「都合のいい人」をやめて、ニッチなエキスパートを目指そう
職場で生き抜くために一番必要なことは何でしょうか?
「専門性」、「コミュ力」、「愛嬌」など、様々な答えが出てくるでしょうか。
私の答えは、
『相手にすり寄った仕事をする「都合のいい人」ではなく、「この仕事については○○さん」と自他ともに認めるポジションを獲得できること。』
です。
「相手にすり寄る」というのは、上司・先輩の指示をそのまま言われた通り、ただ無批判にこなすことです。
与えられた仕事を漫然と受け続けても進歩はありません。
そしてその姿勢が、ひいては職場に良いように使われる、「都合のいい人」にしてしまうのです。
ここで、職場の機能の話をします。
職場が社員に求める力は2つあります。ひとつは、「仕事を前に進める力」、もうひとつは「集団を維持する力」です。
最近は、二つ目の「集団を維持する力」が日本的集団主義と批判を受けています。
しかし一番問題なのが、「集団を維持する力」が暴走し「仕事を前に進める力」を抑えこんでしまうことです。
当然会社は組織であり、集団としてまとまって成果をあげていかないといけない。その時に「集団を維持する力」は必要です。
しかし、その目的は成果を求めるためです。成果を求めるために「集団を維持する力」が必要なのです。それを忘れて集団の維持だけを求めることに全く意味はありません。
大切なのは「仕事を前に進める力」であり、それに付随する力として「集団を維持する力」が必要なのです。
だから個人に必要なのは、集団の維持を求められる「都合のいい人」を拒否しつつ、成果に向けて「仕事を前に進める」力だと思うのです。
それでは、そのために何をすればいいのでしょうか?
それは「常に自分の考え、自分の意志で仕事をする」事です。
それでは、これから具体的に「常に自分の考え、意志で仕事をする」方法について、順番に触れていきましょう。
■上司・先輩の指示をこなす時のコツ
「自分の考え、意志で仕事をする」と言いましたが、入社当初から仕事を選べという訳ではありません。
当然選ぶことは出来ないし、まず最初は職場から与えられた仕事をきちんとこなすことが第一です。
しかし与えられた仕事をこなす中で心がけたいことがあります。
それは、上司や先輩の指示があった際に、その指示の意味を考えることです。
この仕事はどんな意味があるのか?他の仕事とどうつながっているのか?
これらを意識するのです。
仕事の意味、背景を理解していることで、仕事の正確性や速度が変わってきます。何か仕事の内容に変化があった時に対応ができるのです。
そして、分からないことは上司や先輩に早めに聞きます。仕事の期限が迫り、双方に余裕がなくなるほど聞きにくくなります。
また、自分なりに理解したことを言葉にして相手に確認します。
「○○は~ということで良かったですか?」
相手も確認されると嬉しいものです。理解しているか理解していないかが確認出来るからです。
続いて理解した内容を文章でノートにメモします。
文章にしてみると意外に分かっていない部分も多いものです。理解度を確認する意味で文章で書くのです。
これが自分の仕事の理解度を示すマニュアルになります。それを折りに触れて読み返すのです。
■背景に流れる「文脈」を理解しよう
これまで上司の言われるとおりに仕事をこなし問題なかったのに、今回は怒られた。何故なのか良く分からない。上司の指示はすぐに「ブレる」。という声をよく聞きます。
何故そうなるか。その理由のひとつに、その指示の背景にある「文脈」が異なっているからということがあります。
「文脈」とは判断を行うに当たっての前提のことです。例えば、事実関係(数値など)、環境、関係者の発言、感情などがそれに当たります。前回と今回とでは、文脈が異なっているので、条件が変わり、やるべきことが変わるのです。
例えば、定例の営業計数をまとめた会議資料を上司に事前に提出するとします。いつも同じフォーマットなので前回と同じように提出したら、上司は不服で、怒られた。何故なのか理由が分かりません。
実は前月の会議以降に、実績の多くをいただいていた大口の顧客が失われ、営業の重点が既存顧客の深掘りから、新規顧客の開拓に変化していました。
だから、今回の会議ではその変化に対応した資料が求められていたのです。だから上司はそのような資料が出てこなかったので不服だったのでしょう。
実は、これはこの上司には大きな問題があります。
本来上司は「文脈」の変化を資料作成前に彼にきちんと説明し、資料の内容についてすり合わせなければいけませんでした。
しかし、いずれにしても資料作成にあたっての前提、文脈が変わっていたことは事実です。
それを彼が周囲を観察し理解していたかはとても重要なことです。
上司の指示どおりにやれば問題ないという意識は捨てなければいけないのです。
文脈を理解し、その変化に敏感になること。文脈を言語化し上司や同僚、部下と共通認識をもつ努力をすることも大切です。
そうすることで、関係者間の誤解を防ぎます。論理的に間違いないと思っていても、文脈を見誤って、前提条件を間違えて、結論を間違えてしまうことはとても多いです。それを事前に防ぐのです。
■自分の得意分野で勝負する
このような意識で与えられる仕事を沢山こなしてくると、仕事どうしの繋がりや会社の求めるもの、方針の全体像が徐々に理解できてきます。
例えば書類整理であれば、その書類の出入りがどのタイミングでどこと行われるのか?頻度はどのくらいか?などが分かってきます。
そして会社が求めているのは、この書類がどうなることなのか?このままでいいのか?整理したいのか?出来ればなくしたいのか?などが分かってくるのです。
そうすると会社の考え、方針を意識した丁寧な仕事が出来るようになる。
入力済み伝票を整理するのであれば、後で見やすくするにラベリングする。保管方法を工夫する。接客であれば、お客様への一言を必ず添えるなどです。
そこで、更に自分のスキルが活かせないかを考える。例えばPCのスキルがあれば、電子化、目次を入力し検索を容易にする、接客であれば、営業につながる雑談について、自分の経験を同僚とシェアし合うなど。様々なことが考えられます。
更には、実践する中で感じた問題意識や解決策を上司に提案してみる。
これまでの上司等とのやりとりで会社の方針を文脈として理解できていれば、取り入れられる可能性は高いでしょう。
こうしたプロセスで生まれる仕事への丁寧さや、問題意識、課題の解決方法は自分の考え・意志と会社の方針・文脈、双方に寄り沿った仕事です。
こういう仕事をしていると会社から信頼されます。両方を出来るひとはとても少ないのです。
私は、このような仕事が出来る人を「ニッチなエキスパート」と呼んでいます。
会社の文脈を踏まえ、職場をよくするための問題意識と具体的な提案がピンポイントで出せる専門家。専門知識、スキルが有る、なしではありません。
会社の大きな戦力になるでしょう。
■「守・破・離」とはどう違う?
今回の話は、仕事への向かい合い方について昔から言われる「守・破・離」と同じ意味です。
まず最初は「守」る。慣れてくれば、そこから飛び出して「破」る。そして最後は「離」れる。仕事の本質を語っています。
若い頃、私は感じていました。
何故最初に「守」らなければいけないのか?
いつも上司に反発していました。明らかにおかしいことなのに、何故守らないといけないのかと?
その答えは、今考えれば分かります。
一見おかしいと感じていることにも、何かしらの背景・理由がある。
職場内の人間関係に端を発することもあるし、トップの考えが原因かもしれない。更に深掘りすると業界の中での関係性かもしれない。問題はもう少し複雑なのです。
文脈を理解し視野を広げて考えると、実は現状が最も合理的という可能性だってあります。
つまり、「守」の時期に背景や会社の方針を注意深く観察し会社の考えを知る。その知識を踏まえて自分の考えを構築するのです。
最初に感じた疑問、解決策は、単なる自分の偏った見方であったり的外れであることが多いのです。
しっかりと会社の状況を観察し背後に流れる文脈を理解する。その上で生じる疑問や違和感は、多くの人が感じている違和感と必ず一致します。
それを周囲に明らかにし、併せて自分のスキルを活かした解決策を出せれば、上司や会社も聞く耳を持つ、重要な提言となります。賛同する味方も増えるでしょう。
これこそ「ニッチなエキスパート」です。是非目指していきましょう。
■まとめ
今回は、職場で生き残るために目指したい「ニッチなエキスパート」についてお話ししてきました。
「つい都合の良い人になってしまう。自分から止めるのは難しい」という悩みを良く聞きます。
これは周囲の感情に敏感で、雰囲気に流されてしまいがちな気質から来ていると思います。私も同じ悩みを抱えています。
流されてしまうその時に、周囲をきちんと観察できているでしょうか?
敏感さゆえに感情がかき乱されて、周囲を見る余裕がないのではないでしょうか?
そんな時は様々な方法で感情の乱れを鎮めて、周囲をしっかり観察するのです。更に自分自身もしっかり観察するのです。
そうすると理解できる範囲が格段に増えるのです。これは一般に「メタ認知」と呼びます。これを身につけるのです。
メタ認知を身につけると、課題を見つける精度が格段に上がります。それは大きな武器となります。他の専門知識、スキル以上に汎用性があり、とても役に立つのです。
是非これを身につけて、職場におけるニッチなエキスパートになってもらいたいと思います。応援しています!!
※ 感情の乱れを抑えて、落ち着いて周囲や自分をしっかり観察する方法、「自分を保つセルフマネジメント」については、こちらに書いてます。是非お読み下さい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?