マザーハウス 13年のヒストリーを振り返って【マザーハウスカレッジ100回記念】
「『Warm Heart, Cool Head (熱い情熱と冷静な思考)』この2つを両立しながら社会を変革していくために、挑戦を続けている方々をゲストに招き、対談を通じて現在の挑戦につながるきっかけや、結果を生み出すための戦略・思考に迫っていく」
をテーマにした(勉強)会があります。マザーハウス副社長の山崎さんが開催し続けている「マザーハウスカレッジ」です。
8月9日(金)、久しぶりにその会に参加してきました。
今回は、100回記念カレッジということで、テーマは
「『マザーハウスのWarm Heart, Cool Head(熱い情熱と冷静な思考)』 13年のヒストリーを振り返って」
マザーハウスの歴史を振り返り、その歩みの中にある「Warm Heart, Cool Head (熱い情熱と冷静な思考)」を考えていきました。それは、代表である山口絵理子さんの「情熱と思考」について考えることでもあったと思います。
ゲストスピーカーは、最近、この本
を出版された、ローランドベルガー会長の遠藤功さん。
僕はまだ読んでいないのですが(苦笑)、別な『現場力の教科書』や『五能線物語 「奇跡のローカル線」を生んだ最強の現場力』は読んでいます。『五能線物語 「奇跡のローカル線」を生んだ最強の現場力』は書評も書きました。現場力の大切さ、現場力を戦略と結びつける考え方には影響を受けています。
遠藤さんは、設立当初からマザーハウスを応援されていて、株主でもあり、現在は社外取締役でもある方です。今回のテーマにはうってつけの方だと思いました。
■信念は戦略を超える
遠藤さんが最初に強調されていたのは
「山口絵理子はコンサルの常識を超える人だ」
でした。
論理的に考えれば成功するはずがないと思えるビジネスモデルを「やりたい」との信念で立ち上げ、次々に成果を上げている。そんな山口さんとの出会いを「衝撃的だった」と遠藤さんは言っていました。山口さんとのつきあいの中で、コンサルタントとしてまとってきた殻を破られるような経験を何度もしてきたそうです。
そこから導き出されたのが、
「信念は戦略を超える」
だったのです。
日本の多くの会社は、どうすれば儲かるかといった「戦略」だけを議論することが多いと言います。本来、戦略の上位概念であるはずの信念や理念が置き去りにされているのです。
しかし、主観に基づく信念・理念を実現するためにどうすればいいかと考えるのが戦略です。信念なき戦略は長期的な価値を生み出さないと思います。
■信念を実現させるための「戦略」
むろん、信念だけでなにかが実現できるわけではありません。信念を実現させるためにどうすればいいか、戦略を考えないわけにはいかないはずです。そしてここは合理的に考えていかなくてはいけないと思います。
山口さんを評して遠藤さんは「左脳も強いよね」と言いました。山崎さんは
「目標は主観で決めるのだけど、そこにたどり着く方法(戦略)はロジカルに考えている」
と言っていました。
信念・理念なくどうすれば儲かるかをロジカルに検討していけば、みんな似通った戦略に落ち着くはずです。しかし、出発点である理念・信念が違っていれば、そこにいたる道筋をロジカルに考えても、当然、違った道になってきます。
だからこそ山崎さんは
「最大の差別化要因は『主観』だ」
と言わたのだと思います(懇親会の席で聞きました)。これはものすごく腑に落ちる話です。
僕は常々
「戦略は理念に従う」
と言ってきました。戦略は理念を実現させるための手段に過ぎません。手段を目的化して、理念抜きで戦略を考えるのは本末転倒だと思っています。
■ピンチを力に変える復元力
実際にアクションを起こしてみればうまくいかないこともあります。信念・理念が、常識で考えて無謀なものだったとしたら、いくら合理的に戦略を考えても、うまくいかないことのほうが多いでしょう。
そこで諦めてしまうのか、次の手を打てるのか。そこで信念の強さが試されるのだと思います。
山口さんはよく
「本当にやれることは全部やったのか」
と自分に問いかけるそうです。バングラデシュで事業がうまくいかずに撤退を考えたときも、「まだ切っていないカードはないか」と考え、最後、「自社工場をつくる」を選択します。これでダメならあきらめもつくし撤退しよう、決めて取り組みました。それがいまの成長の礎になっています。
次の写真は、山崎さんが描いたマザーハウスの人生曲線です。
ほとんど絶叫マシンのようなアップダウンです(笑)
遠藤さんはこの図を縦にして見てみようと言われました。
竹の節のように見えなくもない、ということです(笑) 竹は節があるから強くなる。企業も個人も、ピンチで必死に取り組んで、その状態を脱すると筋肉がついてきます。贅肉が落ち、筋肉質になって前よりも強くなっている。この力を「復元力」と遠藤さんは言われていました。
ダウンしたときにどれだけ頑張れるか。撤退する勇気も時に必要になる場面もあると思いますが、まずは諦めないこと。その諦めの悪さが、成長を呼ぶのだと思います。
いま自分が抱えている案件も、撤退してしまえば話は早いのでしょうが、「本当にやれることは全部やったのか」、自分に問いかけて、取り組んでいく覚悟が出来たように思います。
■100回記念
マザーハウスカレッジは、いつも濃い内容で学ぶことだらけの会です。この会で多くの若い(つまり年下の)起業家に出会えました。
100回を区切りに終了すると言うのかと思えば
「あと100回やる」
と山崎さんは宣言されました。
最近忙しさにかまけて参加率が下がっていたのですが、これを機に、他の会に不義理をしてでも、マザーハウスカレッジへの参加を増やしたいと考えています。
■追記
同じ会場にいた上杉惠理子さんのブログです。
*山口絵理子さんの新刊
*マザーハウスや山口絵理子さんのことを知りたければ、この3冊を。
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