『ティール組織』新時代の組織のカタチ
キングダム最新刊発売されましたね。
主人公の信が着々と将軍に向かって背中を広くしていく姿を見ると、奴隷として畑仕事をしていた時から見守っている読者は感慨深いものがあるのではないでしょうか。
信・ルフィのような少年誌の主人公として、登場人物だけでなく読者の心までを掴むリーダーは共通してどんな資質を兼ね備えているのか、考察してみるのも面白いかなと考えたりします。(すでにそのテーマについて扱っている書籍もありますが...)
と、それとない導入はここまでにして、今回の記事はビジネスライクな内容になります。
読者の皆さんは何かしらの組織に所属していると思いますが、時代の流れが速い現代において特に企業にとっては組織開発が重要なテーマです。
これまでも様々な組織論が生まれてきましたが、ここ数年、組織開発の領域で大きな注目を浴びているのが『ティール組織』という言葉です。
元はフレデリック・ラルーが2014年に著書『Reinventing Organizations』で提唱した組織理論で、2018年に日本語版である『ティール組織』が刊行され、日本で絶大な反響を呼びました。
一言でティール組織とは、
社長や上司がマイクロマネジメントをしなくても、
組織の全メンバーが目的に向かってそれぞれ意思決定を行う自立組織
のことを指します。ティール組織では、上司が部下の管理をしない、など従来の組織モデルでは考えられない特徴を持っています。
今回は、このティール組織をテーマに「他の組織モデルとの違い」や「具体的特徴」について解説していきますが、少し長くなるかもしれないので、太字の要点だけ読めばある程度理解できるように意識して書きたいと思います。
①ティール組織に至るまでの5つの段階
ティールとは青緑色という意味で、著者であるラルーはティール組織に至るまでの組織の進化過程を5つに分類し、色とメタファー(比喩)を用いて説明しています。
1-1 【RED -レッド組織-】
例)マフィア、ギャング
最も昔に生まれた原始的な組織形態。「オオカミの群れ」と称されるように、圧倒的な強い力をもつ個人による恐怖支配により成立。
力に従属することでメンバーは安心感を得ることが出来ている。この組織は短期的目線で動いており、組織として今をどう生き抜くかに焦点が当たっている状態。良くも悪くもリーダー個人の力に強く依存している為、再現性のない組織であるのも特徴です。
1-2 【AMBER -アンバー組織-】
例)軍隊、政府機関、宗教団体
権力や階級、制度等が組み込まれた組織モデル。「軍隊」と称されるように、上意下達で厳格なヒエラルキーに基づいた役割によって情報管理が為され、指示命令系統が明確です。
ヒエラルキーに基づく役割分担によって、レッド組織のような特定の個人への依存を軽減させる事で多人数の統率が取れるようになります。
メンバーは組織の中で与えられた役割に沿って行動します。指示命令系統が確立されていることで、組織としての再現性が高く、ルールに基づいて安定的な運営ができます。
しかし、今の環境が不変であるという前提に基づいて組織編成がされていて、競争よりも階級のヒエラルキーを重んじるため、外部環境の変化に柔軟に対応できないという課題をはらんでいます。
1-3 【ORANGE -オレンジ組織-】
例)現代の一般的な企業
基本的な階級構造は残しつつも、外部環境の変化に対応できるようになった組織モデルです。
社長、上司、部下のようなピラミッド型のヒエラルキーを残しながらも、成果を出した者が評価され昇進できる組織です。アンバー組織に比べ流動的なヒエラルキーを残しているとも言えます。時代の変化に適応できる能力を持ったメンバーがその力を活かす事が出来るので、よりイノベーションが生まれやすくなりました。
しかし、数値という目に見える形での成果を追い求めたマネジメントが徹底される為、常にメンバーに対して競争を強いる事となります。
その結果、メンバーは絶えず働く事を強いられ、人間らしさの喪失に繋がってしまいました。個人が会社のための歯車のように過重労働を余儀なくされることから、「機械」と称されています。
経済成長期はこのマネジメントが功を奏しましたが、現代のように賃金水準が変動がなくレガシーとしての過重労働が残った組織では、労働問題を引き起こし、『働き改革』という形での人間らしさを見直す動きが生まれています。そこが「テイール組織」が反響を呼んでいるのは日本のこうした時代背景が根底にあるのかもしれません。
1-4 【GREEN -グリーン組織-】
過度な競争による人間らしさを喪失したオレンジ組織に対して、より個人がその人らしく活動できる事に焦点を当てた組織。社長・社員といったヒエラルキーは残しながらも主体性や多様性を重視し、現場の意見を尊重するボトムアップ型である事が特徴です。グリーン組織は「家族」と称されます。
組織のリーダーにはすべての人が平等に機会を取得できるよう、差別や制限を撤廃することが求められます。また、牽引型のリーダーシップではなく、縁の下の力持ちとして組織が潤滑に機能するよう、メンバーをサポートするリーダーシップが必要です。
一方で、多様なメンバー各個人のコンセンサス(合意)を重視するあまり、意思決定プロセスが膨大になり、変化のはやい時代ではビジネスチャンスを逃してしまう可能性をはらんでいます。
また、コンセンサスが取れない場合、社長の意思決定に委ねるほかないため、結局鶴の一声でこれまでの意見がひっくり返ってしまうという側面も残しています。
とはいえ、多様性を重視した風土なので個人の心理的安全性は確保されていてオレンジ組織より会社内の雰囲気は良いです。
1-5【TEAL -ティール組織-】
会社を「ひとつの生命体」として捉える考え方で、メンバー個人は体を構成する組織であるとされる為、「生命体」と称されます。
企業は社長のものでも株主のものでもなく、メンバー一人一人が組織の存在意義・目的のために自立的・調和的に活動する組織です。強力な権限を持つリーダーが存在せず、現場に意思決定権があるという特徴があります。
社長や上司からの指示命令系統はなく、マネージャーやリーダーといった概念もありません。構成員全員が信頼に基づいて独自のルールや仕組みを工夫しながら組織運営を行います。
ともに働く構成員の行動や思考がパラダイムシフトを起こすきっかけとなり、さらなる組織の進化に繋がっていく為、メンバー個人の成長とともに組織形態が変化していきます。
グリーン組織と比べてメンバーが組織の明確な社会的使命を理解し活動するため、目的達成のために目の前の課題を解決しようとします。それにより、メンバー間のコンセンサスを取る時間が無くなり、意思決定が迅速になります。
ここまで読んで下さった方は、「そんな組織実現できる訳がない!」と思うかもしれませんし、実際のところティール組織を実現させるための明確な手段はないとされています。
しかし、実はアメリカのEC企業であるザッポス社や、オランダの訪問介護企業であるビュートゾルフ社はティール組織の一つの形態であるとされている「ホクラシー経営」を成功させているとされています。
それではそうした企業に共通しているものはなんでしょう。
②ティール組織に共通する3つの事項
ラルー氏は一般的な企業がそうした経営に至るまでには3つのブレイクスルー(突破口)があるとしています。
2-1 Evolutionary Purpose (存在意義)
従来の固定化された目標を追求する組織モデルと異なり、
進化し続けるティール組織のリーダーは常に「なんのために?」と組織の存在意義を問い続けなければなりません。
そうすることで組織の陳腐化を防ぎ、メンバー個々人の抱える”何を使命とすべきかと”会社の存在意義”が重ねる事で途方もないエネルギーを生み出すことが出来ると述べられています。
2-2 wholeness (全体性)
ティール組織では、組織に属するメンバー一人ひとりが個性を最大限発揮できる環境を作ることが欠かせません。そのため会社という場所が、心理的安全性が確保されメンバーがありのままの姿を出せる場所であることが必須です。
つまり、これまでのように自社の利益になる個人の側面だけを見ようとしていた為、メンバー個人も会社の顔とプライベートの顔を使い分ける事がほとんどでした。しかし、それではその人の個性や才能を100%引き出すことはできません。
ティール組織では、個人の多様性を尊重し、他の人にありのままの自分をぶつける事が出来る環境を整えることで、それぞれの能力を最大限発揮できるとされています。
2-3 Self Management (自主経営)
ティール組織では従来の組織のような指示系統を持たないと先述しました。
各個人に裁量が配分されているため、意思決定の為に社内の基本的な情報(個人情報・インサイダー情報等を除く)がすべて開示されていて、透明性が保たれている点が特徴です。
また、この個人の意思決定を正しく導くため他者からの助言を得られるシステムが確立されていながらも、あくまで助言は一つの判断材料で最終的にっは個人の意思決定が尊重されます。
セルフマネジメントの考え方では、このように社員に大きな裁量を与えるため、社員を信頼することが不可欠とされます。
互いの社員が信頼しあって、それぞれ自律的に思考することでイノベーションが生まれやすい環境になるとされています。
③ティール組織に対する誤った認識
ここまでティール型組織への組織形態の変化と特徴について解説してきましたが、認識を誤ってほしくないのが下記の点です。
・ティール組織は組織発達の歴史的にみると、近代に合わせて進化した組織ではあるが、最も優れたモデルではない。
・業種によって最適な組織形態がある。
・明確に5つに別けられる訳ではない。”オレンジ寄りのグリーン”や”グリーン寄りのティール”などもある。
つまり、世の中には様々な組織があり、それぞれに対して最適解があるという事です。例えば、警察や軍隊などは命令系統のしっかりしているアンバー組織が望ましい、というようにです。
この記事を通して伝えたい事
ここまで『ティール組織』について長々と解説してきました。
つまり僕が何を言いたいのかというと、
自分の組織を俯瞰的に見つめなおして、自分自身が周囲の環境に心的ストレスを感じているならば、環境を変える選択をとってもいいんじゃないか。
その際に組織軸で、自分に合っている組織はどんな組織なんだろう?と考える視点を持つのも大切なことなんじゃないか。という事です。
意外と組織形態で会社を見ることって少ないんじゃないかなと思ったので、本テーマで記事を書いてみました。
ここまでお付き合い頂いた方、ありがとうございました。
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