マトリクス組織におけるスモールチーム駆動を推進するドキュメント構築
はじめに
これは、MIMIGURI AdeventCalender2022Day19の記事です。
MIMIGURI AdventCalendar2022とは、株式会社MIMIGURIのメンバーが以下添付画像に記載のある6つのキーワードをもとに記事を書いていく企画になります。
株式会社MIMIGURIについては、Co-CEOのミナベさんの「結局、MIMIGURIとは何の会社なのか?」というnoteをご確認ください。
自己紹介
はじめまして、株式会社MIMIGURIの組織人事部/HRBPを担っている横川と申します。主な管掌領域業務は以下の通りです。
人事制度の構築/運用
目標管理制度の構築/運用
コンサルティング事業部の組織ロードマップの構築/運用
コンサルティング事業部の採用/育成
この記事の概要
選択したテーマ
この記事のテーマは「理論と実践」及び「学習」になります。
必要読書時間
5分前後でお読みいただけると思います。
記事内容サマリー
経営の多角化を推進していく中でパフォーマンスを高めるためにはマトリクス組織が必要になる場面がやってくる
マトリクス組織というフレームには構造の複雑性に起因する問題がしばしば起こる
その問題への一つの解決策としてドキュメント構築があると考えている
記事本文
そもそもマトリクス組織とは
マトリクス組織とは、組織フレームの一種になります。
マトリクス組織は、他の組織フレームである「機能別(職能制)組織」、「事業部制組織」を組み合わせ、管理ラインを2つ以上設けることで両面のメリットを追求する一方、組織構造の複雑性を受け入れる組織フレームです。
つまり、横断組織を構築し、全社最適を行うことで規模経済がうまれるが、部署ごとの調整コストが高まり、高い接合能力が求められる組織フレームになります。今後、上記特徴があることから経営の多角化を推進していく中でパフォーマンスを高めるためにはマトリクス組織が必要になる場面が多くなってくると考えています。
マトリクス組織の具体デザイン、詳しいメリット/デメリットはそれぞれ以下引用をご確認ください。
また、マトリクス組織をはじめとした組織フレームを詳しく学習したい方はMIMIGURI Co-CEOミナベによる「組織デザイン概論」をご覧ください。
具体デザイン
メリット/デメリット
マトリクス組織内のスモールチームに起こりがちな事象
ここでは前述であるマトリクス組織のデメリットを踏まえ組織内スモールチームで具体的に起こりがちな事象を「おばけ」と名付けていくつかご紹介します。(なせ「おばけ」にしたのかわかりません)
自律的な意思決定阻害おばけ
マトリクス組織では、管理ラインが複数存在し、横断的な資源をどう活用/再配置するかという複雑な調整が必要になります。例えば、事業計画を達成するためには資金や人材の確保、横断にまたがるデータベースやプラットフォームなどの活用が必要になります。しかし、隣の事業部と利害相反があり、リソースを確保することができませんでした。結果として、意思決定を遅らせたり、「自律的な意思決定を阻害するおばけ」が登場してしまいます。
アジリティ下げるぞおばけ
マトリクス組織では、情報伝達系統や指示系統が複雑に存在し、優先順位の頻繁な調整が発生しやすくなります。例えば、組織内のスモールチームに属している人がその調整業務の中で何に向き合えばいいのか分からなくなったり、事業部の個別最適の都合と横断組織の全体最適化の都合の狭間の中で、どっちを向いて仕事をしたら良いか分からなくなるという状態に陥ることがあります。結果として、「アジリティ下げるぞおばけ」が登場していまいます。「アジリティ下げるぞおばけ」を放置すると「組織を硬直化するぞおばけ」に進化?します。
MIMIGURIのスモールチームで登場したおばけ(実際に起った事象)
MIMIGURIでも実際におばけが登場しました。「自律的な意思決定阻害おばけ」と「アジリティ下げるぞおばけ」です。
具体的には、ボールの置き場(責任の所在)がわからなくなった結果意思決定が遅延したり、個別最適及び全体最適を考えるからこそ何をイシューとするのかが分からなくなっていました。
この頃夢におばけが出てきました。(夢のおばけ「は」可愛げがありました)
いざおばけ退治(実際に起った事象に対する解決策)
結論として、期待する役割と責任及び不確実性/わからなさの共有化を軸としたドキュメンテーション開発によるおばけ退治を行いました。
ドキュメント化することで、情報の可視化やログを蓄積することにより行動の観測を可能にしたり、更には不確実性/わからなさを表に出すことにより失敗のコントロールが可能になる(≒アジリティ向上)と考えています。
具体的なドキュメンテーション/項目はそれぞれ以下に記載します。
(前提、おばけ退治方法はそのおばけの性質や出現場所によって様々です。事象を総合的に見立て、センターピンを立て、最もROI観点が高いであろうアウトプットしていくことがおばけ退治には重要だと考えています。)
ロードマップ
ロードマップには以下のことが記載されています。
事業/組織/チームロードマップ
中長期(2年~5年)をスコープに、四半期~半期毎で達成したい状態を記載します。Goal設定
上記ロードマップの状態を達成するために必要なGoalを記載します。主要戦略
上記Goalを達成するための戦略を複数記載します。戦術と実行責任
上記主要戦略を達成するためのWhat/Howをそれぞれのオーナーに分配し、記載します。
スモールチーム仕様書
スモールチーム仕様書ではロードマップの内容に準じた以下のことが記載されています。なお、記載内容が多いので親子の関係でドキュメントを分けても良いかもしれません。
期待と役割と機能の位置付け
該当スモールチームが持つ、期待と期待に準ずる役割(機能)定義を記載します。提供価値
上記期待と役割(機能)に準ずる提供価値を記載します。
例)誰の、どんな課題に、何ができ、どんなインパクトを生むかスモールチームOKR
該当四半期~半期に準ずるスモールチームのOKR(OKRでなくとも、同粒度感のもので良いと思います)を記載します。ロードマップにおけるGoalと主要戦略と言い換えても良いかもしれませんイシューBox
スモールチームや横断推進におけるわからなさや不確実性を記載します。Focus内容
イシューBoxに準ずる直近でFocusする内容及びイシュー解決策を記載します。チームメンバー役割責任範囲
チームメンバーの役割責任範囲を記載します。スモールチーム推進のための会議体
スモールチーム推進に必要な会議体(目的からアウトプットまで)を記載します。
おばけ退治の効果はいかに(実際のインパクト)
結論、認知負荷の削減や情報取得の効率化、不確実性/わからさなの共有による心理安全性担保などの観点よりドキュメント構築前後でスモールチームのスループットは向上しています。また、ドキュメント構築により知の資産が蓄積される(≒未来に向かってドキュメントがあることで複利的な効果が期待できる)ことも重要なインパクトの一側面であると思います。
(よーし、せっかくだしエビデンスとなるインパクト定量データ取得するぞーと息巻いていたのですが、私が某感染症に罹患してしまい取得する時間を確保できませんでした。行動をログに残して観測できる状態になどと言っておきながらすみません。どこかでnote更新しておきます)
あとがき
今もこうして龍角散でのどをすっきりさせながらnoteを書いているお前が言うなとお叱りを受けるかもしれませんが、本格的な寒さに向かう時節となってまいりましたのでご自愛ください。
明日のAdvent Calenderは横断探究推進部 デザイナーのたけうちさんです!!