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トップアスリートが実践 人生が変わる最高の呼吸法【パトリック・マキューン】
呼吸というのは私たちが思っている以上に大事。正しい方法で息をすることで、体のパフォーマンスやコンディションを大きく変えられる。
口呼吸だけは今すぐやめた方がいい。口呼吸にはデメリットがありすぎる
今回の授業を聞けば、口呼吸は今すぐやめた方がいいということに気づくはず。しかも正しい呼吸法を学べるというおまけつき
深呼吸が体にいいというのは間違い
呼吸についてそういう勘違いをしている人は多い。しかしそれは全くもって間違った考え方
まず酸素の役割を考えてみる。酸素は血中から筋肉に運搬され、筋肉を効率よく動かすための燃料になる。要するに酸素がしっかりと筋肉に運ばれていれば、筋肉のパフォーマンスは高くなる
「それなら深呼吸でたくさん酸素を取り込めば、たくさん酸素を筋肉に送れるようにならないか?」その考え方こそが大きな間違い。なぜなら、
✅血中にはすでに酸素が溢れているから
人間の安静状態の時の血中酸素飽和度は95%以上、つまり普通に呼吸しているだけでも血中にはもうこれ以上ないほどに酸素が充満している
この状態で深呼吸などをしてさらに酸素を取り込んでも、もう入らない。普通に呼吸していても酸素は十分血中に充満する。だから深呼吸で酸素を多く取り込もうとするのは、水でいっぱいのコップにさらに水を注ぐようなもので全く意味がない
二酸化炭素は体内に運ばれる酸素の量を決めている
体内に酸素を運ぶのは血中に含まれている「ヘモグロビン」という物質
ヘモグロビンは酸素という荷物を持って血液中を移動し、臓器や筋肉などにそれを送り届けてくれる。例えるなら体の中の運送業者みたいな感じ。
「血液」という道路を使って「酸素」という荷物を運ぶ
つまりこのヘモグロビンがしっかり働いてくれれば、体内に酸素がしっかりと運ばれる。このヘモグロビンがちゃんと仕事をするためには条件がある。それはは血中に二酸化炭素があるということ
簡単に言うと、ヘモグロビンは血中に含まれる二酸化炭素の量によって仕事量を変える。血中の二酸化炭素量が多ければ、ヘモグロビンはちゃんと酸素を体内に運んでくれる。ところが、
✅二酸化炭素が少なくなると、ヘモグロビンは目的地に着いても酸素を手放さなくなる
要は荷物をお客さんに手渡さなくなる。その結果、組織や臓器筋肉などに送られる酸素も少なくなってしまう
大体の人は二酸化炭素を人間が呼吸した時に出る副産物くらいにしか捉えていないが、実は大事な役割がある。酸素が体内にしっかり運ばれるかどうかは二酸化炭素が決めている
過度な呼吸が倦怠感や疲労感を引き起こす
現代人は呼吸過多な人が多い。口呼吸やいびき、ため息や深呼吸などは過度な呼吸の証拠
呼吸過多には大きなデメリットがある。そもそも呼吸とは酸素を取り込み無駄な二酸化炭素を排出する行動
この時の二酸化炭素の動きに注目してほしい。呼吸が増えればそれだけ二酸化炭素が排出される。すると血中の二酸化炭素量が減る。二酸化炭素が減るから体内に酸素が送られなくなる
体内にしっかり酸素が送られなくなると、疲労感や倦怠感、運動時の息切れに悩まされることになる。現代人が慢性的な倦怠感に襲われているのは、実は呼吸のしすぎが原因
呼吸のしすぎについて考えたことがある人は少ないかもしれない。しかし実はこれこそが現代人の悩みの原因になっていた
鼻は呼吸のためにあり、口は食事のためにある
必要以上に二酸化炭素を排出してしまう口呼吸は今すぐやめて、鼻呼吸に切り替えるようにしよう。そもそも口は本来呼吸をするための器官ではない。だから口で呼吸すると様々な不都合が生じる。健康を損ないたくないなら鼻呼吸に切り替えよう
口呼吸は様々な健康問題を引き起こす。口で呼吸をすると鼻の血管が炎症を起こして腫れてしまう。さらに鼻内部の粘液の分泌も増えるため、鼻詰まりといった症状が出る。こうして「鼻が詰まるとさらに口で呼吸して」と悪循環に陥ってしまう
✅鼻詰まりの原因は口呼吸
健康への被害はそれだけじゃない。口呼吸で空気をそのまま吸い込むと、空気の中に生息している細菌やバクテリアも一緒に吸い込むことになる
それらが直接肺に入って喘息の原因にもつながる。このように口呼吸は病気につながることもあるから、基本的に呼吸は鼻でしよう
鼻にはフィルター機能があるから、これらの雑菌を直接吸い込んでしまうことはない。さらに鼻呼吸をすると吸い込む空気が温まり、冷たい空気を直接吸い込むということがなくなる
つまり呼吸をするのであれば、口よりも鼻の方が向いている
BOLTで自分が呼吸過多になっているかどうかを知る
自分が呼吸型に陥っているかどうかを測定する方法がある。
それが「体内酸素レベルテスト」通称BOLT
✅このテストで自分がどの程度呼吸型になっているかを知り、レベルに合った呼吸トレーニングをすることで正しい呼吸法を習得できるようになる
テストをする時にはストップウォッチを準備しておいてく。まずはテストを始める10分前は安静にしておく。息切れしている状態では正しく測れない
10分経ったらテストを始める。はじめに鼻から普通に息を吸い、鼻から普通に息を吐く。その後鼻をつまんで息を完全に止めよう
そこからストップウォッチを押して、そのままの状態を保ったまま「息をしたい」という最初の欲求を感じるまでの秒数を測る
この秒数を「BOLTスコア」と呼ぶ。ボルトスコアがどれくらいなのかによって、自分の状態を知ることができる
「息をしたいという欲求を感じるまで」というのは「限界まで息を我慢する」ということではない。限界まで耐える必要はない
「息をしたい」と感じたら終了しよう。唾を飲み込みたくなったり、気管が収縮するような感じがしたらサインだと思えばいい
一般的な成人の理想的なBOLTスコアは40秒。これは理想の数値であって、初めは20秒程度が限界という人も多い。このスコアが低くても落ち込むことはない
BOLTスコアはこれから紹介する呼吸トレーニングによって伸ばしていくことができる。トレーニングを続けていれば、いずれは40秒も余裕になるだろう
二酸化炭素のロスをなくす
ここからはボルトスコアを上げるためのトレーニング法について解説。
ステップは全部で3つ
ステップ1は「二酸化炭素のロスをなくす」
まずは生活の中で二酸化炭素を必要以上に逃さないように心がけよう。具体的には、
✅起きている時も寝ている時も常に鼻呼吸を心がけよう
「寝てる時は呼吸を意識できない」という人は口にテープを貼っておくといい。そうすれば口呼吸ができなくなって自然と鼻呼吸になる。寝ている間のいびきや口呼吸が気になる人はぜひ試してみてほしい
あとは自分の1日の呼吸量を観察してみるのもいい。ため息やあくび話す時などにかなり多くの呼吸をしていることに気づくだろう
ため息をすると一気に呼吸量が増える。話す時もまくし立てるように話すと呼吸量が増えるから、なるべく呼吸を増やさずに済ませられる省エネな話し方に切り替えよう
「軽い呼吸は正しい呼吸エクササイズ」を行う
ステップ2は「軽い呼吸は正しい呼吸エクササイズを行う」
「軽い呼吸こそが正しい呼吸だ」と認識するためのエクササイズ。
このエクササイズを行えば、二酸化炭素への耐性を高めることができる
このエクササイズは鏡の前に座って行うのがおすすめ
まずは背筋を伸ばして肩の力を抜こう。
片方の手のひらを胸に当て、もう片方をおへそのすぐ上に当てる。こうすると息を吸うときはお腹が膨らむのを感じ、吐くときはお腹がへこむのを感じられるだろう
次に息をしながらお腹を手で優しく押して呼吸への抵抗を作る。手を押し返すように呼吸をして息をするたびに、だんだんと呼吸を小さくしていく
こうやって呼吸の大きさやペースを小さくしていって、我慢できるレベルの息苦しさにする。リラックスしながら小さく呼吸を繰り返す
はじめはちょっとやるだけでも結構苦しいかもしれない。ただこのエクササイズを続けていれば、だんだんと二酸化炭素への耐性が高まって浅い呼吸でも苦しいと感じにくくなる
目標としては、これが3分から5分ほど続けられるようになるまで頑張ってみよう
疑似高地トレーニングを行う
ステップ2まで終わったら、最後はステップ3「疑似トレーニング」に挑戦してみよう。このトレーニングを10~15分程度行うだけで、酸素の少ない高地でトレーニングをするのと同じような効果が得られる
しかも時間も場所も選ばないから、いつでもどこでも行うことができる
このトレーニングは歩きながら行う。まずは1分間普通に歩いて、その後鼻からゆっくりと息を吐いて鼻をつまんで息を止める
そのまま中~強程度の息苦しさを感じるまで息を止めたまま歩く。苦しくなったら手を離して鼻から息を吸い、15秒間は呼吸を最小限にして普通の呼吸に戻す
今のが終わったら鼻呼吸をしながら30秒ほど歩いて、もう一度今の息止めをする
これを8~10回ほど繰り返す
やることは簡単だが、実際にやると結構苦しいだろう。まずはステップ1から始めて、徐々にトレーニングの強度を上げていこう
この疑似高地トレーニングになれると、少ない酸素でたくさん活動できる効率のいい体を作り上げることができる。そうなれば二酸化炭素を必要以上に失うことがなくなり、酸素を効率よく体に取り込めるようになって体のパフォーマンスも上がっていくだろう
まとめ
人間は生きている間常に呼吸している。それが自分に何の影響もないと考える方が不自然。呼吸法を変えるだけで健康状態やパフォーマンスは大きく変わる
今回紹介した呼吸トレーニングを続けて正しい呼吸法をぜひ身につけてほしい。まずは自分のボルトスコアを測るところから始めてみよう
感想
私はアレルギー性鼻炎で寝ても覚めても鼻が詰まっていることが多いため、とても参考になりました。口呼吸が鼻詰まりの原因になるというのは、なんとも耳の痛い話です。
ここで私からも鼻呼吸に関するおすすめの方法を一つ。口の中に水を入れて維持しておくと、口が開けられなくなり自然と鼻呼吸になるのでおすすめです。口の中が不快に感じない程度に試してみてください。
まずはBOLTスコア計測をやってところ20秒でした。「軽い呼吸は正しい呼吸エクササイズ」もとても簡単にできるため、ぜひやってみてください。