「物理」と「数学」への私見

「物理は数学がわからないとできない」
なんてよく高校の授業で言われます。確かにその通りで、高校レベルだとオール文字式の連立方程式やせいぜい一次関数、相似あたりを知らないと全く太刀打ちできません。
とはいえ一応情けをかけて中学数学が解ってればなんとかなるようにカリキュラムはできてます。

え、三角関数? 物理基礎では使わないよね?

微積はぶっちゃけ概念知ってると便利な程度で、「必須、なきゃ何も解けない!」なんてもんではありません。仮にそうなら教科書や指導要領が破綻してるってことです。
まあ実際、微積を高校物理で使えると、教える側としてはめっちゃ楽なんですけどね。

個人的には

「高校物理は微積と行列ぐらい触れてると幸せになれる」

「高校数学の素養なしで高校物理をやってもあまり幸福な体験はできない」

と思ってます。あとはそうですね、

「どうしても詰まった時に、定義と基礎方程式から打開策が見つかることもあるので、最終手段」

みたいなものでしょうかね?

そういった意味で、高校物理に(高校)数学は有用です。なんだかんだハイレベルな大学入試問題の背景には潜んじゃっていますし。

同様に、問題解くのに使うかは別ですけど、多少足を伸ばして大学の数学に片足突っ込むのもそれなりに意義はあると思います。
半ば趣味のようなものですが、そういうのが好きな人は物理科に来るべきでしょうから、未来の物理学徒に門戸を開く点でもいいんじゃないかなと思うんです。

もちろん、全員に必要かというと、決してそんなことはない。
なんでしょうね、ゴルゴンゾーラチーズみたいなもんですかね?
あれ私は好きですけど妻はあまり好きじゃないそうです。
別にゴルゴンゾーラチーズがなくても死にはしませんけど、美味しいですよね。


ところがどっこい、大学の物理になると、大学の数学の、そこまで深みに入らなくともなんとかなるもんです。

もちろん人生何を間違えたか大学院まで行くならば、そこでやる分野によっては、大学+院レベルの数学の逆襲に遭います。

しかし、学部程度だとせいぜい

・多変数の微積分
・多少の線形代数
・多少の(偏)微分方程式の知識
・そこから出る解の知識
・フーリエ変換
・多少のベクトル解析
・少しの複素関数論

まあこんな程度でなんとかなってしまいます。こんな程度って量じゃないって? そうね、もう少しまじめに勉強すると、

・ラプラス変換
・それなりの変分の知識
・あると嬉しい群の知識

このくらいもあるといいかなと思いますが、最低限卒業に必要な勉強しかしない主義であれば不要でしょう。

否。それどころか、試験で単位を取ってさっさと卒業するってだけなら、「よく出題される有名な計算や変形パターンを丸暗記する」だけでも「可」や「C」は十分狙えると思います。
もっと酷いと落単とか、過去問と解答もらったりとか、そういうことをすればいいんですよ。
RTAなら手段を選んじゃダメです。
大学卒業any%なんでしょ、多分。


いままでNoteの中にも何度か出てきた、お世話になったとある教授の「微積分は算数」という暴言は↑のような事情から来てるんじゃないかとも思います。

というのも、↑で出てきた分野や事項、ワードはほとんど数学の利用の側面であって、↑の作り方や整合性までは細かく学習しないわけです。
大学の教養レベルとも評される、せいぜい微積分学と線形代数が必修って程度じゃありません?

算数の構造や作り方を真面目にやるのが教授曰くの「数学」、そんなことはともかくただ使うのが教授曰くの「算数」ってことなんだと思います。
よくある、車が作れなくても運転はできる理論ですね。

そういうわけで、院まで行って分野によっては自分で理論を確かめたり作ったり、そういう必要が出てくる。そうなると再び「数学」のお世話にならざるを得ないのです。

ところが、そのときの数学の勉強は自分でやるしかないんですね。
どうしても授業で、という場合、学部の数学科に殴り込みに行くか、院の数学科の授業の末席を汚せばいくらか学べますが、私のような凡人ですとほとんどの場合、返り討ちにあうと相場が決まっています。
結局数学科の院は院で、数学科の学部の授業がベースですし、数学の学部の授業が好きでフンフンとわかるなら、なにも物理科にいる必要はないわけです。

だから時々思うんですよ、数学科に入り直したい。
でも、やっぱり数学よりも物理の方が好きなんですね。

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