『城ヶ島』が見える
あちらの島も、風光明媚な景観が随所にあり
見ごたえがあるらしい
次回来た時は自転車を借りて
渡って見て回ろうと思う
そうだ、今日はこの服を連れてきたんだ
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奇妙な縁で繋がったものだと改めて思う
小形さんを知らなければきっと
映画『冗談じゃないよ』も知らなかったし
サトウヒロキさん登壇の上映に行くこともなく
映画『この日々が凪いだら』も知らなかった
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幸せに繋がっている
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この思いを持って
この光景を眺めることは
きっとなかっただろう
現実がフィクションを超えていく
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対岸では小形さんたちが釣りをしている
フフフ 楽しそう…
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嬉しいねぇ 微笑ましく見つめる
頭の中で誰となしに声がする
「あちら側にいなくて良かったねぇ」
ただただ笑顔を浮かべる中で
そんな風に思えてしまえたのは
自分が不要とか、後ろ向きの
そんな意味合いでは、けしてなくて
ただ単純に、私が今、対岸にいて
静かに見えている、この風景が
限りなく愛おしく映ったからなのだ
歓声も波の音で聞こえない
記憶の奥で見るような彼らを
ただただ愛おしさだけの光景を見ている
見ることが許されたのは ここにいた私だけ
私はここにいてよかったのだ
そう純粋に思えた
ポツリ、つぶやいてみる
私「守護天使ってのは、いつもこんな気持ちなのか?」
月「ハハハ…わしはお前さんと違って
天使でも悪魔でもないから分からないなァ!」
誰にも聞こえない大声で返される
疲れを知らない体
裸足で水面を駆けまわる彼女は
あくまで人間で 天使のような人らしい
ほたて
長い間海を見ていたが
こちとら生身の体である
昼も過ぎたし ちょっとお腹空いてきた
来た時からそうだったのだが
『うらりマルシェ』のほうからずっと
美味しそうな匂いがしている
客足は落ち着いたかもしれない
中へ入ってみよう
小規模店舗がたくさん詰まった市場
冷凍もののマグロや海鮮のお土産物が多い
ぐるり巡ってみるも まだまだ盛況だ
いい匂いは入口近くの売店から
海の幸の揚げ物や串焼きが並んでいる
焼きたてという、大ぶりのホタテを頼む
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真ん中のやつ、笑ってないか?
舞台転換しているのを眺めつつ
フライヤーを見損ねていたことを思い出す
さっき演者を確認しようとしてたんだっけ
つらつらと見ていくと
今朝、見かけた児童たちが載っている
『かもめ児童合唱団』
あ。え、演者だったの?
そういえば、舞台袖に近い屋台には
児童たちの姿がある
三浦市内の児童合唱団らしいが
少し調べたら実績が半端ない
そうか、関係者だったという訳か…
もう一人、出演アーティストで気になる名前が
『kiss the gambler』
う~ん どっかで見た名前…だが
どうにも思い出せない
ライブ見たことない人なのは確実
ほどなく、ホタテを食べ終える
そして、ありあまる時間
「う~ん、そろそろ行くか…」
フェスの終わる夜まで
たくさん時間が余るのは分かっていた
この地域にも1件だけだが アレがある
今から移動すれば到着する頃には
オープンしているはずだろう
オアシス的な湯処へ
14:40
バス停前の道を北へ向かって歩き出す
この道は三崎口まで続く、いわゆる正規ルート
『小網代の森』は通らない
少しうねっているが登りの坂道を行く
「…おやおや」
数分も行かない間に、道に事故車両
緩やかなカーブの先にあるコインパーキング
その車止めに坂を下ってきたであろう車が
正面から衝突したらしい
走行は難しそう
警察もきていて
事故から時間は経っているようだ
乗ってたと思われる人に怪我なさそう
災難だなぁ。きっと休日だったろうに
…ご愁傷様です
自分の行く末まで少し不安になりつつも
道を進む 上り下りがこの先も続く
一帯のバスの駐機基地がある
これを少し行ったら 右に折れる
また丘を少し上ったところに
この辺で唯一の銭湯「クアーズMISAKI」がある
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…
普段は、努めて
いい感想ばかり書く私だが
今回は心配になる要素が多かった
前情報では大浴槽があるはずだったのだが
その一番大きな槽に 湯はなかった
時期的なもので湯はりしていないのか
はたまた故障しているのか、判別がつかない
というのも
カラカラだけという以上に
枯葉も落ちているほどに
あまり綺麗とは言えなかったのだ
進入しないように張られたロープも
お世辞にも綺麗とは言えない
天窓や壁面などには経年の痕は目立つし
サウナもあるが稼働していない
コロナ禍から稼働を止めているのだろうか
かなり寂しい気持ちになる
浴室内の照明は昼で明るいのもあってか
半分以上が点灯していない
落ち着くには落ち着くのだが
若干心細く感じるほどには、館内が暗い
これも電球切れとか、故障でなければいいけれど…
電気風呂、ジャグジーなど
3槽が連なり並んでいる槽は、湯がぬるい
沸き上げ途中なのかな とっても物足りない
え~と、うーん…
これは、これで…
通常営業なのだろうか?
来訪する時間的な問題だったのかしら?
なんだか心配ばかりが目に入ったが
唯一、古代木で作られたという浴槽は
木の香りがして、大変心地良かった
歩き疲れをほぐすには十分で
非常に助かる湯舟であった
こちらの銭湯を調べた時、ネットには
「ランナーズ銭湯」で紹介がいくつかあった
たしかに、周りに湯処はないので
オアシス的な存在として貴重である
私が勝手に「一帯で唯一の銭湯だから」と
期待値を上げすぎていたのかもしれない
銭湯に入る習慣が少ない地域だとすれば
入湯人口は少なく運営も厳しいだろう
たくさん人が多く来る銭湯になってほしいなぁ
そう銭湯民族の私は願うばかりである
ノイズの多い注文ばかり浮かんで悪いなぁと思いつつ
結局は1時間ほどは湯舟を楽しんでいた
やはり、銭湯は銭湯だ 心地よい
雲が広がる空の下に日は角度を下げ
1日通して涼しい秋の風が吹いている
私はまた20分ほどかけ フェスの会場へ戻る
円盤
『うらりマルシェ』あたりまできた頃
ステージ方面から聴き馴染みある曲が聴こえる
『サラダステーション』という曲だ
そこで「あっ!」と思い出す
『kiss the gambler』の曲はいくつも
Spotifyでお気に入り登録してるじゃないの
なんで気がつかないのさ!
ステージに駆け付けるも最後の曲だったようだ
とたん脳内が騒がしくなる
監「う~ん、惜しいことをした」
煩「また聴きに来ないとね!」
健「こうしてライブ見たい人が増えていく」
財「たすけて」
ナ「自業自得では?」
煩「誰得と言われれば俺得でしかないが?」
監「うるさい うるさい」
騒がしいまま『kiss the gambler』の歌い手
かなふぁんさんに物販でお声がけ
CDを購入する
物販の隣のブースからは
美味しそうな甘い匂いがしている
20分も歩くと またお腹が空いてしまう
月「難儀なものじゃの」
こちとら普通の人間なので
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存在は知っていたが 食べるのは初めてだ
屋台らしい味がする なかなか美味
『かもめ児童合唱団』の子どもたちが
店頭にいる 関係者の様子 かわいらしなぁ
合唱団は皆、地元の子どもらしい
かなふぁんさんとも共演のある彼らは
この後が出番らしい
ステージは舞台転換でスタッフたちが
忙しそうに働いている
日が落ちる前後の美しい時間帯は
ゆるやかに暗がりを連れてくる
会場で小形さんと再会する 話を聞けば
バンドメンバーがいま岸壁で釣りしてると言う
どれどれ、様子を見に行ってみよう
釣果
日が暮れ 薄ぼんやりしている岸壁
バンドの面々の姿が見える
さっき小形さんと釣りをしていた2人も一緒だ
「やぁどうもどうも」と、声をかける
棹は2本なので代わり番こで
釣りしていたらしい
「釣れないよ~」と、ごちる
ドラムスの川前ころさんに
「お久しぶりです」と声かける
何度か会っているが
私の髪が長い時の印象が強かいせいか
私と気づいていない感じで
ちょっと警戒した様子
私が名前を告げると、パッと表情が緩む
「あっ!あ~!早く言ってくださいよぉ!」
一気に緊張が解け 柔らかい表情になる
いい笑顔
「ちょっと釣ってみます?」
初めましてのキーボードのはしもとりおさんが
竿を渡し釣りを勧めてくれる
ありがたい 楽しそう
こちらに断る理由はない
…ん?
なんだか皆 ちょっとだけ
そわそわしている感じ
ははぁ わかるよ
みんな、次にステージ出番の
『かもめ児童合唱団』が見たいんだな
釣り具はちょっとだけお借りしますから
みんなでステージを楽しんでほしいわ
さぁ!どうぞ!行った行った!
と…正確には、そんな風には言ってはいないが
皆をフェス会場に向かうよう やんわり促す
という訳で少しの間
釣りを楽しませてもらおう
海のレジャーか
…できると思わなかったから、すごく嬉しいな
準備をする 仕掛けはサビキ
サビキという餌を詰める小さなかご
これに寄ってきた魚を狙うというもの
サビキの上の方に、いくつか針をしかけ
こちらにも餌を付ける
サビキの中にはオキアミを詰め
針にエサをつけ 糸を海に垂らす
いやぁホントに…
釣りができるとは思わなかったぜ
嬉しいな
なにが釣れるかな
なんでもいいか
釣れればいいな
普通の魚でいいんだ
普通ので…
しばし待ち 糸を巻く
海を覗くと 小さな魚影が見える
カワハギの小さいのが餌をつついては
その度に 餌がなくなるようだ
また餌を付けて 海へ糸を垂らし しばし待ち 糸を巻く
これを単純に繰り返す
まあ、のんびりいこう
子どもたちの歌声が聞こえてきた
くるりとか民生とか歌ってるっぽい
半端ねぇ歌唱力なのが 遠くにいてもわかる
めちゃくちゃいい めちゃくちゃにいいぞ
次きた時はちゃんと見よう
できれば『kiss the gambler』も
釣り糸を垂らし3、4回目
見え隠れする水中のサビキを追う視界に
うすぼんやりと白い素足が現れる
目線を水面に移す
ステージの方を見つめる退屈そうな白い影
お馴染みのトーンで声をかけてくる
月「せっかく来たのに、見なくていいのか?」
私「大丈夫、聴こえてるから。別にいいじゃないですか」
波音より小さな声でやり取りする
きっと、はたから見れば 何かぶつくさ
釣りに文句を言っているような男に映るだろう
私「それより、なんか釣れたらいいね」
月「大物よんでやろうか?」
私「普通のでいいんだよ…普通ので」
月「普通の、ね」
私「一応言っときますけど余計なことしないで下さいね」
こちらが言い終わる前にフッと消えてしまう影
なにも大物でなくても…
いや、別に、最悪釣れなくてもいいんだ…
再び水中に目をやると
サビキがおかしな動きをしている
目を凝らすと 黒い影
竿をグイと引く
手応え
アタリだ!
糸を巻く
重い!
ちなみに私は釣りをしたことがない!
なんだこれ!
次第にあらわになる魚影
え でっかくない?
私「普通のでいいって言ったよね!」
月「?わし、なんもしとらんけど」
白い影は いつのまにか隣にしゃがんで
覗き込むように水面を見ている
あがる!
バシャ!と海から出てきたのは
カニでした
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は? え? カニ? 蟹って??
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タイワンガザミ
え、待って、蟹って釣れるの?
釣れとるやないかい!
いやでも、カニって…
月「普通の、カニじゃな」
私「お魚がよかったです」
サビキをガッチリ挟んだ爪を外して
捕獲用のボックスへ入れる
「カニって釣れるんですね」
隣にいた女の子は若干引いている気がする
溢れんばかりのカニ
どうしよう…漁業権かかってないみたいだから
持って帰れはするようだけど
よし
リリースするか鍋にするかは
釣竿の持ち主に判断してもらおう
もう1投…と思ったが
糸が絡んでしまった
ほどこうにも なかなか暗くて難しい
そうこうしている内に
女の子の連れ合いが戻ってくる
カニの処遇について
私は所有権を放棄する旨と
煮るなり焼くなりお好きなように
できれば持ち帰ることをおすすめする
美味しいらしいから
知らんけど
男の子は、糸の絡んだ棹を受け取ってくれて
「良ければ、ライブ会場見てきてください」
と話してくれた
ありがとう、そして糸を絡ませてごめんなさい
あと、処理の面倒なカニなんて釣ってゴメンね
よろしくお願いします…深く感謝し
まだ歌声の続く会場へ向かう
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アドレナリンドライブ
『かもめ児童合唱団』につづき
トリの曽我部恵一さんを聴く
表現力と包容力
沈んだ太陽がまた昇るような熱量
涙を流しながら聴いていた
隣にいた小形さんも
涙を浮かべているようだった
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途中『かもめ児童合唱団』とも共演をしてくれた
素晴らしい、贅沢な時間
盛況の内にフェスは幕を下ろす
小形さんたちへ「またね」と別れを告げ
帰路に着く
19:30頃
バス停は長蛇の列
人混みは無理なので
列に並ぶ顔馴染みたちに声をかけ
「またね」 と 別れを告げる
え、ちょっと?
これからバスに乗るんだと思うんですが
何を考えているんですか?
えっ
何する気です!
やめて下さい!!
いま思えば、フェス終了の時点で
最高に気分が高揚して アドレナリンがドバドバで
ハイになっていたんだと思う
20:22発の電車を目標に
私は駅へ向かって走り出していた
ちなみにルートは正規ルートである
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衝動的な自分が分からない
時々無性に怖くなる(時々?)
クアーズへの曲がり角までは1度来ているが
そこから先は未知の道路である
三浦市の地形は、リアス式海岸の岬
高低差に慈悲の心などあるわけもなく
牙をむくのは平坦でない角度
だがアドレナリン全開の私には効かない
マリオの「スター状態」と言うより
「バカには何言っても聞かない状態」が正確な表現
1台目のバスが追い越していく
満員で立ってる客もいる
これには乗れねぇなぁ
途中から峠道となる
そりゃ『小網代の森』は
入江に到達するまで、あれだけ下ったのだから
その逆があっても不思議じゃあない
ずっと走っていく
藤山拓さんがライブ配信している
耳から入る音楽が心臓を動かしていく
マラソンなんて嫌いだが
意味が分からないくらい多幸感が溢れてくる
私「これがランナーズハイか!」
月「違うよ」
2台目のバスが追い越していく
中にはさっき別れを告げた友人たちが見える
そして、バスは空いている
これには乗りてぇなぁ!
けどバス停がねぇなぁ!
チキショーッ 待ってろよ!
電車の出発、10分前
ようやく峠を越え
大地の先に灯りが見えてくる
駅までもうすぐだ ずっと走っている
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やっぱり意味が分からない
三崎口駅の改札に着いたのは
列車出発の2分前
コインロッカーからでかい荷物を下ろす
ひっつかんで電車へむかう
駆け込むことなく階段で息を整える
当然だが 汗だくである
さっき別れを告げた友人たちと再会
わけがわからないといった顔をしている
まぁ本人が一番ワケわかってないわけだが
ひとまずシャツだけは器用に脱ぐ
(この日はツナギを着ていた)
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銭湯、巡り合わせ
品川方面へ列車は走る
友人が着いたら起こしてあげるよと言うので
お言葉に甘えて 目を閉じる
品川駅から山手線乗り換えて原宿駅
友人たちとは、ここまで
だいぶ助けられた ありがとう
帰りは新宿からの深夜バスだが
時間はまだある
かねてから寄ろうと考えていた
原宿にできた銭湯へ行こう
やっと冷静になってきて
なんでさっきあんなに走ったのか考えたが
回答が「バカだから」以外浮かんでこない
私「合ってる?」
月「合ってる合ってる」
原宿駅に初めて降りる
もちろん土地勘はない
前情報のイメージとして
駅前ビルの地下としか聞いてなかったので
明治神宮の森を眼前にして
「ビルないじゃん」と途方にくれる
スマホに頼らず少し探すが
歩き回るのはもう止めようと ギブアップ
どうやら東京メトロ「明治神宮前駅」の
出口付近だったらしい
東京は駅が多くてややこしいなぁ
「カドマチ」とかいうビルの地下へ
高円寺の銭湯と「小杉湯」が近年
原宿でも湯処を構えた
どんなところか気になっていた
人気の銭湯だと評判だから 楽しみだ
小杉湯 原宿 受付
「ただいま10人待ちです」
人気ありすぎでしょ
たしかにビル内は綺麗だし
待合室やら受付やらはピカピカだ
若者が多いし 魅力的な物販もある
入湯制限をかけるのだって頷ける
けど、ウーン そうかぁ
10人かぁ
ちょっと、それは待てんなぁ
ナビがすぐに最も近い銭湯の場所と
そこまでのルートをピックアップする
よし、移動だ
エレベーターを上がり東京メトロへ

代々木公園駅から歩いてもすぐそばに
銭湯があるらしい
代々木公園駅もきっと明治神宮前駅から
歩いて行ける距離なんだろうが
東京は交通網がしっかりしてるから
乗って行くのが正解 疲れないし
(東京に限らず交通機関使ってほしい)
代々木八幡駅と代々木公園駅の間に立地する
八幡湯にはあっという間に到着した
やっと汗が流せるぜ
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貼り紙が 1枚
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膝から崩れ落ちる
煩「もういいから!こういうの!」
監「いいことも悪いことも続く時は続くんだ」
煩「お腹いっぱいだよ!」
監「はっはっは、いやー面白すぎる」
煩「銭湯入るまで帰らないからな!」
監「それはこまるなぁ」
ナ「700m歩けば銭湯があります」
煩「よし行こう」
監「やってるの?」
ナ「さあ?行けば分かるんじゃないですか?」
ネオンが見えた時に
銭湯が開いているのを確信して
踊りだしたくなった
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また脳汁がジュワっと溢れるのを感じるも
頭を洗って熱い湯船に浸かり 落ち着く
細胞単位で身体の全てがほぐれていく
あー、、 長い1日だった…
まだ終わってねぇけど ひとまず…
30分の至福のバスタイム
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まもなくシンデレラタイム
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バスは日をまたいで少ししてから
時間通りに滑り出す
夜に1日の思い出がとけていく
帰り着く場所は
朝がきて
自分の暮らす街へ
午前中は、四日市にて街のイベント
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オープニングに太鼓の演奏で出番がある
太鼓の装束に着替え演奏の準備をする
三崎口駅のロッカーから出した
"でかい荷物"は、この衣装だった
三崎からの帰還、そして午前中の演奏までに
家に帰れるタイミングはないと判断して
準備していたのだ
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書いている今、思うが
こちらはこちらでオープニングアクトだった
なんだか妙な気持ちになるなぁ
たくさんの人が来訪する商店街のイベント
楽しい気持ちを心に残していってほしく思う
月「衣装、わざわざ旅に持っていくかね」
煩「私は用意周到なの」
監「スケジュール詰めすぎなんですよ」
煩「否定できないね」
監「はい、さっさといきますよ」
演奏後、片付けもそこそこに
私だけ 先に抜けさせてもらう
次の予定があるのだ
急ぎ電車に乗って 盆栽屋へ向かう
法被姿で電車に乗るのは慣れっこだが
狭い車両のトイレで着替えるのは難儀する
左右に揺れれば
漫画みたいに派手に壁へぶつかる
足もつりそうになる
いつもの 平穏な日曜日がある
植物は何も言わないが
一緒の時間を生きていることが嬉しくなる
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そうして
日が暮れるまで
そこにいて
夜には自宅へ帰る
帰り着く場所は 変わらない
いつものルートと言えば
いつものルートだ
編集後記「三崎にて」
みなさん、いかがお過ごしでしょうか
ライブを控えられなくなった はぐぱぱです
正確には
東京や大阪への「遠征」のみをしばらく控え
その分名古屋近郊のライブへ全振りしています
結果
先週土曜日からライブ4本、映画1本という
ハイペースすぎるスケジュールです
1月の分は、昨晩のライブで打ち止めですが
帰宅できなかった日が3日間ありましたので
2月には自制心に頑張ってもらいたいです
期待してますよ(現実逃避的自己責任転嫁)
三崎は素晴らしい湊町で
まだまだ魅力的な場所がありそう
今回訪問できて良かったです
次回の話、どうしようかなと考えてました
先週から昨日まで怒涛のライブが続いていたし
それから劇場で初日に観覧できた
映画『サンセット・サンライズ』が素晴らしかったです
映画には、釣りも、芋煮も、海の話もあったから
今回の話にかぶる部分も、すごく多くてね
笑えて泣ける映画だった。また観覧しに行く
さて。
どうしたって最近の話を書きたくもありますが
やはり順を追って11月、12月と
記録を続けていこうかな
そんな風に頭の中で話がまとまりつつあります
今回も簡単にまとめるつもりが
また9700字とかいっちゃってるので
読みにくいことこの上なしで申し訳ない
次回も、まぁひとつ
よろしくどうぞ
なんも書いてないけど
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