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【感想】『飯沼一家に謝罪します』【考察】

今回は、TXQ FICTION第二弾『飯沼一家に謝罪します』を視聴しての諸々を備忘録として書いていきます。

ここ数年の年末は、テレ東さんのモキュメンタリー作品にお世話になっていたので、放送の一報が入ったときは「今年もやっぱり来た!」と大喜びしました😄

12月23〜26日に4夜連続放送された本作品。
物語が毎日少しずつ進んでいくのがもどかしくもあり楽しみでもあり。
いっつも気になるところで終わるの、うまいよね〜!
放送後すぐにTVerで配信されるのも有り難かった……✨

さて、以下からはネタバレ込みで諸々書いていきますので未視聴の方はご注意ください。





▣全4話のおおまかな流れ

□第1話

・冒頭は、スーツ姿で深く一礼する「矢代 誠太郎」という人物による飯沼一家への謝罪から始まる。
・矢代氏の来歴
→とある大学の文学部史学科教授。
祭祀考古学、口承文芸学、民俗学に詳しい。
・飯沼さんの依頼により、矢代氏が考案した「運気アップの儀式」を一家に施したという。
→一家が出演した『幸せ家族王』という番組のビデオテープを再生。
番組内で賞金100万円とハワイ旅行を獲得。
・しかしその後、儀式の失敗により飯沼宅は全焼し「一家全員が亡くなった」と語る。

・最後、手を清め白装束を着た矢代氏が【四十九日の裁き】を受けると言い、民家の階段を上るシーンで終了。

※上記全て、2004年5月17日深夜2時に放映された『飯沼一家に謝罪します』という番組の映像である。

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※20年前に放映され、ネット上で都市伝説として語られる詳細不明の謎の番組『飯沼一家に謝罪します』について調査していくのが本作の目的。

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✽当時の番組制作関係者への取材
元局員だった4人に取材するが、肝心の部分は判然としない。

わかったのは
・「池田IC食品」という会社(2003年設立 2006年廃業)が単独スポンサーとして企画提案した。
・当初は“健康に関する番組”の予定だったが、スポンサーの意向により、出来上がりが“謝罪番組”になっていた。

□第2話

✽矢代氏の関係者への取材
・矢代氏本人には連絡がつかない。
・当時に大学の研究室に所属していた多田野さんに取材。
→飯沼家の母親と多田野さんは同じバイト先。
雑談の延長で、運気アップを矢代氏に頼む流れとなった。
・“悪い運気を防いで、良い運気を取り入れる儀式” として飯沼宅で実施。
研究の記録としてか、儀式の様子を撮影してあった。

〈儀式のテープの内容〉
(1999年7月25日撮影)

・矢代氏が考案した【影の行列】という儀式。
・矢代氏と助手たちが、鈴を鳴らし、セージの葉(悪い気を浄化する作用)を揺らしながら部屋を歩き回る。
・「自分の中にある悪い感情や不運を思い浮かべ、心の中でそれらを鏡に映し出すイメージをしてください」
→思い浮かべたものを紙に書き、箱におさめる。

・「この影をここに閉じ込め、家族全員の運気を浄化します」とみんなで唱える。

・「布の中で軽く踊ったり手を叩いたりして魂の舞踏を行います」と矢代氏が説明し、黒い布を被せられた家族たちは動く。
そのまま「影よ、ここに封じられよ。私たちの家族から離れ、再び戻ることなかれ」とみんなで唱える。
その中で、矢代氏は木槌のようなもので鏡をカンカンと叩く。
→鏡の中に悪い流れを封じ、叩いて出てこられないようにする。

・4つの蝋燭を囲み、手を繋ぎサークルを作る家族。
「私たちの悪いエネルギーは全て取り除かれました。新しいポジティブなエネルギーが家族に降りそそぎますように」と矢代氏。
「センテンナムフルホビル、センテンナムフルホビル、センテンナムフルホビル……」とみんなで唱和。

・テレビ番組での一家の活躍を見て、多田野さんは驚いたという。
運気アップの儀式の結果が出たと感じたんでしょうね。
しかし、その後に飯沼宅が全焼し家族全員が亡くなったと知ったと、沈痛な面持ち。

✽『幸せ家族王』関係者への取材
・番組の演出をしていたという八木原さんに、飯沼一家が出演時の『幸せ家族王』のVTR、一家の取材テープ、オーディション映像などを見せてもらう。

・家族の日常シーンを撮る中で、「先日運気アップの儀式を受けた」ということを話している。
・頼りない父親と、しっかりした息子の組み合わせが「家族としてのドラマ性」があるということで採用された。
・オンエア映像の二階窓に、家族でもスタッフでもない謎の人物の人影がある。

・実は一家は4人全員亡くなったのではなく、息子の明正だけ奇跡的に助かり、親戚(叔父の飯沼典彦さん)に引き取られたことが判明。

□第3話

✽北海道で明正さんの消息をたどる
・飯沼典彦さんは札幌でりんご農家をしていたという情報から、今は廃業している農園の住所を突き止める。
・現地に赴き、周辺で聞き込み。
すると、典彦さんはすでに亡くなっており、今はそこに明正さんが住んでいることが判明する。

・スタッフが自宅へ向かうと、明正さんは家庭を持ち、妻子と3人で暮らしていることがわかった。
謝罪番組や儀式の失敗、火事のことなどを尋ねるが、ふわふわした受け答えで悲壮感は無い。

・明正さんは矢代氏の謝罪番組のことは知らなかったし、儀式についても「矢代さんから謝罪を受けるようなことは一切ない」とのこと。
家族が死んだのは「父親の借金苦による一家心中」という認識だと語る。

✽飯沼一家のハワイ旅行
・当時、『幸せ家族王』のディレクターだった松本さんからの情報。
・副賞のハワイ旅行の様子をビデオ撮影し、番組に送ってもらう流れがあったのだが、飯沼一家から送られてきたビデオは様子がおかしかった。
そして、連絡が取れなくなってしまったという。

〈飯沼一家の旅行ビデオ〉
(1999年8月20日〜26日頃 撮影)

寂れたトンネル、何もない山道の舗装路、道端に供えられた献花、寂れた吊り橋、どこかの民家の廃墟、橋の上でロープの束?を上下に振る父親と明正さん、夜の集合住宅の階段などを歩いたり、立ち止まったり、散策する様子。
→どのシーンでも無表情、無言で不穏さは隠しきれない。
また、カメラの表示時間によると真夜中近いものもある。
子供を連れ歩く時間帯ではない……

(1999年9月1日 撮影)
飯沼宅で、撮影者は父親。
母親と娘は壁や窓のほうを向き無言で立っていて微動だにしない。異様。
そんな様子を撮影していると、ふと階段に長髪の少年らしき姿が見えたと思ったら、慌てて二階へ駆け上ってしまう。

→明正さんは短髪なので、最後に映った長髪の少年は違う人物だと思われる。

「もうひとり家族がいる?」のかと疑問を持つ番組スタッフ。
明正さんに尋ねようとするも連絡取れず。

✽当時の飯沼家周辺の取材

・当時の一家を知る人がちらほら見つかり、その中で気になることを言っていたのは明正さんの同級生。
“『幸せ家族王』に出演しているのは明正さんではない” と証言。
・飯沼さんの経営していた工場の元従業員を見つけることに成功。
そして “気性の激しい引きこもりの息子がいて夫婦は悩んでいた” という情報が出てくる。
・その息子の代役で番組に出演したのが、“是澤という社員の甥” であることがわかった。
→現在は徳島県に住む「岸本 良樹」さんが、当時番組に出演していたことが判明。

✽岸本さん宅へ取材
・出迎えてくれたのは母親の「岸本 悠美子」さん。
あの番組に出演したのは確かに「息子の良樹」だという。

・東京から帰ってきた良樹さんは、元気が無くなって引きこもるようになった。
そのうち、喋らなくなり、動かなくなってしまったという。
何軒もの病院に連れて行くも原因不明。

・そこで、東京の飯沼家で何かあったのではないかと推測し、知人に調べてもらったところ出てきたのが、矢代氏の「運気アップの儀式」。
・矢代氏に直接尋ねると、儀式が原因かもしれないと答えたため、悠美子さんは公の場での謝罪を要求。
→東京の知人に食品会社を設立してもらい、そこにスポンサーとなってもらって番組を制作。
テレビでの謝罪に至った、と。

・謝罪番組は悠美子さんの差配によって作られたものだということが明らかとなった。

□第4話

✽岸本家の二階にて
・矢代氏の現在の所在について尋ねるも、悠美子さんは目線を逸らして微笑みながら無言。
・次に、良樹さんについて尋ねると、今この家に居るという。
二階で療養中だという良樹さんの部屋へ、悠美子さん先導のもとカメラマンとスタッフの2人でお邪魔することに。

・二階に上がるための階段は玄関側の扉の向こうにあり……
謝罪番組で矢代氏が最後に上っていった階段と同一であるとわかる。

・案内されたのは暗い部屋で、ピッピッピッという医療機器らしきも微かに聞こえる。
悠美子さんの呼びかける声に反応はなく、布団が寝息で上下するのみだ。

✽謎の写真
・一階に戻り、悠美子さんが取り出したのは数枚の古びた写真。
飯沼家で良樹さんが撮ったものだといい、全ての写真で飯沼家の人々と良樹さんの顔が歪んで写っている

最後の1枚は、暗すぎてほぼ黒いだけの写真。

・次に、良樹さんの部屋を整理して出てきたものを見せてもらう。
幼児向け玩具、紙の入った木箱、謎の輪っか。

→木箱の中には「数学の成積」と書かれた紙と他に数枚。
ビニールや布や針金?を繋げて作られた謎の輪っかについては「向こう側に行くために必要」だと言っていたそうだ。

✽明正さんからのリンゴ
・悠美子さんは、明正から毎年贈られてくるというリンゴを剥いてスタッフに振る舞う。
・“良樹が自分の身代わりでああなってしまった” と心配してくれていると、解釈している様子。

・「飯沼さんの家族を不幸にしたっていうことの後悔のために【四十九日の裁き】をやってもらいました」と、矢代氏について語る悠美子さん。
→これも矢代氏が自分で考案した儀式だという。

・「でも、あれじゃあねぇ〜……やっぱり、駄目みたいです」と半ば呆れるような失望の混じったような声音の悠美子さん。
「中途半端な知識で儀式なんかやっちゃいけないんですよ」と言ってるバックに流れるのは寝たきりの良樹さんの映像なのだが……同じ側の腕が重なってる?
足が2本より多い?

・取材スタッフを外まで見送りに出てくれる悠美子さん。
「絶対に放映してくださいね」という念押しがどこか怖い……

✽残された謎
・インタビュー時に、飯沼宅二階に映っていた人物について、明正さんは心当たりがないと白を切っていたことが明かされる。
・旅行ビデオに映っていた場所の特定をするスタッフ。
→どれも、ネット上で取り上げられている心霊スポットであることが判明。
「霊界と現世を繋ぐ通り道である吊り橋」「二度と帰れなくなるトンネル」「何かに引き寄せられると噂の道」など。


✽明正さんへ再インタビュー
・明正さんとようやく連絡がつき、スタッフは再び北海道へ向かう。
・明正さんは妻子に話を聞かれたくないのか、外で遊んでくるようにお願いをする。
・そして、ビニール袋に入れられた何かをテーブルに置き、スタッフに開けるよう促す。
中からは、タオルとビニール紐でぐるぐる巻きにされた何かが現れる。
何重にも包まれた中から出てきたのはビデオカメラ一式。

〈再生したビデオの内容〉
(1999年9月18日撮影)

・二階の部屋から静かに一階へ降りる撮影者。明正さんか。
・リビングのテレビでは、飯沼一家が出演した番組のチャレンジ成功シーンが繰り返し再生されている。
暗闇の中、それを直立不動で眺める父、母、妹の3人。
・別室には、白と黒の何かで作られた大きな輪っかが吊るされていた。
・振り返ると、こちらを無言で見つめている家族3人。
恐怖した様子の撮影者は慌てて二階へ駆け上る。

・家族の様子がおかしくなったため撮影したみたい。
旅行のあとから、特に顕著になったという。
・映像にあった輪っかと同様のものが、良樹さん宅から見つかったことを伝えるスタッフ。
・悠美子さんから預かった真っ黒の写真の輝度を上げた画像を見てもらう。
そこには、長髪の少年の後ろ姿。
当時の明正さんだと見て取れる。
→壁には六芒星の描かれた紙が貼ってあり、開かれたドアには通行を遮るようにロープがかけられている?

・「……オカルトにハマってたんですか?」とやや言いにくそうに尋ねるスタッフに、明正さんは無言。
目線が泳ぎ、瞬きが多くなる。
やや涙ぐむ。

・明正さんが岸本家に毎年リンゴを贈っている話について振るスタッフ。
ここでの映像は、矢代氏の儀式で紙に何かを書く飯沼一家、岸本家にあった木箱の中の紙、「数学の成積」「明正」「お兄ちゃん」「明正」と書かれた4枚の紙が順に映し出される。
・最後、部屋の暖炉で煌々と燃える火と明正さんを映し、意味深なカット。
・スタッフロール中に、明正さんの絞り出すような「スイマセン」という言葉が挟まれる。

▣全話観てから見返してみて

ここの表情って、動きって、もしかして……?という妄想をした部分など。
つまりは「あ〜😫厭だな」って思ってしまったところを挙げていきます。
個人的主観です。あしからず。

■いないものとして扱われる本物の息子
・『幸せ家族王』の番組VTRを最初に見たとき、息子がよそよそしく感じた違和感は “他人だったから” ……という、ね。納得。

なんか一歩下がってるというか及び腰だったよね。
親に向かって「どうぞどうぞ」のジェスチャーはあまりしないよな。

・「飯沼一家の絆見せつけろ!」という応援看板の皮肉さ……
あれ、従業員とか近所の親しい人たちなら息子が代役だって知ってて、その上でのあの応援ですよね??

応援VTRが長男の知り合いの分だけ無いのも……あああ……

・チャレンジ成功時の父親の「天才です!うちの娘」とか、他所の子呼んでまで「最高の家族です!」とかやってる言葉が、実の息子に痛烈に刺さってそうだな……という厭さ。

・家族と仲が悪かったとしても、明正さんもあの番組は観てたと思うんよね。
家での撮影を二階窓から覗き見てるくらいだし。気にはなってる。

当時の明正さんの境遇を想像するに、中学生特有の反抗期、オカルトに傾倒……中二病だったり?
あとは家が貧しいゆえに同級生から揶揄われ学校行きたくない……とかも想像できてしまう。
襖の染みが凄かったよね……

たぶん家庭環境とか本人の気質とか複合的に悪いことが重なったうえでの、反発や引きこもりだったのではないかな〜


■良樹さんの悲劇
・良樹さんも、厚意で代役になったばっかりに、まさか一生寝たきりになるとは思いもよらなかったでしょうね。

・イケメン、優等生、元気、優しい……
と、非の打ち所のない少年。
実家も立派で大きいし、裕福そう。
悠美子さんの自慢の息子だったんでしょうね。

・悠美子さんの言い方がふんわりしてたから色んな想像できちゃうけど、矢代氏の【四十九日の裁き】の時点で生きてたにしろ亡くなってたにしろ、もう前のように戻ることはなかったんですね……
悲しい。

現在、岸本宅の二階にいるのは矢代氏と良樹さん、だよね?
重なってるのか融合してるのか、両方生きてるのか、片方だけ生きてるのか判然としないけど……
【四十九日の裁き】でああなってしまった、と。

動いてたから、あれでも生きてはいるんですよね……20年前から……😨


■悠美子さんの存在感
・まさか、あの謝罪番組を作らせた当事者だとは……!
「わぁ、美人!確かにこれは良樹さんのお母さん☺️」というファーストインプレッションからの、息子の様子や矢代氏の謝罪番組について語る時の目つきの剣呑さ……ゾクゾクした。

・飯沼家のことを調べたり、健康食品の会社を設立した “東京の知人” すごい……
 “知人” と言ってるだけで、人を雇った可能性も……🤔

単独スポンサーとして番組作るにしても大きなお金が必要になるわけで、誰が出したんだろ……悠美子さん?
資産ありそうな家だったし、出来そう。

・ともあれ、息子がおかしくなった原因かもしれない人に直で問いただす胆力は凄い。
息子への愛情の深さゆえの行動なのかもしれん……けど、狂気を感じてしまうよねぇ?


■明正さんの反応
・最初のインタビュー時、なんかふわふわした受け答えだと感じたけど、そりゃそうだ。
自分は蚊帳の外だったわけだから。
スタッフに話合わせて当たり障りなく答えてたんだろね。

・あえて良樹さんのことを言わなかったのは、あまり思い出したくない過去を蒸し返すことになるから、かな。
妻子がいる時に、自分が引きこもりだったとか家族から仲間外れだったとか隠したいでしょ……
奥さんの口振りだと、昔の話題を話さないようにしてたらしいし。

・2回目インタビューで登場したビデオカメラ一式。
何重にも何重にも、ぐちゃぐちゃのぐるぐる巻きにして、絶対開けたくない意志を感じた。
やっぱり封印したい過去だったんだろうな……
それでも捨てられなかったのは、どこかで家族への想いも残っていたのかな、とか思ったり。

スタッフに開けさせたのも、自分で開ける勇気はなかったから。
それほどまでに忌避する記憶。

・最後の「スイマセン」もさ、不幸の原因に自分が関わってると思ってる証左だよね。

作品中のあの流れからすると、矢代氏の儀式とは別口で、たぶん明正さんはオカルトで彼らを呪っていたのではないか?
効果があったのかは、今となっては分からないけどね。
でも、“呪ってしまった事実” があれば真偽はともあれ後ろめたさは残る。

本当の息子そっちのけで代役立ててまで番組出演しようとしたり、家族ごっこしてたら腹立つよね……
同じ家屋内で儀式やら番組撮影やらやってたら事情は丸わかりでしょうし。
何なら部屋から出ないように言い含められてた可能性。

・明正さんの心情を考えると、ひたすらに辛くて悲しい……!

自分の家族に自分自身が一番疎まれていて、代わりに他所から借りてきた出来の良い子を囲んで仲良し家族ごっこ……理想の家族。
しかもそれをテレビ放映で他の人にも見せつけるわけですから、残酷ったらない。

自分のポジションに出来の良い子を据えれば、家族はとても幸せそう。
つまり、自分のせいで家族は不幸せ。
……という自己否定に繋がるわけで。

・飯沼家と岸本家の対比が正反対なのも精神的にキます。
一方は貧しくて家族から浮いてる引きこもりの子。
もう一方は裕福で親に愛され、学業もスポーツも出来る素晴らしい子。


▣考察(というか妄想)

※明正さんに肩入れした妄想文です。
お気をつけください。

□タイトルの意味

Xとかで他の方の感想や考察見てると色んなパターンがあって面白い。
各々の受け取り方、切り取り方で全く違うものが見えちゃう。
でも、どれもそれっぽいのがすごいよね〜

①悠美子さんの怒りパターン
今回の番組放映後、「良樹さんの不幸の原因が矢代氏ではなく明正さんだった」と知った悠美子さんが、北海道の明正さん一家に突撃するかも……?
ということで、スタッフから明正さんへ『飯沼一家に謝罪します』。
この番組のせいで、明正さんの新しい『飯沼一家』に不幸を呼び込んだかもしれない……の、ごめんなさいだね。

矢代氏に謝罪番組をやらせた過去を知ってると、説得力があって困りますね……

②「理想の飯沼一家」への謝罪パターン
明正さんは儀式で家族から拒まれてしまい「飯沼一家」という括りから弾き出されてるパターン。
良樹さんは逆に「飯沼一家」に組み込まれてしまってる。

明正さんは「飯沼一家」ではない存在として、呪いをかけたことを「理想の飯沼一家」に謝罪したという意味。

③テレビ番組のエゴパターン
私は、このパターンで想像した。

番組から明正さん(と亡くなった飯沼一家)に向けて。
「飯沼一家のプライベートな内情を無神経に暴いてしまいごめんなさい」の意味かな、と。

テレビ番組って「テレビだから」という免罪符で撮影したり取材したりして、「何様なんだ?😡」と時折、問題提起されてますよね。
(もちろんテレビではなくネット上で)

今回も、個人の立ち入った話に踏み込んで取材を進めてました。
結果的に、飯沼一家が実の息子を爪弾きにして代役の少年と「最高の家族です!」とか大はしゃぎしてた無神経さや、儀式で実の息子の名前を書いてしまう闇深さなどが明らかになってしまった。

明正さんは、封印しておきたかった辛い過去を白日のもとに晒されて。
謝罪をする流れに持っていかれた。

良樹さんや矢代氏を巻き込んで悲惨なことが起きてはいるものの、元はといえば飯沼家の家庭内の不和が原因なんですよね……
でも、各人の立場になって考えてみると、そうなるのも仕方ないな〜という気分にもさせられる。やるせない😞

□キービジュアルの解釈

こちらも、人によって違う読み取り方をしていて面白く感じました。

クシャクシャのジャンパー?

①謝罪する番組スタッフ
今回の番組が明正さんにとって不利益になるためスタッフが謝ってる図。

②呪いの被害者たち
飯沼家の父、母、妹、良樹さんが項垂れてる図。

③飯沼一家が謝罪してる
矢代氏や良樹さんを巻き込んだ飯沼一家4人が謝る図。

……などなど。

□儀式について思うことなど

・悠美子さんが「中途半端な知識で儀式なんかやっちゃいけないんですよ」と言っていたけど。
そもそも矢代氏は研究者であり、呪術者ではないんだよね。
知識があるとしても、それは学術的なものであって実用的なものではなかったのでしょう。

その儀式自体も、これまで集めた知識を切り貼りして作った実験的なものだし。

・「センテンナムフルホビル」の呪文。ネットで調べてみるとYahoo知恵袋とか個人のブログしかヒットしない。
“幸運になれる呪文” という噂話として広まってるような感じで、なんか胡散臭いんよね……
矢代氏、これを儀式に組み込んだの?え〜😬

・「私たちの悪いエネルギーは全て取り除かれました。新しいポジティブなエネルギーが家族に降りそそぎますように」って言葉。

悪いエネルギー=明正
新しいポジティブなエネルギー=良樹

として飯沼一家が認識してしまった可能性もあるよね。
良樹が来てくれたおかげで、番組にも採用されたし、チャレンジ成功するし、家族は笑顔になれたもん。

□歪んだ写真について

・作中で飯沼一家の顔が歪んだ写真が出てきたのは、
①儀式直後に矢代氏が撮影した家族写真
②良樹さんの持ち物から出てきた数枚
の2箇所ですね。

・①から呪術的な影響のタイミングを推測するに、明正さんが呪いをかけたとしたら矢代氏の儀式の前か、同時でしょう。

自分の代役を連れてきて、自分は除け者にされて、「一家の幸せ」を祈る儀式をすると聞いたら腹も立つと思う。
明正さんが呪いを行使しても、おかしくないタイミング。

・②は服装からして、たぶん飯沼宅にテレビ撮影が来た日のもの。
あとはリュックの紐が肩にある写真は、ハワイ旅行(仮)の最中のものかも。

・真っ黒写真の撮影時期は分からないけど、歪んでないから明正さんに呪いの影響がないことは示されてますね。

□「輪っか」のモチーフ

・見返してみると、作品中に「輪っか」が点在してます。

・儀式【影の行列】にて家族で手を繋ぎ「サークル」を作るシーン
・紙飛行機チャレンジのゴールの輪っか
・良樹さんが作っていたという輪っか
・ビデオ内で飯沼宅に吊るされていた輪っか

・良樹さんの持ち物から出てきた輪っかを見た時、「うわ〜っ😫」となったのは以前に似たようなものを見たことがあったから。

TXQ FICTIONを手がける大森時生さんたちが携わっていた『行方不明展』の展示に、ちょうどこんな輪っかがあったんですよ……
“山の中の廃墟に吊るされた輪っかの向こう側が異世界に繋がってる” 映像。

→元ネタはネット怪談の「地下の丸穴」みたいですね。

・ハワイ旅行(仮)で行った先が、ネット上に載っている心霊スポットだったのを鑑みるに、本作での輪っかの情報もネットで探し出してきたのかも?
作成した輪っかがネット怪談と同様のものだと仮定するならば、あれらは「異世界への入り口」なんだよね……

現実逃避が行き過ぎて、異世界で人生をやり直そうとしていた?

・あと、もしかしてだけど今作では「家族の輪」と意味が掛けてあったりする?
儀式のビデオの最後、サークル作ってたでしょ。

【影の行列】って、どうやら「私たち家族」という対象に施されているみたいなので、そこに参加した良樹さんは「飯沼一家」に定義されてしまったのではないかしら……

旅行の時点でみんな様子がおかしくなっていたし、この世界ではない “異世界で再び、幸せ家族になろう” みたいな思考になっていたのかも……
そのために異世界への入り口になりそうな心霊スポットを巡ったり、あの輪っかの話を見つけて自作してみたりしたのかな?

・あと、ちなみに儀式で用いられてたセージの花言葉は「家族愛」だそうです。
えええ〜

□謝罪すべき人物は?

・これも他の方の考察で見かけましたが矢代氏の名前も意味がありそうだという話。

【矢代】(やがわり)
他人の身代わりとなって矢に射当てられること。

コトバンクより

→この単語の意味が矢代氏の名前に掛かっていたとしたら……本来、謝罪すべきは明正さんで、矢代氏は身代わりで謝罪させられたということ?
そして、本作の最後でそれが果たされた、と?

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↓自分の頭の中で組み立てられたストーリー

矢代氏の儀式と明正さんの呪いが同時期に行われ、飯沼一家と良樹さんへ悪い影響が出た。
家族の変貌に耐えられなくなった明正さんが家に火をつける。
自身がきちんと家族と向き合えていられれば、良樹さんを呼びよせ巻き込むこともなかった、と罪悪感を持つ。

これを前提として、以下で語ります。

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□悠美子さんにとっての“謝罪”とは

・本作において謝罪をした人物は矢代氏と、明正さんの2人。

悠美子さんは、息子がおかしくなった原因の儀式を行ったとして、矢代氏に公の場で謝罪をしてもらった。
→しかし、これで悠美子さんは納得できたのか?

・たぶん、心は晴れてないですよね。
矢代氏本人も自分のせいだという確証があるわけでもなく、悠美子が求めるままにテレビで謝罪をすれば “とりあえず許してもらえるだろう” という考えが透けてるというか……心からの謝罪ではなく形式的なものであったとうかがえます。

しかも、オリジナル儀式で失敗したゆえに謝罪してるはずなのに、さらにオリジナル儀式【四十九日の裁き】で詫びようという意味不明さ。
悠美子さんも呆れたでしょうね〜

・【四十九日の裁き】で矢代氏が何をしたかったのかは想像するしかないですが……

仏教において、死後に生前の行いを裁く審判の最終日が四十九日目だとか。
白装束は神事でも着るようですが、左前の着方は死装束を連想させられますね。

岸本宅で行ったからには、良樹さんの回復が目的だったんでしょうけど、結果は失敗……😓

・一方で明正さん。
彼も自己流のオカルトで家族と良樹さんを呪ったと推測できます。

しかし、「呪い」という不確かなものゆえ「自分のせい」という確証はない。
矢代氏の儀式のせいかもしれないですし、両方が合わさって不具合が生じたかもしれない。

でも、自分の家族が良樹さんを呼び寄せたばかりに良樹さんまでおかしくなってしまった、という負い目がある。
だから毎年、悠美子さんへお詫びの気持ちを込めてリンゴを贈り続けていた。

・最後の「スイマセン」はただの謝罪じゃなくて、後悔だとか悲しみだとか色んな感情がごちゃ混ぜになってると感じました。

大人になってから理解できる親の気持ちだとか、当時の自分の境遇だとか、あの時どうすれば最善だったのか、とか諸々が頭に過ぎってそう。
後悔はいくらでも湧いてくる。
というか、すでに取り返しのつかない状態で全てが終わっているので後悔しかできないんですよね……

・そして、この “後悔し続けること” が悠美子さんが “謝罪” として求めたものなのではないかと解釈しました。

・悠美子さんは全て分かっていたのではないかとも思います。
あの行動力があるならば、真っ黒写真の解析も行ってると推測。

良樹さんの持ち物にあった「儀式で書かれた紙」は悠美子さんも全部読んだと思うんですよ。
飯沼家の長男の名前が書かれた紙。
そして儀式の内容も調べたでしょうから、自ずとこの紙の意味は分かるわけで……

家族全員から疎まれて、一人遺されて、良樹の現状に心を痛めてくれる哀れな子。

リンゴを贈り続けてるうちは、岸本家への罪悪感を持ち続けていることが示されてるわけで、悠美子さんはそれを汲んでくれていたのではないでしょうか。

・穿ち過ぎかもしれないですけど、このテレ東の『飯沼一家に謝罪します』という番組が、またもや悠美子さんの差配だという可能性もありそうですよね。
そこまで知名度のなさそうな、あの謝罪番組をドキュメンタリーとして取り上げるというのが不自然というか……🤔

老い先短いと感じ始めた悠美子さんが、「明正さん可哀想だけど、それはそれとして、そろそろ謝罪してもらいたいな。ずっと覚えておいて欲しいし……」とか考えてもおかしくないかなぁ、と。

放火の時効って25年なんですってね。1999年10月の火災から、ちょうど25年後がこの撮影時の2024年。
明正さんが自宅を放火してたとしても、時効だから安心して全てを話してくれるよね?という優しさなのかも……😨


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……という感じで、色々こねくり回した結果、自分の脳内ではこういうストーリーとして落ち着きました。
頭の中のモヤモヤをようやく文章として形にできたのでスッキリ!
これから、他の方の考察記事を巡ってみようと思います〜☺️


フィクションだと分かっていながらも本気で登場人物について考えてしまうのは、それくらい真に迫ってるからなんですよね……
とても素晴らしい作品でした!

第3弾も楽しみに待ってます……!

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