最後まで気を抜いてはならん
“今年こそ○○!”
みたいなことは大人になってからは思ったことあったかな?
ただ今年はあとふた月もすると嫁さんは無職になるらしいので少しは··イメージくらいはシャンとしようかなどと思うわけですよ。
それなのに元旦からマスクで顔を覆い部屋の中でモソモソと独り言を言っている。
顔を隠しているあたりは悪巧みをする秘密結社の一員のようでもある。しかしまたある時は赤いビキニブリーフを顔に被っていたりして、遠目には戦隊ヒーローモノのメインキャラクターにも見える··窓越しの隣人たちは相当モヤモヤしているにちがいない。
年明けから面白くてしかたない。
一昨日のことなんだけどね···
今の職場では正月三が日は昼食が出る。
ここ何年もの習慣だし私は大した興味もない。
その日のメニューが”すき焼き弁当”であることも別にどうでもよい。
食べ始めてみれば、適当に美味い···
それなりのコスパを感じさせる···
が、ただの昼飯である··
おぉ···生卵もついているのか···
いいね···
すき焼きだしね···
生卵あるのはいいよね···
生卵をつける為の小鉢はない···
すき焼きの上に割るしかない···
割って食べるわな、そりゃ···
それは別にどうでもよい。
問題は気付けばその日におろしたシャツを着ていたってことだ。年明け最初の出勤でもありインナーも白いもので揃っていたのだ。
おろしたてのシャツをすき焼きによる食べこぼし、飛び散りで汚すわけにはいかない。
「なんでこぼすかなぁ···」
嫁さんからは何度も聞かされたセリフだ。
食事中によくそれを思い出したもんだ。
今年はちがうぜ!シャンとした大人は食べこぼさないぜ!
なるべく飛ばすことのないよう慎重に箸をすすめた。口元へ運ぶ時にも揺れて割り下が飛ぶのを抑える為、下手な箸使いなりに小さくまとめて食べた。
無事に食べ終わり容器を捨てようとした際に「割り下の残りは飲んでしまったほうがよかったかな?このまま捨てるのもなぁ··」
私のそのモヤモヤは直後に消えることとなる。
ご飯の容器を取り上げた際にその容器の端がすき焼き容器の端を軽快に持ち上げ反転させた。私のほうに向かって···
すき焼きの割り下は全部私が浴びた··
おろしたてのワイシャツは美味しかったすき焼きの香りと色によって牛模様·に染められていた。干支はイノシシだというのに。2〜3歳児でも怒られそうな汚れ具合だ。
インナーや下着のパンツも濡れているのがわかる。とりあえず水場に向かいワイシャツを脱いで洗った。
こんなことなら飛ばし散らかしながら食べたほうが被害は少なかったはずだ。
嫁さんよりも先に帰宅するとすぐに洗い始める俺に嫁母が不審に思い、詳細を白状し洗濯してもらうという情けなさ···
なかなかスッポ抜けた三が日であったよ。
こりゃまだまだ波乱で楽しませてもらえそうだ。