詩 〜たぶんそれで〜
安全ピンを刺したら血が出た
不思議なことに安全じゃなかった
たぶんそれでいいんだと思う
痛みを知っておいた方が優しい
秒針は時を身体に刺して刻んでいく
わからないように少しずつ
痛みがないから気づかなかった
それに気づいて時間を消した
羅針盤は向きを刺して迷わせる
あざわらうように堂々と
大胆すぎて気づかなかった
それに気づいて方角を消した
すべてが止まったら暗かった
寂しく感じて光を作った
辺りがパッと明るくなって
目の前に笑顔のきみがいた
ぼくも笑おうとしたけど
時を消したから笑えなかった
笑いたいから時を戻した
時間が再びぼくの手を引いた
同時にぼくはきみの手を引く
今度は方向がなかった
手を繋いで歩きたいから
東西南北も元に戻した
今度はきみの棘がぼくに刺さった
赤い血がツーっと流れた
綺麗な薔薇には棘がある
たぶんそれでいいんだと思う
そのまま手を繋いで歩いた
痛みは残ったままだけど
たぶんそれでいい
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