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670円の幸せ

金曜日の夜は、外食でもしたくなる。

おしゃれなお店のディナーでワインを飲んだり、居酒屋で焼酎でもいい。

とにかく老いも若きも、休日前の開放感ですこし贅沢でもしたくなる。

まあ、私はひきこもりなので毎日が休日なのだが…。それでも金曜日の夜にはハメを外したくなるものだ。

私は今日、マックに行った。マクドナルド。関東の埼玉県に住んでいるので、うまれてからずっと呼び名はマック。

もしかしたら、一番食べているファストフードかもしれない。もう一生マックしか食べられないと言われても、困らない。そんな程度にマックが好き。

今日のオーダーは、てりやきマックバーガー、ポテト、コーラ。まさに一軍選手、ジャンクフード代表みたい。

お値段670円。

あれ、こんなに、高かったっけ?と、思いつつもお支払いをした。まあ、このご時世だもの、値上げは当然。そもそも都内のディナーに比べたら安いもん。

本当は店内で食べたいところだが、のっぴきならない事情により、私は座ることが出来ない。そのため、テイクアウトした。

店内は混み合っていた。ちらりと、奥を除くとスタッフが20人くらい居て、どの担当も忙しそうに働いていた。

ピロリ、ピロリ、ピロリという、誰もが知っているポテトが揚がる音は、絶えず聞こえている。

最近は色々大変そうだ。ドライブスルーはもちろん、モバイルオーダーにウーバーイーツ、文明が発達して便利になったゆえに、仕事の量も増えているように見える。

これは人件費も上げなければ、値上げは当然だなってぼんやり思った。 

私のすぐ後ろに、5歳くらいの男の子とお母さんがいた。スーツのお母さんは恐らくお仕事帰り。一週間頑張った、そんな顔をしていた。
そして、保育園か幼稚園か。5歳くらいの男の子も無事に一週間過ごせたことに誇らしげな表情をしていた。ラッスンゴレライを小さな声で歌っていた。明日の休みが嬉しいのだろう。二人は笑顔で何を食べようか話をしていた。

普段ならお母さんは息子に向かって『静かにしなさい』『はやくしなさい』って言うんだ。きっと。でも、明日は休みだから、という心の余裕で迷っている息子を急かすこともなく見守っていた。

その余裕が、おそらくマックへと足を運ばせたのだろう。

それはほんの些細なことかもしれない。それでも、この親子を少し幸せに出来る。特別な仕事ではないかもしれない。それでも、人々を笑顔に出来るお仕事だ。マクドナルドは素敵な仕事だね。

家までの道のりは、徒歩5分。

真っ暗な道をトコトコとひとり歩く。車のライトがキラキラとしていて、それがまた浮かれているように見えた。まさに金曜日の夜だけの魔法のよう。

鼻歌さえ、歌い出しそう。

家に着き、テーブルにマックのビニール袋を置くとお決まりのポテトがテロのように鼻を攻撃してきた。

お腹はペコペコ。よだれが零れ落ちそうだ。手を洗いうがいをする、その時間も惜しい。

食べ方にこだわりなんて無いけど、やっぱりまずはポテトだよね。

揚げたてのポテトはまだアツアツ。ぱくっと一本口に入れると、いつもの塩気のきいた揚げたイモの味。昔からずっとかわらない、おふくろの味みたいなポテト。

うま。

もう反射。何度も何度も食べて知ってる味。何回食べても美味しい。家では出せない味なんだよね。全く同じにはならない。不思議だ。

こんなこと言うと怒られるが、ただの揚げたイモ。それがこんなにもうまい。

創業者のレイ・クロック、マクドナルド兄弟。生まれてくれて、マックをこんなにも大企業にしてくれて、ありがとう。

口の中にポテトが広がると、すかさずコーラを流し込む。甘くて炭酸でしゅわしゅわすると、今までのしょっぱいポテトの味が一瞬でかき消された。

次にリセットされた口腔の中に放り込むのは、てりやきマックバーガー。
てりやきのタレとマヨネーズのコンビネーションはもはや、奇跡としかいいようがない。

ぱくぱく食べ進めると出てくるレタスが絶妙。このパンも、なんでこんなに美味しいの?

てりやきバーガーって確か、日本オリジナルじゃなかったっけ?調べてみたらチキンナゲットの生みの親であるフィリップ・ルネ料理人のアドバイスの元できたものらしい。

チキンナゲットもめっちゃうまい。いつもバーベキューソースにするかマスタードソースにするか迷う。バーベキュー2回、マスタード1回くらいの割合で頼んでる。
たまに出る季節限定味も悪くないんだけど、やっぱりナゲットといえば、バーベキューかマスタード。もはや細胞レベルで私に染み込んでる味だわ。

天才料理人フィリップ・ルネ。生まれてくれてありがとう。マックに力を貸してくれてありがとう。本当に感謝しかない。

この時代に生まれたことが幸せ。こんなに美味しいものを開発してくれて嬉しい。そして670円でこんなにも幸せになれる。マクドナルド最高。

ほんの数分のお食事タイムは、あっという間に終わってしまった。少し寂しいけど、お腹も満腹でもう眠い。

食後すぐに眠るのは、太るし良くない。そう思っても金曜日の夜だし。休日の前の日だし。少しくらいいいよね。

さあ明日は、どんな楽しいことが待ってるかな。朝マックでも買ちゃおうかな。

#創作大賞2024 #エッセイ部門

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