この絵はこの詩から生まれました ──詩の世界をアートに [第68回]
江行無題
咫尺愁風雨 しせき 風雨を愁う
匡盧不可登 きょうろ 登るべからず
祇疑雲霧窟 ただ疑う 雲霧のいわや
猶有六朝僧 なお 六朝の僧あらんかと
銭起
目の前 風雨が吹き荒れ
廬山にも登れない
ただ、この山の雲に隠れた洞窟に
過ぎた昔 六朝時代の僧が
今でもいるような気がしてならない
*咫尺=しせき=短い長さ
匡廬=きょうろ=廬山
祇=ただ
日本の現代でも、雲海に隠れた古城など
話題になりますが、
雲や霧に隠れた景色というのは、
なにか人の心をそそるものがあります。
過ぎ去った過去の時代の僧が、
まだいるのではという想像に、
この詩のファンタジーを感じます。