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コンサルタントSF

ある惑星は住民が「コンサルタント」と「営業」と「コメンテーター」だけで構成されていた。

宇宙の平均値からすると非常にうるさい星だった。また「生産性」という言葉がよく使われるにも関わらず、その惑星の生産性はほぼゼロという異常な星だった。

ある時、営業とコメンテーターはコンサルタントを星から追放することを決定した。理由は一際うるさかったからだ。

確かにコンサルタントのうるささは桁外れだった。かつてあるコンサルタントの脳が身体と分離してしまう不幸な事故があったが、それでもその口は永遠に経営改革の必要性を語り続けていた。

また、コンサルタントの脳を忠実に再現したシミュレーションで全ての会話パターンを出力した結果、いかなる条件下においても「分かりません」、「弊社より他社の方が優れています」、「御社は完璧です」という3つを絶対に発さないことが分かった。たとえシミュレータがバグっても絶対に発さなかったのである。
この結果からコンサルタントは、わからない問題に直面した時、自分たちより優れている者たちが存在するとき、そしてクライアントが助言の必要がなかったときに誠実さを示す術を持たないことが分かった。

これを目の当たりにした営業とコメンテーターはある種の信仰に近いものを感じた。と同時にやはり自分たちとは異質なものであるとの確信を強めた。

コンサルタントを惑星から追い出すことは非常に簡単だった。まず脱出ポッドを3種類作る。1つは非常に高級・高性能だが操作性が難しく、高度な知能を要求し、選ばれしエグゼクティブ・エリートだけが乗るべき乗り物だと説明する。あとの2つは凡人とのろまの乗り物だと説明した。この2つはただの張りぼてだ。

あとは惑星が滅亡するストーリーをでっち上げた。彼らから教わったようにコメンテーターが無意味に分厚い報告書を書き、営業がちょっと多すぎる程度にグラフを添付した。参考文献もたんまり盛り込んだ。

効果はてきめんだった。コンサルタントは非常に遠慮がちながらも、高性能ポッドに乗るのは自分たちであるべきことは火を見るよりも明らかであると主張した。残された者たちはいかにもその通りであるというように振舞った。

追放は首尾よく実施された。計画通りにいかなかったのは、前のめりのコンサルタントたちがまだカウントダウン中なのに発射ボタンを押してしまったことくらいだった。

営業とコメンテーターは惑星に残った。彼らは自分たちで考えていたことを行動に移し始めた。彼らは農家と職人に分かれた。彼らは協力し、話し合い、物を融通しあった。必要とあれば互いの持ち物を批評しあい、足りないものを付け足し余分なものを引いていった。そういうことに時間を費やしていた。誰も生産性やら経営改革やら言わずにまともでいることができた。

コンサルタントたちは経営改革の必要性と多額の予算が必要であることを宇宙空間に向かって説いていた。

この惑星の平和は、次のコンサルティングファームが結成されるまで続いた。

あなたの惑星にもコンサルタント星人がはびこっていないだろうか。


※自分の旧ブログ(以下URL)から引用
https://chargex.hatenablog.com/entry/2019/10/14/193940

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