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マルチタスクは万能ではない

序 山紫水明の理

 「この人、マルチタスクができる人だな」

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1. 三原色

 仕事をしていると時々、そんなことを思わせる人に出会うことがあります。経験や慣れでできるようになった人、思考錯誤した末にその方法を見出した人、なぜか最初からサクサクできる人など、様々なマルチタスクプレイヤーがいますね。

 経験や慣れでできるようになった人は、いわゆる「体で覚えた人」です。作業を繰り返すことで体がその動きを覚え、「成熟」した人です。

 思考錯誤した末にその方法を見出した人は、体で覚えつつ、今より良くなる方法を「頭で考えた人」です。「努力」した人ですね。

 なぜか最初からサクサクできる人は、その仕事に「合っている人」です。覚えようとしなくても考えなくても、仕事ができる。「素質」のある人です。

 マルチタスクプレイヤーは「成熟」「努力」「素質」の3つの要素が元になって作られています。表面上は同じマルチタスクプレイヤーに見えますが、内面は全然違う要素から成り立っているのです。3つの要素がどれくらいの割合で、その人を構成しているかは人によって全然違うでしょう。

 どの要素がどれくらいの割合であるかは問題ではありません。なぜなら、3つともマルチタスクができることに「変わりはない」からです。結果、マルチタスクができているのですから、体で覚えたか、頭で考えたか、素質があるかないかなどは気にしなくていいことです。ただ、こういう言い方をすると「結果さえ良けりゃ経過はどうでもいいのか」なんて声も聞こえてきそうですが、そうは言っていません。

 少し話は逸れますが、先にこの話をしましょう。

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2. 堅牢と柔軟

 ビジネスは「目的」「経過」「結果」の3つの要素から成り立っています。個人的には出たとこ勝負の仕事もかなり好きですが、ほとんどの場合、「目的」を決めるところから始まります。目的を定め、計画を練り、たどり着くための作業を進めていき(経過)、それに見合った報酬(結果)を得ます。

 しかし、計画通りの結果が出れば誰も苦労はしません。何事もそうですが、「予定通りの結果が出ない」ことが多々あります。その時、2つの「道」があります。

 1 結果が良くなるまで、計画を変えずに突き進み、目的を目指す
 2 計画を変えて、結果が良くなる道を選び、目的を目指す

 1をやる人はおそらく「意志の強い人」なのでしょう。ちょっとやそっとの困難ではくじけません。軸がブレないので、その人について行く人は「安心感」を得られることもあるでしょう。反面、融通が効かないので、他人の意見を取り入れないようなところがあります。意志を貫く姿勢なのはいいことかもしれませんが、ただ単に「意地を張っているだけ」のこともあります。

 2をやる人は「臨機応変な人」だと思います。予想外のことが起こっても、柔軟に対応します。計画の変更も気にせずやる人です。反面、「優柔不断」だと捉えられることがあります。ついて行く人からは「頼りない」と思われることもあるでしょう。しかし、結果を出すためには様々な障害を乗り越え、計画を変更しなければならないことがあると、分かっている人でもあります。

 それぞれの「視点」を変えると、

 1は「計画の変更はしない」ので、結果よりも経過を重視しています。そのため、「この道で目的にたどり着けない人を淘汰していくやり方」とも言えます。

 2は「計画の変更も辞さない」ので、経過よりも結果を重視しています、そのため、「どの道をたどろうが目的に到達できる人を探すやり方」とも言えます。

 1にしろ2にしろ、利点と欠点がありますね。それぞれの長所短所を見極めて、仕事を進めて行くことが大切だと思います。

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3. 十人十色

 話を元に戻しますが、前述した「マルチタスクができるなら、要素の割合は気にしないでいい」とは、「2」のパターンに当てはめることができます。仕事の「計画」の部分が「3つの要素」、「結果」の部分が「マルチタスク」と置き換えられます。

 仕事..計画変更→結果が良くなる道を選ぶ→目的にたどり着く

 マルチタスク..3つの要素の割合は人それぞれ→結果に通じる道をそれぞれ選ぶ→マルチタスク習得

 こうなります。その人が一番「行きやすい道」を選ぶことで、目的に辿り着かせるのです。「マルチタスクができるなら、要素の割合は気にしないでいい」とは、「結果さえ良けりゃ経過はどうでもいい」のではなく、「結果にたどり着く道は人それぞれ違うものだ」という意味です。

そして、これを一番理解していないといけないのは、マルチタスクを部下や後輩に「教える人」です。上司や先輩のことですね。

 相手によって、教え方を「変えなければならない」のです。

 しかし、相手によって教え方を「変えない」人がいます。その人はおそらく真面目な人です。では、どのように真面目なのか。それは「平等に扱わなければならない」と思っているのです。相手によって態度を変えるなんてダメだと思っているのしょうね。

 では、「平等」って何のことでしょうか。平等とは何を軸にするかで、変わってきます。「誰でも同じように扱うことを平等」だと言っていますが、ということは「結果が違う人同士も平等に扱う」のですか? 結果が違うのに?

 結果が違うものを平等には扱えませんよ。結果の良し悪しによって、扱い方を「変える」のが、本来の平等です。しかし、ということは「結果を出す道は人それぞれ違っていても良い」ということです。

 結果によって扱い方が違っていいのですから、結果を出す道も違っていいと思いますが、あなたはどう思いますか。

 今一度、考えてみてください。

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まとめ

 子供の頃にやったゲームでは「ステータス」が見れました。いろんな能力が誰でも分かる「数字」で表されていたと思います。しかし、現実の世界では人のステータスは数字では表せないものです。身体能力や健康状態などは数字で表せたりもしますが、個人の仕事の習熟度や効率、努力値などは数字では簡単に表せません。

 相手、そして自分の「性質」を見極めてください。




破 清風明月の生

 仕事において、「ひとりでできるもん」は必要ない。

1. 手順

ここに3つの仕事があります。a.b.cの3つです。
それぞれに手順(1・2・3)があります。

 a.b.cの仕事を進めていく時、α(1つ1つ順番にやる人を3人使う)とβ(全部を同時にやる人を1人使う)の方法があります。

α. 1つ1つ順番にやる人を3人(X.Y.Z)使う。

 X-a 1→2→3
 Y-b 1→2→3
 Z-c 1→2→3

 メリット:それぞれの仕事を手順通り進めることができる。
 デメリット:作業人数を多く取られる。 

β. 全部を同時にやる人を1人(S)使う。

 S-a ①→2→3
      -b 1→②→3
      -c ①→②→3
*①と②は「省く」って意味です。手順を省略しているので、Sの作業は実際には、

 S-a   2→3
      -b 1  →3
      -c     3
上記のようになります。

 メリット:1人で作業できる。手順を省くので1つ1つにかかる時間は短い。
 デメリット:手順を省くので非正規の作業になる。

 簡略化した図式ですが、ほとんどの仕事はこの2つの形のどちらかに当てはめられるはずです。

 ここで、手順1つに1分の時間がかかるとします。aの作業だと1・2・3の手順それぞれに1分の時間がかかるので、合計3分かかります。b.cも同じですね。つまり、a.b.cの作業をX.Y.Zが同時に始めた場合(αのパターン)、3分で仕事が終わります

 反対に、Sのように1人で手順を省きながら仕事を進めた場合(βのパターン)、実際にやる仕事は「a-2・3、b-1・3、c-3」の5つなので、5分で仕事が終わります

 つまり、αとβの仕事が終わるまでの時間を比べた時、どんなに仕事の速いマルチタスクプレイヤーでも、3人で同時に仕事を進める方には敵いませんね。

 人手不足の状態が当たり前になっている現代社会では、3つの仕事に3人使うなんて贅沢はできないかもしれません。しかし、もし3人使えるのであれば、αのように仕事を進めるのが当たり前です。3人それぞれに仕事を振り分け、1つの作業に集中してもらうことで、効率よく仕事を進めます。

2. 得手不得手

 では、人手不足で3つの仕事を、1人でやるしかない場合はどうでしょうか。Sのようにマルチタスクが「できる人」であればいいのですが、「できない人」もいます。できないことは問題ではありません。なぜなら人間は、

 算数はできないけど、国語はできる。
 短距離走はできないけど、長距離走はできる。
 サッカーはできないけど、書道はできる。

などのように、得手不得手があるからです。これらに得手不得手があるのですから、マルチタスクに関しても得手不得手があるのは当たり前です。では、できない人(Q)はどうやって仕事を進めたらいいのでしょうか。

 答えは簡単です。1つずつ順番にやっていけばいいだけです。

 複数を同時にはできないのであれば、1つずつ順番にやればいいのです。何も問題はありません。なぜなら本来は3人でやる仕事だからです。3人でやる仕事を1人にやらせるなんて、どんな外道が仕切ってるんだろと思いますが、人手不足が当たり前の社会では、仕方のないことかもしれません。

 では、マルチタスクが「できない人(Q)」はどんな仕事の進め方になるのか。これも図式(γ)にしてみましょう。

γ. 1つ1つ順番にやる人を1人(Q)使う。

 Q-a 1→2→3
        -b 1→2→3
              -c 1→2→3

 上記のようになります。文字通り、仕事を1つ1つ順番に進めていきます。9つの仕事があるので、作業時間は9分かかるということです。αの3倍、βの1.8倍の時間がかかっています。しかし、Sのように手順を省くなどはしませんので、非正規ではなく、正規の仕事になります。

3. 比較

 ではここでもう一度、「X.Y.Z、S、Q」の性質を並べて比較してみましょう。

 X.Y.Z ..多人数が必要だが、手順通りでも負担は少なく、時間もかからないが、正規の仕事になる。

 S ..1人でできるし、手順を省くので負担も少なく、時間はかからないが、非正規の仕事になる。

 Q ..1人でできるが、手順通りなので負担は大きく、時間もかかるが、正規の仕事になる。

 このように、それぞれにメリットとデメリットがあることが分かると思います。この中でマルチタスクプレイヤーと言えるのはSだけですが、並べて見てみると長所と短所があることが分かると思います。

 一般的に、Sの人を「仕事のできる人」だと捉えがちですが、その原因は「X.Y.Zより少ない人数で仕事ができる」「Qより短時間で仕事ができる」などの、メリットの部分しか見ていないからです。

まとめ

 複数の仕事を一人でやることを、野球で例えるなら「ファーストとセカンドを一人で守る」ことと同義です。そんな選手や、そんなポジショニングでやっている試合を見たことありますか? 非公式の遊び程度の試合なら、そんな試合もあったかもしれません。

 しかし、仕事は仕事であって遊びではないのです。必要なポジションに必要な人数が揃っていないと、試合は成り立たないのと同じで、仕事にも適正人数があるのです。

 人手不足ということは、適正人数が揃っていないってことですよね。適正人数が揃っていないのですから、Sのように手順を省いたり、Qのように時間がかかることが当たり前です。

 SやQが「仕事の質」で、X.Y.Zに勝つことはないのです。意地になっていつまでも、「ひとりでできるもん」をやる必要はないってことです。




Q 行雲流水の刻 

マルチタスクは基礎次第で、誰でもできます。その基礎についての話です。

1. 整理整頓

 しかし、とは言っても、やはり基礎能力は高いと言えます。一般の人と比べて頭の回転が速いのでしょう。そこは才能なのか努力なのか、はたまた成熟したのか、見極めなければなりません。

 才能が起因になっているマルチタスクは、なかなか会得することは難しいと思います。その才能がないといけないので。ただ、才能があるかないかを判断することもまた、難しいんですね。いろんな能力テストがありますが、それでも100%当てることはできません。

 では、才能の有無はひとまず置いておいて、誰でもある程度のレベルに到達できる方法を教えましょう。実は、マルチタスクって誰でもできる能力なんですよ。分かりやすく例えると自転車の乗り方や、泳ぎ方と同じです。得手不得手はあるでしょうが、(障害などの場合を除き)全くできない人はほとんどいないと思います。

 どんなものにも基礎練習があります。仕事でもスポーツでも勉強でも、基礎から積み上げていくものです。では、マルチタスクの基礎は一体何なのか。それは、「整理整頓」です。

 ビジネスマンとして働いていく中で、一度は「仕事をタスク毎に分けろ」などと言われたことがあると思います。仕事の種類、期間、優先度などによって区別していく作業です。それが、マルチタスクの第一歩になっているのです。

 小学一年生の頃、先生や親に「整理整頓しなさい」と教わったことがあるでしょう。それをやればいいんです。小学一年生が習うことなので、大人のあなたはできて当たり前ですよね。今更、「整頓できてないじゃないか」なんて注意はされませんよ。できて当たり前です。

 タスクを分けて、整理整頓することによって、その仕事を終わらせる方法が見えてきます。終わらせる方法はタスク毎に違います。というより、方法が違うからタスクに分けたのです。

2. 優先順位

 さらに、タスク分けをすることにより、それぞれの仕事の中で、3つに細分化することもできます。その3つとは、

 1. やるべき仕事(must)
 2. やった方がいい仕事(if can)
 3. やらなくてもいい仕事(no need)

 この3つです。上から順に作業の優先順位が高くなります。ここで、勘の鋭い方は気付いたと思いますが、マルチタスクプレイヤーは優先順位の高いものから作業しているのです。

 ほとんどのタスクで「1」しかしていません。やっても「2」までです。「3」なんて眼中にありませんね。古い言い方をすると「Out Of 眼中」ってやつです。およそ20年前に、JKを中心に流行った言葉..まぁその話はいいでしょう。

 つまり、マルチタスクプレイヤーは、

 1. 仕事をタスク毎に分ける(整理整頓)
 2. やるべき仕事を見極める(優先順位)

 この2つをやっているのです。ここで大事なことは「整理整頓してから優先順位を決めている」ってところです。間違っても「優先順位を決めてから整理整頓している」わけではありません。

 いろんな人がここで間違えるんです。マルチタスクって言ってるくらいなんだから、タスクに分けることを最初にやるんですよ。それなのに、整頓してないものに順番をつけていくってことは、ぐちゃぐちゃになっている仕事の中から、自分のやりたいことを優先しているだけになるのです。

 つまり、マルチタスクができない人は、整理整頓ができてない上に、優先順位のつけ方が間違っているのです。マルチタスクなんか永遠にできません。当たり前ですよ、積み上げ方を間違えているのですから。

3. 積み上げ

 ということは、積み上げ方さえ間違えなければ、誰でもできるようになるってことです。積み上げ方をまとめると、

 1. 仕事の種類、期間、優先度を見てa. b. c などに分ける。
 2. a. b. c それぞれの中で「must」「if can」「no need」に分ける。

 この順番通りにやればいいんです。それだけです。いや、ホントにこの通りにやればできますよ。信じられないというなら、実際にやってみてください。仕事の種類を分け、mustの仕事だけに焦点を当ててください。

 マルチタスクができない人は総じて、目が泳いでいるんです。焦点が合ってないんですよ。それは「何から手をつければいいか分からないから」です。しかし、上記のように整頓してみると、「何から手をつければいいか分かる」ようになるのです。

 いろんな仕事がぐちゃぐちゃに混在している状態だと、何から手をつければいいのか分からなくなりますし、自分好みの仕事に目が行くのは当たり前です。しかし整頓してみると、やるべきことが鮮明になります。簡単な例を出すと、

 α. b 1 Y 3 a Z 2 c X
 β.    a b c 1 2 3 X Y Z

 αとβではどちらが見やすいですか。αは3種類がぐちゃぐちゃになってますね。何のことだかさっぱり分かりません。反対に、βは種類毎に分けられています。理想を言うなら、各種類の間は1マス開けてほしいところですが、これでもαよりは見やすいと思います。

 βのように分けてから、bよりもaを、2よりも1を、YよりもXを優先してやればいいだけです。9つの仕事全てをやる必要はなく、優先順位の高い3つをやればいいだけです。9つ全ての仕事を同時にやろうとすると、全てできません

 「マルチタスク」の意味は、全ての仕事を同時にやるという意味ではなく、仕事を整理整頓して、優先順位をつけてやるという意味です。

まとめ

 さて、ここまで見てみると「マルチタスクってそんなに万能じゃないんだな」ってことが分かったと思います。それと同時に、会得する足掛かりも見えたと思います。見えたはずです。

 マルチタスクは、側から見ているとなんでもできる感満載に映りますが、そんなに大したことはやってないんです。

 大したことありませんが、できるようになるとカッコいいです。左手で△を書きながら、右手で□を書くイメージですね。音楽をやっている人はこの練習をしたことがある人もいるでしょう。

 仕事はビートを刻み、グルーヴに乗って、踊りながらやるものですよ。




〜序破Q〜

 1.「割り込まないで、順番に並びなさい」
 2.「散らかさないで、片付けなさい」

 子供の頃、親に言われた言葉ですね。順番を待たずに横から割り込んだり、部屋を散らかしたりすると、こんな感じで叱られました。

 今はもう大人ですので、こんなことは言われませんし、言っている親の気持ちも言葉の意味も分かると思います。当時の親の気持ちを考えると「散々、イライラしたんだろうなぁ」と思ったりもしますね。

1. 割込み

 さて、ここからが仕事の話になります。仕事の「仕方」に、複数のことを同時に行う「マルチタスク」があります。実は、このマルチタスクは上記の2つに反するのです。

 これはマルチタスクができる人を否定したいわけではなく、あくまでマルチタスクそのものについての話です。「マルチタスクにはこういう性質がありますよ〜」って話です。例えば2つの作業「α. β」があるとします。それぞれに作業の順番があります。

 α..a. b. c.
 β..x. y. z.

 マルチタスクでこの2つの作業を同時に行う時、それぞれの作業を交互にやります。「a. b. x. y. c. z.」や「x. a. b. y. z. c.」などの順番で作業します。

 しかし、αの作業順序から見たら、βの作業である「x.」などが途中で入ってきていることになります。

 これが「割込み」です。

 上記の「1」に反してしまいます。割り込まないで、順番にしなきゃいけないのに、マルチタスクをすることで、順番を守らず割込むことになってしまうのです。 

 子供の頃に習ったことと矛盾してしまいますね。

 ただ、この場合は、割込まれているとは言っても「α. β毎の順番」は守られています。αはa. b. c.の順番、βはx. y. z.の順番になっています。

2. 散らかし

 では次に、α. β毎の順番さえ守らないならどうなるでしょう。マルチタスクとは「複数のことを同時に行うこと」なので、当然、順番を守らないこともあり得ます。

 「b. z. x. c. y. a.」や「y. x. a. z. c. b.」など、パッと見ると無茶苦茶な順番で作業することになります。

 これが「散らかし」です。

 α. β毎の順番さえ守らず、ぐちゃぐちゃに作業しています。これは上記の「2」に反しますね。本人はマルチタスクをしているつもりでも、周りから見たら散らかしているだけのように見えます。

 料理や建築のように、作業の順番が絶対に変わらないものがあるのに、他の仕事になった途端、急に順番がなくなり無茶苦茶に進めていきます。

 順番通りに、あるいは「割込み」さえ嫌ならαが終わってからβをやるなど、何もマルチタスクにこだわる必要はありません。

3. 欠陥

 このように、マルチタスクには欠陥があるのです。何より子供の頃に習ったことと矛盾しています。

 マルチタスクをやっていると、仕事以外の日常生活でも割り込んだり、散らかしたりするようになります。人は「習慣の生き物」なので、仕事で割込みや散らかしをしているなら、日常生活でやってもなにも不思議ではありません。

 「自分の方を優先しろ」
 「片付けなんか他の人がやればいい」

など、自己中心的な考えに陥ってしまうこともあると思います。これでは、とてもじゃありませんが、大人(社会人)とは言えないでしょう。むしろ、私の目には「子供」のように映ります。

 大人であるあなたは、こんなことはしませんよね。

 複数のことを同時にやっているのを見ると、「カッコいいな」と思うこともありますが、一歩間違えば「ダサい」ことにもなるのです。

まとめ

 今回は「マルチタスク」に関して、否定的な見方をしましたが、先述したように否定したいわけではありません。ただ、マルチタスクができないことに劣等感を抱いている人たちがいます。そんな人たちの目には、マルチタスクは万能のように映っているのでしょう。

 確かに万能なところがあることは否定しませんが、本文で述べたように短所はあります。どんな物事も表裏一体、2面性があります。

 万能な面ばかり見て、短所である「割込み」や「散らかし」が見えていないのかもしれません。そんな人たちが抱えている劣等感は、実はそんなに気にすることはないものなんだということを言いたかったのです。

 人は十人十色、千差万別です。ですから、個々の能力に一長一短があるのは当然でしょう。

 足りない部分を補い合える社会を目指したいものですね。




*参考書籍*
 ・ホワイト企業創生論〜陽気発する処、金石も亦透る〜
 ・ブラック企業殲滅論〜『親と月夜はいつもよい』助けて、お母さん!〜

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