読了本 山口未桜『禁忌の子』
一言で感想をいえば、「(同じ87年生まれとして)新人作家ですごいの出したぞ、いい意味で裏切られたぞ」
ちなみに、サイン本だったりする。電話で取り置いてもらって逆方向に行ったのに、地元の書店行ったらその日にサイン本入荷…というオチつき。
書誌情報
本当ならAmazonを貼りたいのだが、Amazonにネタバレレビューが書かれてしまっているため、Amazonで購入する場合はできたらレビューを見ないようにするか、いっそのこと別のサイトで購入して欲しい。著者も「できるだけ前情報入れずに」、「紙の本で」、「できれば一気読み」を推奨しているし。
2024/10/20時点でAmazonと楽天は品切れらしい(前日に「王様のブランチ」で取り上げられたからか)著者は「ツチノコ本」とおっしゃっているが、増版のため待って欲しいところ。
最後に、ネタバレは読書メーターやふせったーのように隠せるものを使おう。
著者について
新人作家のため、一応著者である山口未桜のXにあるプロフィールを掲載する(スクショは2024/10/18時点のもの)
消化器内科は主人公のバディである城崎と同じなのだが、その経験が活かされているのだろうか(主人公の武田は救急医)。
なお、『ダ・ヴィンチ』2024年11月号のインタビューによると、影響を受けた作家や作品はプロフィールにある有栖川有栖の他にも、宮部みゆき『火車』とエラリィ・クイーン『Xの悲劇』、『活字倶楽部』と本格系や社会派系が好きな模様である(リンクはWebで公開されているインタビュー記事)
あらすじ
感想
先述した同じ87年生まれだけでなく、「搬送されてきた遺体が自分と瓜二つ」という時点で面白そうだと思って10年以上ぶりにハードカバーを購入したら大当たりだった。
医療系のミステリ、医師が書く小説は教科書で出てた森鴎外『舞姫』を除けば初めてなのだが、医療に関する専門用語は噛み砕かれており詰まることはほぼない。どうしても気になる場合だけググれば良い。
途中から話は重くなるものの、話の流れ的に仕方ないというか、しょうがないというか。そして読了後にタイトルを見返すと…ここはネタバレに近いのでやめておこう。第5章からは空いた時間はこの本に費やしてたと過言ではない。
なお、探偵役となる城崎は、感情が乏しく理論で詰めていくか弱そうな男(イラスト見ると色白だし)である。若干KYで危険な発言をする時もあるのでヒヤリとするが、その結果が核心をつく場合もあるのでできる人である。次作も帯で発表されていることから楽しみになったものだ。
一気に読んだという人もいれば、途中から一気に火がついたという人もいるはず。自分は後者の場合で、第3章からペースアップしていった。少しハードカバーに慣れたかもだが、真相へ向かうにつれページが止まりにくくなったのは確かだ。
もし悩んでいる人がいたら、巻末に鮎川哲也賞の選評が全文掲載されている(選者は青崎有吾、東川篤哉、麻耶雄嵩の3名)それを読んでからでもいいかと思う。『紙魚の手帖』Vol .19にも全文掲載されているから、見つかるのであればそちらでも問題ない。
この記事の感想以外の骨組みを作っていた2024/10/17には重版が、翌18には読書メーターで単行本ランキングで1位になったと喜ばしいニュースが舞い込んできた。色々あると思うが、人気が出てきたようで何より。
と言っている間に、10/19には「王様のブランチ」で著者インタビューと再現ドラマまで出てしまった…ここまで取り上げられるとは考えていなかったので(失礼)、改めてこの本の凄さを知ったのである。
さいごに
ちなみに、この本を知るきっかけになった『ダ・ヴィンチ』を配信で読んでた時も、この本が届いた時も、消化器内科の病気が再発してちょうど入院していた時だった。発売日に至っては大腸内視鏡の前日というあまり良くないタイミングで…
「病院で医療ミステリとはな」と思って発売日に色々調べてたら著者が消化器内科の先生と知り唖然。本読みたかったけど、点滴が邪魔して本を開ける状態じゃなかったし、iPadでぽちぽち調べてたらこれとは(偶然引っかかったXだけでなく東京創元社のnoteコラムなども読んでた)
院内では誰も本のことを気に留めてもなかったが、バレてたらどう思われていたか。基幹病院でよかったかも?
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