『実話怪談~真夜中の散歩者~』
深夜、1時過ぎになると決まって
窓の外から話し声が聞こえてくる。
どうも二人連れの女性が話しながら
ウォーキングでもしている様子。
都会ならまだ皆起きてる時間だが、
田舎では皆寝静まる時間帯である。
最初は然程気にも留めなかったが、
日毎に話し声ははっきりと聞こえ、
その内安眠妨害程度になってきた。
流石に之は注意せねばと思うも、
声がしてカーテンを開けると、
其処には誰の姿も無く声も無い。
余程ウォーキング速度が早いか、
近所迷惑で訴えられるのを警戒し、
足早に遠ざかっているやも知れぬ。
ならばと暗視カメラを設置した。
これなら暗闇でも動く存在を察知し、
バッチリとその姿を捉えてくれる、
しっかり顔を捉え注意してやろうと
待ち構えていた。
その日の深夜1時すぎそうとも知らぬ
彼女らはいつもの様にやってきた。
べちゃくちゃお喋りをしながら
家の前の道路を通り過ぎていく。
彼女達の声が遠ざかり
聞こえなくなるのを待ち、
外の暗視カメラの映像を確認。
その映像を見て私は驚愕した。
確かに映像に音は入っている、
話し声と歩く足音は段々近づき、
家を過ぎると両方遠ざかっていく。
だが其処には誰の姿も映っていない。
奇妙なのは彼女達以外の姿は捉えている、
羽虫や夜鳥の姿は明確に捉えているのだが、
何故か彼女達の姿だけが全く写っていない。
すると、不意に背後から女性の笑い声、
驚いて振り返るも其処に人の姿は無い。
私は慌てて玄関から室内に入り、
厳重に戸締まりをして布団に潜り、
夜が明ける迄全く寝付けなかった。
その後聞いた話だが随分昔に夜遅くに
帰宅した二人組の女性が不良に襲われ、
その場で殺されて埋められたと聞いた。
其は家の目の前を流れる河川敷の
土中に埋められ長く見つからなかったが、
或る大雨の日に土砂が流された結果、
白骨化した遺体が見つかったのだという。
私は彼女達が埋められていた場所へ赴き、
深夜の非礼を詫び花を手向け手を合わせた。
其以降、話し声は一切聞こえなくなった、
私が数ヶ月前に体験した実話です。