ハゲ小説#3 Bar HAGEです。編 03

私はこの後、生まれてこれまでに一度として感じたことのない光景を目にしたのだった。

「ギギ...キィ―――――ッィ」

扉が開き、見たことのない光がそれまでよりさらに、私の目を射すように飛び込んできた。

「まぶしーっ!!見えない!」

しばらく神々しいような光に照らされた後、なんとか目がなれたのか、Barの中の光景が見えてきた。

「え!?」

そこには、何と、さっきまで会話をしていた竹中直人が

Barカウンターに11人いた!!

画像1

↑この毛がないバージョンのヤツが11人

バクバクと高鳴る胸の鼓動をこらえながら、私は、最寄りの竹中直人に問いかけた。
「こっ!これっ、どうゆうことですか!?どうして竹中直人が何人も!?」

すると、最寄りの竹中直人が頭部にこう話しかけてきた。

「あなたの目には、同じように見えているかもしれません。ですが我々は、頭部の毛こそ全員ないなれど、それぞれ見た目は違います。今、あなたがここにいる事自体が、有り得ない状態なのです。きっとあなたが理解しやすいように、無意識に我々の姿をそのように映しているのでしょう。我々はあなたのおっしゃる竹中直人さんを存じ上げませんが、あなたのイメージを受ける限りでは、大変素晴らしいハゲの方のようですね。ここにいる者は全員それを喜んでいますよ」

うん・・・確かに素晴らしいハゲた俳優さんだけれども。
私は、まだ目の前に竹中直人が11人いる状況を呑み込めないでいた。

「ふふっ。目で見ているのでなく、心で見ている状態に近いかもしれませんね」
呆気にとられる私をしり目に、最寄りの竹中直人はそう続けた。

分かりにくいので、何にでも番号を振るのが好きな私は、最寄りの竹中直人を「直人1」とし、続いて座っている順で奥にいくにつれ「直人2」~「直人11」と決めた。Barへ入る前、最初に会話をした竹中直人が何番なのかはもう分からないままだった。

辺りを見回すと、barの中は、複数の竹中直人のほか、壁や天井ですら、全く見たこともないような質感で、白磁器のようでもありながら、どこか柔らかい感じのする、とても不思議な空間だった。

そして、酒場だけにウィスキー瓶のようなものが、キャビネットにズラリと並んでいたが、ラベルには全く理解できない文字や絵が貼られていた。
壁に貼られたポスター?の中に1枚だけ、知っている女優のものがあった。
カトリーヌ・ドヌーブだ。下着姿でまるで見る者を誘惑するかのように妖艶にこちらを見つめている。だが、なぜそれがこの場所にあるのかは最後まで私には分からなかった。

直人たちは、チラチラと私に興味を示しながら、グラスに注がれた酒であろう飲み物を飲んで談笑している。この声はすべて、私の頭部に響いてきているが、直人たちの方から話す意思をこちらに向けない限り、ハッキリとは私に聞こえないようだった。固まったまま私が座っていると、直人9の辺りからゲラゲラと笑い声が聞こえ、何だか私が笑われているような気がしてイラっとしたが、不思議とその感情は一瞬で消えた。
今思えば、ハゲを笑うことがあっても、髪がフサフサの私が複数のハゲたちに笑われるという事自体に違和感を持つべきだったのかもしれない。


気持ちに整理つけれぬままカウンターに座っていると、直人5が、こう語りかけてきた。

「さて、話しましょうか。いや、伝えると言ったほうがいいかもしれない。あなたもいろいろと聞きたいことがあるようですが、まずは、我々についてやこの宇宙の事、そして、あなたの星について詳しく、お伝えできる範囲となりますが、話しましょう」

そう言うと、それまで談笑していた直人たちが全員静まり返った。

シートヒーターが付いた車よろしく暖房便座のように、妙に暖かい椅子に座った私は、心地よい暖かさにやられ緩んだ肛門に力を入れた。実は鈍行列車に乗った直後から、#うんこを我慢していたのだ。ときに暖かさは感覚をも麻痺させる。直人たちはそんな私の便意など気にも留めていなかった。

そしてこの後、私は直人たちから、
さらに耳を疑うような話しを聞く事になる。




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ハゲ小説#3 Bar HAGEです。編 04 へ続く(気がむいたら、だ!w)



愛ゆえに愛が愛に愛という光を・・。 あなたにいつも拈華微笑💖