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グローバリストの劣勢



前書き


今回の記事は、こちらの続きになります。

前記事では、左派(リベラル)が、移民の受け入れを恐れない理由を考察した。

左派(リベラル)が、移民の受け入れを恐れないのは、左派(リベラル)が「地球人主義者(グローバリスト)」であり、日本人や日本国(民族や主権国家)が消滅することに対して、抵抗がないからだ。

今後30年間は、新しく出現した 左派・地球人主義者(グローバリスト) と右派・国家主義者(ナショナリスト) とが対立する時代になる。

(すでに欧州各国では、移民排斥を掲げる極右(ナショナリスト)政党が躍進している。つまり、EUは後退していく。)


今後 30年間、グローバリストは劣勢となる。


新自由主義に裏切られた大衆


トリクルダウン理論のワナ

新自由主義者は、グローバリストの前身である。新自由主義者が進化してグローバリストになった。新自由主義者=グローバリストと考えてよい。

この新自由主義者が、やらかしたのである。

新自由主義者たちは、トリクルダウン理論を大々的に喧伝した。規制緩和と自由競争により、経済の効率が高まり、全体として見れば経済は成長する。分配原資であるパイの大きさが大きくなるから、誰もが利益を得ることが可能になると主張した。

だが、トリクルダウン理論は、毒まんじゅうだった。嘘はひとつも言っていないかもしれないが、聞き手が誤解するような表現をしている。(だましていることに違いない。)

トリクルダウン理論を提唱したのは、先進国の経済学者である。彼らは先進国の労働者、学生、主婦などの一般大衆に向けて、規制緩和をすることで経済が成長し、経済全体のパイが大きくなるから、その分みなが豊かになることが可能である、と主張した。

だが、トリクルダウン理論には以下の問題があり、結果として、みなが豊かにならなかった

分配の問題
規制緩和により経済全体のパイが大きくなるのが本当だとしても、分配が平等になるとは言っていない。分配は、平等になされなかった。金持ちはより金持ちに、ビンボー人はより貧乏になった。
金持ちに分配の不平等を指摘すると、税金の安いシンガポールなどに高額納税者が逃げ出すから、(税金を払ってもらいたければ)黙ってろ!と脅迫してくる始末だ。

境界線の問題
新自由主義の経済学者は、実際にトリクルダウンにより貧しい人たちが豊かになったと主張する。証拠もあると、難しい統計資料を突きつけて、難しい論文を出してくる。

この種の主張には、境界線の問題が存在する。
たいてい、トリクルダウンを擁護する学者連中は、グローバルに境界線を設定する。つまり、発展途上国(インド、バングラデシュ、中国)を含めて、皆が豊かになった、貧困層が減少したと主張するのである。

だが、新自由主義の経済学者のご意見を聞いている人たちのほとんどは、先進国の一般大衆、労働者たちである。
先進国だけに焦点を当てれば、間違いなく規制緩和により、貧困層は拡大している。


トリクルダウン理論は部分的には正しいが、正しく説明されなかった

規制緩和により、先進国の貧困層は増加して、発展途上国の貧困層は減少する。先進国の富裕層は、もっと豊かになる。規制緩和とグローバル化は、先進国の中間層の富を、先進国の富裕層と途上国の貧困層で、わけわけしたのである。
確かに、先進国の中間層の富が発展途上国の貧困層にも移転したのだから、トリクルダウンは正しいのかもしれない。

だが、トリクルダウン理論を説明された先進国の労働者階級は、規制緩和により、俺たちが豊かになれると解釈したはずだ。
でなければ、90年代~00年代の新自由主義・規制緩和が大衆の支持を集めた理由を説明できない。

2010年代以降、先進国の労働者・一般大衆は、新自由主義者のトリクルダウン理論にだまされたと感じている。
(現在の日本では、小泉・竹中は、氷河期世代にとって敵と認識されている。だが、当時は小泉劇場と呼ばれ、小泉・竹中ペアの構造改革は、国民から大きな支持を受けていたのである。)

新自由主義により、先進国の労働者は、貧しくなる。

国家による保護がなければ、先進国労働者の待遇は、途上国の労働者や移民との競争により、悪化する。


右派 ナショナリズム(極右)を生んだ グローバリスト


先進国の労働者・一般大衆は、新自由主義者に対して ”だまされた” と感じている。トリクルダウン理論は嘘だったじゃないかと。

新自由主義としては、正しく理解できなかった労働者・一般大衆たちが悪いと考えるだろう。だが、現実世界は、学校のディベートではないので、労働者・一般大衆が誤解したとか、トリクルダウン理論が正しいとか正しくないとか、そんなことはどうでもよい。

労働者・一般大衆が、裏切られたと感じており、新自由主義者とグローバリズムに対して不信感を持ち、彼らに対して反発心をもった点が大事である。

それも、アメリカ合衆国の労働者・一般大衆が反発心を持ったことが重要だ。冷戦を終わらせ、世界をグローバル化したのは、アメリカ合衆国である。そのアメリカ合衆国の労働者・一般大衆が、グローバリズムを嫌悪しだした。

資本主義のやり過ぎが、共産主義を生み出したように、新自由主義者(グローバリスト)のやり過ぎが、ドナルド・トランプをはじめとする右派 ナショナリストを誕生させたのである。


アメリカが未来を決める


グローバリストの弱点 ~ アメリカに全依存


グローバリスト(地球人主義者)は、文字通りグローバル化した世界を前提にシステムを構築している。

グローバリストが提唱するイデオロギーは、基本的人権、平等、ジェンダーフリーなどであり、欧米由来の価値体系を世界すべてに適用しようとしている。

もちろん、そこには自由貿易と、欧米由来の価値体系の勢力圏拡大によるマーケットの拡大、つまり、莫大な利益が伴っている。

グローバリストの前提として、グローバル化が存在する。もっとはっきりいえば、何が ”正義” で 何が ”悪” かを判断し、悪を裁く、世界政府のような ”強力な力” による ”秩序” が必須である。つまり、”アメリカ” が世界中に ”秩序” を強制することが、グローバル化には必要だ。

人種差別、暴力、紛争、戦争、借金の踏み倒しが横行すれば、自由貿易など不可能になる。グローバリストが世界中で利益を得るためには、世界が秩序だっていることが前提として必要不可欠だ。

アメリカ合衆国が世界覇権をにぎって、アメリカ合衆国が、国際機関(IMF、世界銀行、WTO) を通じて各国に ”アメリカの秩序” を強制する環境においてのみ、グローバリストが提唱する世界は成立する。

アメリカ合衆国がルールを決めて、アメリカ合衆国がルールを強制的に守らせる。もちろん、アメリカ合衆国の国益と、国際的なルールが衝突した場合、アメリカ合衆国の国益が優先されたが、概ね、この体制はうまくいっていた。

なにせ、グローバリストは、主にアメリカ合衆国の金持ち連中により構成されていたのだから。

2010年代半ばまで、グローバリストの利益と、アメリカ合衆国の国益が一致していた。だが、2016年にドナルド・トランプが大統領になってから、この構造が変化した。

ドナルド・トランプ ~アメリカ労働者階級の反逆

2016年の大統領選挙は、今後の世界を決定づける歴史的な節目であった。

2016年の大統領選挙で、本命とされたのはヒラリー・クリントンである。女性かつ前大統領婦人である民主党のヒラリー・クリントン氏は、左派・グローバリストの理想が結集したようなアメリカ合衆国の大統領候補であった。

一方で、ドナルド・トランプ氏は泡沫候補とされた。トランプ氏の主張は、減税、移民対策強化、産業保護主義、アメリカ第一主義 であった。

グローバリストの理想とは、正反対だったから、マスコミからは総バッシングであった。

だが、ドナルド・トランプ氏は、メディアのネガティブキャンペーンにも関わらず、大統領選挙に勝利した。

トランプ氏を支持したのは、プア・ホワイト (貧しい白人)と呼ばれる連中で、グローバリスト(かつての新自由主義者)が見捨てた連中であった。

大統領選挙に勝利したドナルド・トランプは、”アメリカファースト” 政策を進めた。

世界の秩序を守ること、自由貿易を守ることは、アメリカ合衆国の富裕層(資本家)の利益にはなっても、アメリカ合衆国の労働者の利益にはならない。

なにせ、アメリカ合衆国は、国内に資源が十分ある。日本と違って、食料・エネルギーを輸出しているくらいだ。アメリカ合衆国の労働者にとっては、自由貿易などなくなった方が、国内に雇用の場を創出できて、賃金が上昇するから利益がある。だからこそ、トランプ大統領は、トヨタ自動車に圧力をかけてアメリカ国内に工場を作らせた。

アメリカ合衆国の労働者を支持母体とする、トランプ大統領が指揮するアメリカ合衆国は、グローバリストの思惑とは違う動きをするようになった。

2016年のトランプ大統領の出現をもって、グローバリストの利益と、アメリカ合衆国の利益が、相反することになった。


グローバリスト(ハリス) VS ナショナリスト(トランプ)

2024年の大統領選挙は、8年前(2016年)の選挙の再現である。

女性であり、グローバリストである民主党 カマラ・ハリスと、ナショナリストであり、共和党 ドナルド・トランプの選挙戦となる。

カマラ・ハリス VS ドナルド・トランプ の構図は、
グローバル化した世界で儲ける資本家(富裕層) VS グローバル化で損をする労働者(ビンボー人)
の対決となる。

富裕層の数とビンボー人の数では、ビンボー人が圧倒的多数である。

民主的な選挙を行えば、グローバル化で損をする労働者(ビンボー人)が勝利する。

それゆえに、かつての新自由主義者は、トリクルダウン理論で労働者(ビンボー人)をだまして、労働者(ビンボー人)も利益にありつけると誤解させることで、グローバル化を支持させた。

だが、数十年が経過して、トリクルダウン理論は色あせた。ちっとも豊かにならないじゃないか!と労働者(ビンボー人)は怒りを爆発させている。

グローバリストは、トリクルダウン理論の代わりに、地球環境を守ろう運動(SDGs)を前面に押し出したが、こちらは労働者(ビンボー人)には響かなかった。

SDGsが大衆に響かなかった原因は、マスコミ・アカデミアが信頼を失ったからだろう。マスコミ・アカデミアは、長年にわたって、ビンボー人を説得・洗脳する役割を果たしてきた。
(ナチス=ドイツでは、宣伝で国民を洗脳するための役所、宣伝省まで存在しており、宣伝省のおかげでベルリンが陥落するまで戦い抜くことが可能となった。宣伝大臣はゲッベルス博士)

だが、ビンボー人とて、バカではない。ついこの前にトリクルダウン理論でだまされて、実際に生活が苦しくなった経験から、マスコミ・アカデミアは、ろくなことを言わないと、不信感を強めている。(実際に、マスコミ・アカデミアは、正しいことを言うかもしれないが、その正しさはビンボー人を救わない)

その結果、アメリカ合衆国では、数の論理で労働者(ビンボー人)が勝利する。

ナショナリスト陣営、 ドナルド・トランプ陣営が構造的に勝利するのである。

たとえ、トランプ大統領を暗殺したところで、第二、第三のトランプ大統領が出現するだけである。

なお、トランプ大統領候補は、3回も暗殺を試みられており、トランプ大統領の誕生をどうしても阻止したい勢力が存在するようである。大統領候補の暗殺など、どれだけ闇が深いのだ。



グローバリズムは麻痺をする(パラライズド グローバリズム)

グローバリストが進める政策、

・基本的人権、平等、ジェンダーフリー、などの価値体系を世界に広めること
・SDGs 持続可能な未来を実現すること、脱炭素を世界中で行うこと
・自立した個人が、自由な経済取引を行うこと
・誰もが世界中どこででも、自由に働けること

これらは、すべて安定した世界秩序があってこそ実現するものだ。

アメリカ合衆国が世界覇権をにぎって、世界中に軍隊を展開している環境、
アメリカ合衆国が、国際機関(IMF、世界銀行、WTO) を通じて各国に ”アメリカの秩序” を強制する世界が、グローバリストが提唱する政策を実行する前提条件だ。

その前提条件が崩れ去ろうとしている。

2016年以降のアメリカ合衆国の政策は、”アメリカファースト” だ。

自由貿易に背をむけて関税をかけるし、産業保護政策を行うし、邪魔な他国の産業や企業には圧力をかけて潰す。

当然ながら、アメリカ合衆国が身勝手な行動をすれば、国際秩序が成立しなくなる。

アメリカ合衆国が、手先となる国際機関(IMF、世界銀行、WTO) を使って作った秩序を、アメリカ合衆国が壊しているのである。

実は、このアメリカの動きと似たような動きをした事例が存在する。
第二次世界大戦後のイギリスを指導した、アトリー労働党内閣である。

第二次世界大戦後のイギリスでは、労働者を支持母体とするアトリー労働党内閣が成立した。アトリー労働党内閣では、「ゆりかごから墓場まで」をスローガンとして、社会保障費の増大がなされた。(その結果、今でもイギリスの医療費は無料である。)

一方で、アトリー労働党内閣では、植民地を放棄する政策がとられた。軍隊を派遣して植民地を維持することは、資本家(金持ち)に莫大な富をもたらしていたが、労働者にとっては軍隊の維持コストがかかるだけだったからだ。

結果、アトリー労働党内閣は、インド、パキスタン、スリランカ、ミャンマー、イスラエル、パレスチナなどの莫大な植民地を放棄することになった。
21世紀を生きる日本人からすると、非常にもったいないことをしたように見える。だが、当時のイギリスの労働者にとって、広大な植民地経営は、負担以外の何ものでもなかったのである。

同じように、アメリカの労働者(大衆)に支持されているトランプ大統領が、アメリカの世界覇権を捨てることになったとしても、まったくもって不思議はない。

たとえ、世界を支配して、世界中から富を搾取したほうが、トータルとしてアメリカの富を増大させることを意味したとしても、労働者(ビンボー人)を支持基盤とする政治においては、海外の植民地(それもとびきりの一等地)を捨てた事例がすでにあるのだ。

アメリカ合衆国が、アメリカファーストとなり、自国に引きこもった場合、グローバリストは、どうしようもできない。

アメリカ以外の国で、世界中に秩序を押しつけることができる国は存在しない。そもそも、アメリカ以外の国、EUや日本においても、グローバリストは支持を失っているのである。

今後30年間、グローバリストは劣勢になる。


グローバリストが劣勢になる未来 ~ 今後30年間


A. 自由貿易は過去のものになる。

世界は、いくつかの経済ブロック(安全保障込み)に分断される。
アメリカ・ブロック、中国・ブロック、EU・ブロック、ロシア・ブロック、など
(第二次世界大戦前夜の、ポンド・ブロック、フラン・ブロック、ドル・ブロック、大東亜共栄圏 というイメージ)

日本は、アメリカ・ブロックに入ることができれば、とても幸運である。高齢者が多すぎて、とても役に立たない、ブロック内にかかえる価値がないとアメリカに見捨てられた瞬間、日本は飢饉と内乱の時代に突入する。


B. 脱炭素は、忘れ去られる

地球温暖化などの国際的な取り組みは、実現不可能になる。脱炭素に向けてなされた巨額の投資は不良債権となり、脱炭素への投資が多い国から経済不況に悶絶する。

特に、脱炭素を信じてしまった EUと日本 が不良債権による景気停滞に苦しむことになる。

中国とインドとアメリカが、CO2を放出することで、地球温暖化が進み、途上国を中心に熱中症や洪水でバタバタと人が死ぬことになる。


C. 移民排斥運動が、国内騒乱を引き起こす

グローバル化した世界において、先進国の製造業が、発展途上国に移転してしまった。先進国では、国内産業の空洞化が起こり、先進国の中産階級は貧しくなった。

先進国では、高齢化による労働力不足のため移民を大量に受け入れざるを得ないが、一部の大衆は移民受け入れの必要性を理解できない。
(日ロ戦争における日比谷焼き打ち事件など)

移民がなぜ入ってくるのか、詳細を理解できない一部の大衆が、過激なイデオロギーに染まって、移民排斥運動に取り組むだろう。

それどころか、移民の必要性を間違いなく理解している高学歴層までも、移民排斥運動に積極的に参加する。

今後、先進国では、AIによるオートメーションが、医者、弁護士、エンジニア、大学教授などの高スキルの人材の職を奪っていく。

大卒レベルの比較的高学歴人材が、失業した場合、扇動家などに就職先を求める場合が多い。(実際にYouTubeでのオンラインサロンなどが2024年の日本で流行している。)

高学歴人材に職を与えずに、放置した場合、イデオロギー的に凶暴化することは歴史的に広く知られている。だからこそ、中国王朝(明・清)では、歴史書の大編纂事業など公共事業を実施して、高学歴人材にわざわざ職を与えていたのである。

注目を集めてバズるために、最も手っ取り早いのは、違う民族に対する敵愾心をあおることだ。先進国では、大量育成してしまった高学歴人材が、”ビジネス” としての移民排斥運動を主導し、国内を不安定化させるだろう。
(すでにYouTubeなどでは、移民問題について論評するインフルエンサーが大量出現している)


まとめ


今後30年間、グローバリストは劣勢になり、ナショナリズムが復活する。

自由貿易は過去のものになり、世界経済はブロック化する。経済効率は悪化し、不景気が常態化する。

脱炭素は忘れ去られ、地球温暖化は進み、世界中で異常気象、水害、台風、干ばつ、熱波などの被害が増加する。

先進国では、移民排斥運動が盛り上がり、治安が悪化する。


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