地方での映画撮影の裏側を描く!【映画『エキストランド』の感想を書き綴る】
2017年の日本の作品。
地方での映画製作の裏側を、風刺あるコメディで表した内容です。
吉沢悠が演じる『映画プロデューサー・駒田』が、一応主役のはずなのに、めっちゃ腹立つ悪役ぶり!
これ、役者さん的には大成功ってことなんでしょうけど。
「こいつだけは最後に破滅してくれ……!」と何度思ったことか(笑)
もう一人の主役は前野朋哉が演じる『えのき市職員・内川』。
この人、純朴な田舎青年ゆえに駒田にいいように使われちゃって、可哀相の嵐。
悪人とカモしかいなくて、「このあとどうなっちゃうの〜!」とイライラ、ハラハラがすごかったです。
物語上のストレスを溜め込むのが苦手な人には辛いかも。
↑予告編
でも、面白かったので。
ネタバレ感想していきます〜。
◎あらすじ
◎ネタバレ感想
・まず、駒田を演じた吉沢さん凄いな〜、というのが第一。
やってることは非道だし厚かましいし、ものっすごい腹立つ役なんですけど、どこかコミカルな人柄が滲み出てるから重くなりすぎない。
あの演技だから、観ていられる。
昔のやらかしを知ってる業界人から身を隠すために、テーブルの下にピッチリ収まってるのは、初っ端から笑ってしまった。
あと、プロデューサー巻きの服と、胡散臭いサングラス良かったです。
・もう一人の主要人物である内川さんは、駒田が作ったマニュアル(駒田に都合の良い内容)を鵜呑みにして、色々無茶振りされます。
誰か、他の有識者にマニュアルの間違いを正してもらって!と考えずにはいられなかった……結局、正されなかったけど……
地域住民からの苦情と駒田の注文との板挟みになって、謝り通しなところが観てて可哀相すぎた。つらい。
でも、途中で「マニュアルには、そんなこと書いてありません。全部暗記しました」と無茶振りを毅然と突き返したところはスッとしたわ。
駒田へのフラストレーションが溜まりすぎてて、むしろ笑けてきたもの。
・そして、もう一人の立役者は戸次重幸が演じる『映画監督・石井』ですね。このキャラも良かった。
人並みの良心は持ち合わせているものの、駒田の”悪魔の囁き”に乗ってしまい、後に苦渋を味わう人です。
自分の「監督したい欲求」と「えのき市に悪いことしてる良心」の間で中途半端に揺れ動きます。
・駒田が「映画が撮れればいい。映画の内容がゴミだろうが、えのき市がどうなろうと構わない!」と言い切っちゃうクズっぷりで、むしろ潔い……
・はんにゃの金田が演じる『土田』も、自然な演技で良かった。
いるいる〜、学年に1人はこういう人!
人の良い阿呆で、イメージぴったりな配役でしたね。
土田はボランティアで現地スタッフとして映画撮影に参加しますが……
同じ市民同士なのに、撮影側がエキストラ側を下に見るようなっちゃうやつ、ちょっと違うかもだけど『スタンフォード監獄実験』を連想しちゃったなぁ。
・それにしても駒田は絶許!
お金のかかること、面倒な手配は全部、えのき市と内川に丸投げ。
なのに「出来ない」というと「フィルムコミッションがちゃんとしてないからだ」と非難する。
最後のエキストラたちの反旗は、正直手緩いとは思いましたが、あんまりやり過ぎるとコメディじゃなくなっちゃうもんね。さじ加減。
でも、駒田が茫然として、ひとりっきりで誰の手助けも無いまま壊れた家を直そうとする姿は滑稽だった。
・内川さんは終始よく、喚き散らしてキレなかったな〜と感心しました。
「もう、どうでもいい〜!」と投げ出すんじゃなくて淡々と毅然と怒るのは好感持てました。
最後の家のセット壊すとき、重機を誘導するのシュールで笑えた。
重機のほうも、丁寧に丁寧にセットを破壊してて(笑)
えのき市のフィルムコミッション対応が、最後はしっかりしたものになったのは良かったですな。
今回のことは苦い薬というか、高い勉強料というか……
警戒心を持つことは大事ですね!
・駒田は映画業界で低い立場にいることの反動で、映画製作を何も知らない地方民に対して居丈高になっちゃったのかな~
最後、他の市のフィルムコミッションにまた目をつけたようですが……
「次はうまくやるぞ」ぐらいしか思ってなさそうでしたね。
絶対反省はしてない。
人望と評判を切り捨てて、いつか大成するという野望を抱き続けて生きていくんでしょう。
図太さだけは褒めてもいい!
◎総括
この映画、全国のフィルムコミッションに取材をして作られたそうで……
映画ほどではないものの、実際に地方民を食い物にして映画作ってるやつも居るってことですね。厭だわ〜
「映画の舞台になれば町が活性化!」という安直な考えに対しても注意喚起になりそうな映画でした。
役者さんの演技が、とにかく見どころです!