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銭湯日記 23

先週、先々週と、いつもの銭湯に行った。サウナは、夏の暑さに疲れた体と、夏の終わりのそこはかとない虚しさを、やさしく癒やしてくれる。

この夏は、禅語というものに出会った。
寝る前などに少しずつ眺めてみたりしていたが、たいていのものは、記憶にとどまることもなく、通りすぎてしまった。ただ、なかには、印象深く、心に残ったものもある。たとえば、「好事不如無(こうじもなきにしかず)」という言葉だ。
特に楽しいこともよいこともなかった日。それどころかむしろ、散々だった日にも、眠る前に心の中で唱えてみると、ふしぎに安らかな気持ちになれる気がした。
枕元に、そっと置いておきたい言葉だ。

また、水ようかんを六種類くらい食べたことも、この夏のできごとだった。
食べもの一般に関しては、必ずしも高ければおいしいというものではないが、水ようかんに関しては、お値段が高めのもののほうが、豆の風味や、砂糖の口当たりなどが確実に良いように感じた。シンプルなお菓子であるだけに、やはり上質な材料を使用しているかどうかが、ストレートにあらわれるのだと思う。

ただし、大幅な差はなく、どれもおいしく頂けるというのも事実だった。結局のところ水ようかんに求められているのは、甘みや、ひんやり感、なめらかさなどであり、それらはどの水ようかんに関しても、申し分なかった。

ただひとつ、群を抜いておいしかったお菓子がある。ただし、水ようかんではない。それは、番外編として食べた、
日影茶屋の冷やし汁粉である。
水ようかんの固めてないものと言ったらよいのか。
粒あんで、小豆のサイズがふつうの二倍くらいある。
甘さが絶妙にちょうどよい。甘いけれど、べたっとした感じがなく、口にのこらない。
小豆も砂糖もかなり上質なのではと思われた。それは、衝撃的とも言える、味わい深さだった。


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