この絵はこの詩から生まれました ──詩の世界をアートに [第39回]
惜別の歌
遠き別れに 耐えかねて
この高殿に登るかな
悲しむなかれ 我が友よ
旅の衣を ととのえよ
別れと言えば 昔より
この人の世の 常なるを
流るる水を 眺むれば
夢はずかしき 涙かな
君がさやけき 目の色も
君くれないの くちびるも
君がみどりの 黒髪も
またいつか見ん この別れ
君がやさしき なぐさめも
君が楽しき 歌声も
君が心の 琴の音も
またいつか聞かん この別れ
島崎藤村
*この詩 惜別(せきべつ)の歌、藤村の詩ですが、
昭和の歌謡曲として有名で、その場合詩より詞と
いったほうがよいのかもしれません。
ある年代以上の方ならたいていご存じの曲です。
小林旭の歌が絶品、絶唱で、哀調をおびた声は
ダイレクトに琴線に触れてきます。
小林旭の映画は見たことがありませんが、
北の原野を馬に乗り、ギター担いで流れゆく
アウトローといったイメージがあります。
しかしその、ちょっとすさんだような声が、
たまらない魅力となっています。
また、渡哲也も歌っており、これもまた絶品なのですが、
最近、削除されてしまったようで残念です。
中央大学の学生歌として、太平洋戦争末期の
学徒動員のさいの歌だったともいわれています。
歌詞冒頭の高殿は、城、古城、城跡のようですが、
私の絵は、海の灯台をモチーフにしています。
歌は第3部までですが、
原詩の第4部も切り捨てるには惜しく、
掲載してみました。