やっぱり赤ちゃんってすごい。
赤ちゃんがどうやってコトバを習得するのか、ずっと疑問だった。大人が外国語を学ぶとき、普通は既に習得している母国語を使って文法や語彙を学ぶ。高校の時の校長先生が、辞書の存在しないミクロネシアの小さな島(確か)の言語を研究したときには現地の人と一緒に生活しながらシーンで当てはめてったって言ってた気がするけど、それでも頭の中では母国語で考えていたはず。考えるために使う言語も持たない赤ちゃんは、どうやってコトバを学ぶんだろう。
図書館の新刊コーナーで出会ったこの本に、最新の知見が詰まってておもしろかった!東京大学で認知科学や発達心理学の研究をしている先生の本。
赤ちゃんにとっても、コトバの習得は大変なこと
初めて単語らしきコトバを発するまでに生まれてから1年(1歳ごろ)。「ワンワン イタ」みたいな文を話すまでにさらに1年(2歳ごろ)。そしてその後も完成することなく次々と語彙を増やして学習を継続していく。
赤ちゃんって、日々成長、ぐんぐん成長、あっという間に成長、のイメージだけど。コトバの習得って年単位なのか、そうだよね。2歳ごろになると急激に語彙を増やす時期がきて一ヶ月に30〜50もの単語を覚えるようだけと、単語を発し始めてから半年は一ヶ月に3〜5語習得のゆっくりペース。赤ちゃんにとってもコトバの習得は難しいらしい。
そもそも、言語とは「それでもって何か別のモノやことを指し表すこと」だけど、赤ちゃんはそのことすらも自分で発見する必要があるわけで。音の聞き方、発声の仕方、音のかたまり(単語)が特定の意味を持つことの理解、そしてどの単語がどんな意味を持つのか、すべてを自分でゼロから発見していく。自分も通ってきた道なはずだけど、とてつもない道のりだなあ。
人に支えられて学ぶ
赤ちゃんにとっても負荷の高いコトバの学び。それでも赤ちゃんが楽しそうなのは、ちょっとしたことでも喜んでくれる大応援団がまわりにいるから。
これにははっとさせられた。
家族どころか道行く見知らぬ人からも温かな目で見守られているのを感じてる、今。赤ちゃん赤ちゃんと誰からも可愛がられる時期を過ぎても、いつまでも一番の応援者でありたい。
コトバを話し始める1歳前後は、まだ指さしや視線の理解も完璧ではない状態。そんな中でもコトバを習得することができるのは、まわりの人たちが赤ちゃんに合わせて工夫して働きかけてくれるから。勝手にコトバを覚えていくわけではなくて、赤ちゃんに合わせた働きかけの中で覚えていくんだね。ペース合わせて丁寧に向き合おう。
「私とあなた」「私とモノ」の世界が繋がり始める
生後10ヶ月になる娘が、ちょうどここ数日で、人に向かってモノを差し出すようになった。
これまで、人と関わるときは、モノを相手と一緒に楽しむことはなく「私とあなた」二人きりの世界。モノと関わるときも同じで「私とモノ」だけの世界。それぞれに別々に存在していた2つの世界がつながり始めるのが9〜10ヶ月ごろ、とのこと。
赤ちゃんからしてみたら、「私とあなた」の世界にモノを参加させる、もしくは、「私とモノ」の世界にあなたもどうぞ、という感じ、と書いてあって、おもしろーい!と思った。
モノを差し出してくるけどこちらが掴んでも手を離さないときもあれば、渡してくれたのにすぐに取り返しにくるときもあって、どうしたいんだろう?と思っていたけど、“見せる”にしても“渡す”にしても、自分が差し出すものに相手が反応することを期待してるのだとか。
その他にも自分の行動した先にどんな結果が生じるか(たとえば、ボールをここに置いたらどうなる?とか、この容器にいれるとどうなる?とか)をじーっと観察する行動がここのところ顕著な娘。延々と繰り返される「ちょうだい」「どうぞ」の遊びもその延長だったんだなあ。
コトバを習得するのって大人にとっても大変なことだけど、赤ちゃんにとっても同じように大変なことなんだなあ、というのが最新の研究結果をもって具体的に書かれていて、とてもおもしろい本でした。娘の成長がより楽しみになった!