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催眠術で霊能力が開花した男の苦悩【映画『エコーズ』の感想を書き綴る】
1999年のアメリカ映画。
PG12のサスペンス・ホラー。
◎あらすじ
ケヴィン・ベーコン演ずるトム・ウィツキーは、地元シカゴで架線作業員として働き、いつもの仲間と平穏な毎日を送っていた。
だがパーティーで義理の姉に催眠術をかけられて以降、ある1人の亡くなった少女にまつわる幻覚に悩まされるようになる。
どうしても幻覚から逃れられないトムは少女の謎を解き明かそうと決意するが、その過程で彼と妻の命がおびやかされる危機に遭遇する。
◎ざっくりネタバレ感想
・主人公のトムが、家庭を持ってるけど夢追い人というか『平凡ではない何者かになりたい』人です。
対して、妻のマギーは平凡でも幸せな家庭を望んでる感じ。
ちゃんと夫のことを愛してるんだけど、その点で乖離がある。
・催眠で『心の扉を開け』と暗示をかけられてから、幽霊が見えるようになってしまったトム。
不意に訪れる幻覚に悩まされるようになります。
どうやら、殺されたサマンサの追体験を細切れに見させられてるみたい。
助けを求めるように現れたサマンサが白い息を吐いてたのは、殺されたのが雪の日だったからなのかな。
・サマンサが霊障で、給湯器の火を消したのは、遺体の隠されている地下室へ近寄らせるためか。
でも、マギーは気づかない。
やっぱり、『見える』人に訴えないとダメなんだな。
・夫が幽霊と会うために、仕事をずっと休んで家にいる。
息子から情報を聞き出そうと躍起になってる様子も異様。
妻の話も聞かず、そんな状態じゃ泣きたくもなる。
ニールという黒人の能力者と出会ってから、ようやくマギーもトムの能力のことを信じざるを得なくなった感じ。
それでも協力的になれないのは、妻の気持ちを蔑ろにしてまで、幽霊の願いを叶えようとしてることに反発してるんかな。
・再催眠で心の扉を閉めてもらおうとしたが、サマンサが乱入してメッセージをスクリーンに映したのは、怖さもあるが面白い描写だった。
・そして、サマンサのメッセージ通り『掘る』ために、家の庭をどんどこ掘り返すトム。
上半身裸で、やる気にみなぎっている(笑)
・『遺体を捜してる』とは明言しないものの、これが『トムのこれまでの人生で一番大事な出来事』になっているらしい。
どんだけ平凡を嫌ってるの……
これまでの慎ましくも平穏な暮らしは『大事じゃなかった』と言われてるも同然だからマギーがキレるのも理解する。
・でも、マギーに愛想を尽かされそうになって、急に冷静になったのかトムはフォローしに行くが、本心が隠しきれず結局怒らせることに……
妻の親族の葬式には出てやれよ……
マギーは息子を連れて葬式会場へ向かう。
・これ幸いにと、トムは邪魔が入らず思いっきり作業に没頭。
ふと地下室を掘ることを思いつき、切削機を買ってきて騒音撒き散らしながら掘る!掘る!掘る!
マギーいないからってやり過ぎ(笑)
・葬式会場にいるマギーと電話で仲直りしてたけど、ウソつきまくりだから帰ってきたら絶対壮絶に怒られるやつだよ……!!
機材運び込んで地下室を破壊……だけじゃなくて、床板とかもやっちゃってる!
あと1時間で迎えに来ちゃうけど、それまでやれるだけやろうって根性もすごいですね。
・庭を掘り返し、地下室床のコンクリートも破壊しまくったけど、結局遺体が隠されていたのは地下室の壁の中。
レンガ積んだりして、けっこう念入りに隠されてましたね。
遺体の手に触れ、サマンサの追体験をして、死に至るまでの経緯を知ることになる。
あの近所の若者たちが犯人か〜
陰キャっぽいサマンサをうまく言いくるめて手籠めにしようとしたけど全力で抵抗されて、勢い余って殺してしまったという……
・近所付き合いでまあまあ仲良くしてたフランクには、犯人の親としてショックを受けるだろうけど、一番に伝えるべきだろうと、良かれと思って伝えたトムですが……
親も息子たちの罪を隠蔽してる共犯者だと、見抜けなかったために命を狙われることに……!
まずは警察に連絡しとけばいいのに!
・フランクたちは「このへんは一番いい地域」「みんなで助け合う」って飲み会で言ってたけど。
→『いい地域』を守るために息子の殺人を『親父たちが助け合って』隠蔽しちゃったんだね……人間の闇……
・口封じのために乗り込んできたカートとその親父に挟み打ちにされるトム。
まさに殺されようとする瞬間、外からクラクションの音がして命拾いをする。
マギーが迎えに来た合図だった。
間が良いというか、悪いというか……
夫婦揃って絶体絶命という場面を救ったのは、なんと自殺したふりをして潜んでいたフランクだった。
・いつか見た予知夢の時と似ているが、ちょっと違うセリフを言って外に座り込むフランク。
……未来を変えた?
それとも、予知夢じゃなくて警告夢だったのかな。
・フランクは優しい人だったんだろうけど、愛する息子の将来と天秤にかけて、隠蔽することを選んじゃったんだろうな〜
奥さんとの仲は冷え切ってて、息子しか生き甲斐なさそうだったもんな。
でも、その息子も自責からの自殺未遂で生死の境を彷徨ってて、いい加減良心の呵責に耐えかねたのかね。
それとも、強姦未遂の主犯だったカートに、アダムは巻き込まれただけだと思ってて「息子がああなったのはお前らのせいだー!」みたいな気持ちがあったのかしら……
・遺体を見つけてもらったサマンサが、ちょっとずつ生前の姿を取り戻して成仏するカットは良かったですね。
黒人と駆け落ちしたとか、諸々悪い噂をあることないこと言われてたけど、汚名は雪がれたかな……
・トムの息子ジェイクが、ちゃんと能力を理解して使いこなせてる風なのに、トムに助言するのみに留めてたのは、能力に慣れるまでの見守りだったのかしら。
あの子けっこう、先のこと見通せてそうだったよね。
最後に車中で、死者の声に耳を塞ぐジェイクだったけど……『沢山いる幽霊を全部相手にしてたらキリが無い』と分かってるからなのかな?
サマンサのことは、トムが『死者の願いを聞いちゃう』と予知してたから協力的に話聞いてあげてただけなのかも。
・トムは今回の出来事から何を得たんだろうね。
当初は、特別な能力を使って幽霊の願いを叶えてヒーロー気分になるつもりだったのかもしれないけど。
実際は命を狙われたり、犯人側の自業自得とはいえ自殺未遂や殺人を起こしてしまうという、後味の悪い結末となった。
良いことばかりじゃないって、気付けたのかな。
・引っ越し途中に夫婦の手が絡み合ってたから、愛情はきちんと戻ったんでしょうね。
平凡でもいい、幸せな家庭を築いてほしいものです。
失ってから尊さに気づくのでは遅いのだよ。
◎総括
夢追い人な主人公にあまり共感できないので感情移入はしづらかったけど、目覚めた能力が徐々に出てくるのは、何が起こるのか分からなくて面白く感じた。
ジェイクの達観した感じと、普段の子供らしさのギャップが可愛かったな〜
あの子が止めないってことは、きっと最後は大丈夫なんだろうという謎の安心感がありました。
結局、一番怖いのは『生きてる人間』だというのも好みでした。