見出し画像

メモ:与党過半数割れで上がる 株価の怪


与党惨敗で上がる株価


2024年 10月27日に行われた衆議院選挙は、与党が過半数割れを起こす大惨敗となった。

自民党は247議席から191議席へ、23% 議席を減らした。
公明党は32議席から24議席へ、25% 議席を減らした。

与党の過半数割れにより、日本政府は法案を自由に通すことができなくなった。これで日本の政治は麻痺状態になる。

日本の経済政策についても、間違いなく動きは鈍くなるはずだ。それを反映し、翌28日の日経平均株価は暴落するだろう、と思っていた。

僕の予想は、みごとに外れた。

翌日の日経平均株価は、691円高(+1.8%)となり、暴落どころか堅調な株価推移をみせた。


なんでやねん!

与党の過半数割れにより、明らかに日本の政治は麻痺状態に陥る。
首相をはじめとする行政府は、与党が法案を通すことができないから、大いに動きを制限される。

それに、支持基盤の弱さは外交でも不利に働く。外国と約束しても、それを国会が承認するという裏付けがとれないからである。

与党の過半数割れは、日本経済にとって、悪いことだらけである。


ではなぜ、与党大敗にもかかわらず、株価が上昇したのだろうか?


キャスティングボートを握る 国民民主党


その背景には、国民民主党の躍進がある。

国民民主党は、今回の選挙において、7議席から28議席まで4倍に議席数を増加させた。

国民民主党は、立憲民主党とともに、2009年から2012年まで政権与党であった旧民主党の残党勢力だ。ざっくりとしたイメージでは、国民民主党は旧民主党の右派勢力、立憲民主党は旧民主党の左派勢力となる。

立憲民主党のほうが、勢力は大きい(98→148議席)。だが、立憲民主党は野党第一党であり、これまで自民党とずっと対立関係にあった。自民党と協力することは難しい。

一方、国民民主党は、これまで弱小勢力だったこともあり、自民党と大きく敵対することはなかった。ポジション的にも、旧民主党の右派勢力なので、自民党と近いところがある。

国民民主党は28議席を持っている。
自民党が191議席、公明党24議席、これに国民民主党28議席を加えれば、243議席となり、過半数 233議席を超える。

選挙の結果、国民民主党がキャスティングボートを握ることになった。政策をコントロールするのは、自民党ではなく、国民民主党という状況が出現する。

つまり、国民民主党が公約に掲げる政策に関しては、(それが自民・公明の政策に反しない限り)法案がバンバカ通過するということだ。

実際、国民民主党もこの状況は十分理解しており、代表の玉木氏は、選挙で大勝した後、「政策で一致するなら党を問わず与野党を問わず協力するところは協力したい」と述べている。

要するに、自民党と公明党に対して、「協力してやるから、国民民主党の公約を実行しろ!」 といっているのである。


国民民主党の政策


国民民主党の政策は、ひとことで言うと、
「 ”減税” と ”バラマキ” で、みんなの懐を豊かにするぜ!!」
ということだ。

なお、詳細は以下の通り。
 ・減税:消費税減税、所得税減税、基礎控除の拡大
 ・社会保障料の軽減:窓口負担の増加、税金の投入による社会保障減
 ・生活費の引き下げ:ガソリンへ補助金、再エネ賦課金を低減


確かに、高齢者に対する窓口負担の増加など、妥当としか言えないような政策もあるが、それよりもはやり、”減税” と ”バラマキ” の占めるウエイトが大きい。

そして、減税とバラマキであれば、自民党や公明党が反対するはずがない。

間違いなく国民民主党の政策は実行されるだろう。

政権与党の自民党・公明党としても、過半数割れしちゃったんだから、仕方ないじゃないか!と、減税とバラマキに対する大義名分(いいわけ)ができる。

減税とバラマキをやるのであれば、当然ながら国債を大量に発行することになる。


加速するインフレ


ただでさえ人手不足の環境で、減税とバラマキをやるのである。
より一層人手不足に拍車がかかることになる。

現状、景気は悪くない。我々が豊かさを感じることができないのは、550兆円しかない稼ぎ(GDP)のうち140兆円(25%)も社会保障費用に突っ込んでいるからだ。

手取り月収 20万円の人間が医療費に5万円 使っているようなもので、そりゃ豊かさは感じなくなるだろう。
(医療費を除く手取りは15万円になる。食費 5万、家賃5万 は納得できるが、医療費5万は高い。)

この状況で、減税・バラマキのような景気刺激策をやれば、人手不足は一層激しくなり、賃金は上昇する。ただ、上昇した賃金は物価に乗っかるわけだから、当然ながら物価も上昇し、インフレになる。

国民民主党は、インフレ政策をやる!
といっているのだ。

では、インフレで誰が得をするのか?

年金額が決まっている高齢者は、インフレで損をする。
一方で、賃金上昇の恩恵を受ける勤労世代は、高齢者と比較してダメージが少ない。特に、賃金上昇が著しい、20代の若者世代は大きな恩恵を受けるだろう。(この人手不足環境下においても、賃金上昇の恩恵を受けられない氷河期世代は呪われているといえる。)

もっとも得をするのは、インフレで価値が上昇する、株式や不動産などを大量に保有している日本の富裕層と、日本の財・サービスを安く購入できる外国人たちである。


まとめ


なぜ、与党惨敗で日経平均株価が上昇したのか?

それは、与党惨敗により国民民主党がキャスティングボートを握ることが決ったからであり、今後、日本政府が減税とバラマキ政策を実行することが決まったからだ。

日本のインフレ加速が決定し、インフレ時に資金の逃避先となる株式の、将来における価格上昇が決まったからだ。


(・・・株価暴落を期待して、たくさん指し値を入れてたのに、一つも買えなかった。)


いいなと思ったら応援しよう!