戦争をする人にも正義がある(私の人生本⑦愛と幻想のファシズム)
昨日、「完全な実力主義の環境で働いてみたい」という働き盛りのサラリーマンと話をしていた。
日本企業の社員は守られてるから、「サボったもん勝ちみたいな雰囲気に疑問を感じる」と。
私自身は、持病持ちだから、実力主義の社会は困るんだけど…。
それで思い出した本があった。
村上龍「愛と幻想のファシズム」
主人公は鈴原冬二という若者。
(私はエヴァンゲリオン見てないけど、鈴原トウジはここから。)
元々アラスカで猟師をしていたのが、誘われて帰国した後、日本の生ぬるい社会に幻滅を感じ、社会改革のリーダーとなる。
猟師として生きてきた鈴原冬二の理論を簡単に説明すると、
「動物の世界は、弱肉強食が当たり前。しかし、この日本社会は、弱い者がのうのうと権利を主張しながら生きている。今こそ、実力主義の弱肉強食の世界を取り戻そうぜ」(すごいザックリ)
というもの。
これに、今まで、社会で抑圧されていた人たちが賛同し、実力行使を主軸にした、テロ、社会転覆が進んでいく。
驚くのは、これが最初に発表されたのが、1984年だということ。
35年も前なのに、現在のことかと思ってしまう。
元々、私は性格的に争いを避けたいし、戦後の平和教育を受けてきた世代だから、「戦争=悪」みたいな固定概念があった。
だけど、この本を読んだ時に、
戦争をする人は、戦争をする人なりの理由があるんだ
ということを痛感した。
だって、この本読んでいくと、鈴原冬二を応援したくなっちゃうんだもん。
最後とか、ドキドキして読めなくなっちゃうんだもん。
日本社会は、一億総中流と呼ばれたりもするけど、その陰で、能力を発揮しきれていない人はいる。
その人たちが、自分の権利を主張するのを悪だと誰が言えるのだろう。
もちろん、戦争とか武力行使に賛成する訳ではないんだけど、頭ごなしに、一方的に、自分の価値観で、ダメっていうのも違うと思うのだ。
これは、日常の食い違いとかケンカでも同じ。
「相手には相手の正義がある」
忘れないでいたい。