「見当」をつける、問いの持ち方
2021年11月8日のツイートから
話し方を学ぶ→どんな話をしたらいいかを学ぶ。計算を学ぶ→どんな計算をしたら解決に導かれるかを学ぶ。実験を学ぶ→どんな実験をしたら有効な真理を発見できそうかを学ぶ。
基礎的な研究方法は分野ごとに確立している。人文社会系では、文献のレビューに始まり、方法論を設定し、結果を分析し、解釈を施す。その上で結論を明示し、更なる研究の必要性を示唆する。
実際の活動としては、観察や記録、実験や体験、インタビューやアンケート等を通してデータを収集する。統計的に分析・解釈し、文献研究で得たそれまでの研究と照らし合わせながら、自分の研究の位置づけを探る。
大学院で研究する学生からよく聞かれるのは「研究テーマ」について。いわゆる「問い」である。これから自分が行う研究は、どんな問いに答えようとするのか。これによって、やるべき仕事が決まる。
一般的によくあるアドバイスは、当該分野の文献を徹底的に読んで、その中からまだあまり行われていないトピックを見つけ出すということ。しかしこれはとりとめもない作業に思えてくる。
むしろ、好奇心や探究心が重要で、様々な現象を知覚する中から「なんだこれ?」というちょっとした疑問が良い研究テーマにつながる。自分なりの「問い」を発見することばかりにとらわれて、「問いの持ち方」のコツに気づいてない。
ひとつの方法としては「探偵」みたいになることである。
多くの人は「話し方」を学ぼうとする。しかし「どんな話をしたらいいか」には意識が向かない。「計算の仕方」はよく勉強する。しかし「どんな計算をしたらこの課題が解決できるだろうか」という発想には至らない。
なぜか? 真面目だから。
基礎的なスキルを身につけてから、いろんな問題や課題に取り組もうとする真面目な姿勢は結構なのだが、実際の問題や課題に向き合う中で、どんなスキルを使えば解決できるだろうかという逆のロジックが機能しない。
探偵は「現場」から入り、いろんな断片を発見して、そこから何が起こったかを推理し「見当」をつける。大学での研究もよく似ている。まず現象を把握し、いろんな断片的な情報を収集しながら「何がどんなふうに起こるのか」について、見当をつけてみる。そこから自分が取り組むべき研究のテーマやトピックを見出していく。
特におもしろいのは、自分が見当をつけたシナリオに「合わない事実」が出てきた時で、これは絶好のチャンス。「その事実が合う別のロジック」が存在する可能性が高いから。それが既存の理論の修正や、方法論の修正、あるいはこれまでの解釈の修正につながり、貴重な発見となる可能性が高くなる。
基礎的なスキルを学ぶのも重要だが、研究の初心者の時から、見当をつけるという問いの持ち方を意識する方がいい。
https://twitter.com/H_Hatayama