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子供の頃に飲まされたヘンなお薬。

確か、小学校3年生くらいだったと思う。
ちょっと曖昧な部分も多少はある。

5月か6月くらいだっただろうか。
いつもと変わらない夕食のあと、母が
一粒の黒っぽいカプセルを渡してきた。

「これを飲みなさい」

なんじゃ?こりゃ?と思いながらも
とくに抵抗することなく飲んだ。
わりと偏食が酷い人間ゆえに
子供の頃からサプリ漬けだ。
そういう意味では、
あんまり抵抗はなかった。

ごくり。

「どう?」

・・・いやわかんねえよ。

と思いつつも

「いい気がする~!!」

とか言った気がする。
少し母は嬉しげだった。

それからしばらくは
それを朝・夕の食後に
1錠飲む生活が始まった。

どうやら体内の活性酸素に効く薬らしい。
いや、薬というかサプリか。
とにかく健康にいいらしいということは
当時の僕でもそれとなく理解させられていたし、
「発掘あるある大◯典」とか
「ためして◯ッテン」とかで
活性酸素というキーワードが出てくると
「あ、これのことなんだね!!」
と子供ながらに母親と話していた気がする。

少し満足げな表情をする母の顔を覚えている。

そうこうしていくうちには
家にはその薬の空き箱が溜まってきていて、
それを僕は当時、めちゃくちゃハマっていた
遊戯王のカードを収納する箱として使っていた。

それから二ヶ月くらいか。
夜になると週に一度くらいのペースで
家にたびたび、色んな知らない人が
出入りするようになった。
スーツの人もいたし、主婦の人もいたし、
高齢の方もちょくちょくいた気がする。

どうやら、その「薬」の勉強会らしい。

「大人は大変そうだな」と
子供心に思いながら僕はゲームをしていた。

どうやら母曰くに、
「とてもいいものだから人におすすめする」
というスタンスで、勉強会が開催されているようだった。

なるほど、よくわからん。
とも思いつつ、仮にも
医者の娘である母が学んでいるのだから
それなり正しいのだろうとも思っていた。

そして、何よりその会には
胡散臭いモノをとにかく嫌う、
うちの親父も参加していたから、
別に怪しくも思っていなかった。

ただ、「医者でもない大人」が
真剣に「薬」について勉強会をする、
しかも家にくる。という事態には
些か、疑問は感じていた。

しかし、その頻度も少しずつ減っていき、
半年も経たないうちには
その勉強会は無くなった。

・・・あれは一体なんだったんだろうか。

と子供ながらに疑問を覚えて、
一度、聞いたことがある。

しかしまぁ。
けっこうにボカされた気がする。

大人になったらわかるわよ、みたいな。
そういうボカされ方をした。

今の所、そういうお誘いはないので
僕には分からないということでいい。

たぶん、そういうことだったのだろうけど。
まぁ今の僕も、当時の僕自身も、
無理に分かる必要のないことだと思う。

でもたまに遊戯王の話をするたびに、
今でも思い出すし、少し引っかかるから
Googleで探してみたりはする。

ソフトオン・デマンドの略称みたいな、
あのヘンな薬は、一体、どこが作って
誰から勧められたものだったんだろう。

疑問は尽きないし、きっと今の僕の身体にも
もう殆ど残されていないのだろうけれど。

・・・あれは一体なんだったんだろうか。

そんなモヤモヤを思い出すたび
苦い薬を飲み込むように、
ごくり、と飲み込んでいる。

知らぬが仏だし、年が薬なのだ。

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