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100兆円のケインズ政策
日本の失業率は低い
日本は、失業率が低い国だ。
下図の主要国の失業率推移を確認すると、日本が一番失業率が低い。
2022年の日本の失業率は2.6%であり、イタリア8.1%、ドイツ3.1%。フランス 7.3%、アメリカ 3.7% といった欧米諸国と比較して低い。
しかも、2000年から2022年まず一貫して低いのである。
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失業率が低い原因をGoogleに聞いたところ、日本の失業率が低い理由は、「日本的雇用システム」の存在にあると教えてくれた。
![](https://assets.st-note.com/img/1718421310543-ZrDnWVYyre.png?width=1200)
Google先生のいうことが正しいとすれば、日本的雇用システムが存在する限り、日本の失業率ずっと低いままということになる。
そのうえ、日本は、少子高齢化により労働者人口が不足する。これからも、ずっと日本の失業率は低いまま・・・・ということになる。
だが、本当にそうだろうか?
ずっと失業率がゼロ近辺とか、社会主義国じゃあるまいし、そんなことがあり得るのだろうか?
僕は、あることをきっかけに、日本の失業率が急上昇するシナリオを提示する。
100兆円のケインズ政策
ケインズ政策とは
ケインズ政策とは、不景気のときには国が国債を発行して、調達したカネで公共事業を実施することで不景気のダメージを軽減する政策のことだ。
逆に、好景気になったときに税金を多く課し、国債を返済することで、好景気の行き過ぎを防止する。
資本主義社会においては、
不景気が不景気をよぶ悪循環
不景気→業績悪化→失業者増加→需要減少→会社がリストラ→失業者増加
好景気が好景気をよぶバブル
好景気→給料増加→消費拡大→会社の売上アップ→給料増加→さらに消費拡大
といった、極端な不況と極端な好景気が発生する。
第一次世界大戦後のアメリカでは、世界大戦での莫大な利益により、空前の好景気が発生して、その反動で大恐慌とよばれる空前の不景気が発生した。
アメリカの大恐慌が、ヨーロッパや日本にも波及して、ヒトラー政権、ムッソリーニ政権、日本の軍国主義を誕生させ、第2次世界大戦を引き起こしたのである。
この大恐慌への反省を踏まえ、各国の政策当局に取り入れられたのがケインズ政策である。
不景気の悪循環を止めるために、政府が借金をして、失業者の増加を食い止める。好景気が加熱して、バブルが発生しそうになれば、税率を上げて景気の加熱を防止する。
ケインズ政策により、極端な不況、極端なバブルは発生しなくなった。
実際に、リーマン・ショック、コロナ禍など、経済が落ち込むキッカケはあったものの、大恐慌に匹敵するような不況は発生しなかった。
日本国における社会保障
1970年代から、日本国では出生率が徐々に低下していった。
低下を続ける出生率は、少子高齢社会を形成した。
本来であれば、少子高齢化にあわせて社会保障制度を見直すべきであった。
だが、日本国政府はそうしなかった。
現在、日本の社会保障の財源は、財政ファイナンスによって賄われている。日本政府が国債を発行して、それを日本銀行が買うことで140兆円の社会保障費用をまかなっているのだ。
「お金がない?だったら印刷すればいいじゃない!」
をマイルドにやっているのである。
(ハイパーインフレで有名なジンバブエは、大っぴらかつ大々的にこの政策を実行した)
![](https://assets.st-note.com/img/1718428013034-AtONjLU5fs.png?width=1200)
結果として、国債残高は順調に増加している。
医療・福祉分野での就業者数は、1000万人である。
この数字は、2000年から2020年にかけて400万人も増加したのだ。広島県の人口が約300万人であるから、この400万人という数字はでかい。
老人の面倒をみる介護業界では、扱う対象が人間だけに、安全性の観点なども含めて、ロボットの導入が難しい。だから、医療・福祉の業界では、大量の人手、大量の労働者が必要になったのだ。
社会保障費 140兆円時代
日本の社会保証費用は、140兆円である。
そのうち、100兆円が高齢者のために使われている。
現役世代のために使われている支出、医療費などの40兆円は、ある意味、労働者のメンテナンス費用といえる。労働者が健康でなければ、働けないから、将来の税収を確保するための必要経費である。
だが、年金をはじめとする高齢者のための社会保障費用は、ただ高齢者がその日一日を暮らすための費用であり、現役世代の病気治療と比較すると、生産性に乏しいといわざるをえない。
日本が高齢者のために支出している金額は約100兆円であり、これはGDPの20%に相当する。
日本政府は、2000年から2023年にかけて、年々増加する社会保障費用を借金でおぎなうことで、400万人相当の有効需要を作り出したのだ。
2000年から2024年までずっと、大規模なケインズ政策を実施しているようなものである。
100兆円のケインズ政策が、日本の失業率を低水準に抑え込む働きをしたのである。
社会保障が壊れるとき
社会保障費用140兆円。
高齢者向け、社会保障費用は100兆円。
この支出を将来ずっと維持するのは、困難である。
インフレが存在しない環境においては、高齢者のためにいくらでも国債を発行することができた。だが、ひとたびインフレが発生してしまうと、以前のように自由な国債発行はできなくなる。
インフレを抑えるためには、世の中にあふれる日本円を日本銀行が回収しなければならない。以前のように大量の国債を日本銀行に買わせることが難しくなる。実際に、日本銀行は国債買い入れの減額を表明するところまで追い詰められている。
いずれ、日本は老人たちを見捨てざるを得ないだろう。
増え続ける社会保障の負担に、もうやってられないと現役世代が音を上げる日が遠からずやってくる。
以下は、1990年の人口ピラミッドと2050年の人口ピラミッドである。
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2050年の人口ピラミッドでは、比較的少数の生産年齢人口でもって、多数の老人と子供たちを、支える構図になっている。現役世代は、奴隷のように搾取されなければならないだろう。
現役世代には、高齢者を養うために生きる覚悟が求められるのだ。
1990年の人口ピラミッドでは、生産年齢人口がずいぶんと多い。昔はどれだけ楽だったかがわかる。特に、カネがかかる後期老年人口のボリュームがぜんぜん違う。
人間は、死ぬ直前にもっともカネがかかる。医者の仕事は命を救うことである。死ぬ間際のお年寄りの命を1日でもながらえさせるために、大量の高価な薬や医療、つまりカネが湯水のごとく消費されるのである。
現役世代が、高齢者を見捨てたほうが合理的だと考えて、そのために行動を起こすことは、ある意味当然のことだ。
だが、社会保障制度が崩壊したその瞬間、医療・介護業界の1000万人が失業するのである。
さらに、医療介護の崩壊は、製造業(医療品メーカー)、建設業(病院)、サービス業(経営コンサル)、飲食業(病院食を提供する給食業者や病院内のレストラン)など、幅広い業種に不況の嵐を巻き起こす。
日本国が、社会保障費に費やしているのは140兆円である。このうち、純粋に老人のために費やしている金額は100兆円だ。
この100兆円は、好況・不況関係なしに、常に有効需要を作り出し、失業率を下げるケインズ政策の効果を発揮している。日本において、2000年意向、増加する一方の需要(それもGDPの20%に相当する大量の需要)を政府が無理やり作り出していたのである。
100兆円の有効需要がふっとんだら、大量の失業者が発生するだろう。
日本の人手不足は、一転して解消される。
社会保障制度の崩壊により、失業者があふれるようになる。
かつての医療・福祉分野のように、400万人もの雇用を吸収できる新産業は、もはや日本に存在しない。
まとめ
日本の失業率が低い理由は、日本政府が社会保障に140兆円もの莫大な予算を費やしているからだ。
この過剰な社会保障費用が、事実上のケインズ政策となって、日本の景気を支え、低水準の失業率を維持している。
だが、社会保障費用140兆円は、明らかに過剰である。
いずれ、現役世代が負担に耐えられなくなり、社会保障費用を削減しようとするだろう。
その時、日本の景気をひそかに支えていたケインズ政策は終了し、大不況と大失業の時代がやってくる。